ドル高は「アメリカ一強」の反映
日本の通貨当局が、ドル高懸念の「国際的共有」に期待するのは、それ以外、円安を止める手立てが、なかなかないからです。
今回の一段の円安局面は、アメリカの物価や雇用の指標が強く、「6月の利下げ開始」というこれまでのメインシナリオが崩れたことが、最大の理由です。アメリカの金利高が続けば、引き続きドルが強いことは、経済のファンダメンタルズに沿った動きと言えるでしょう。
市場介入は乾坤一擲のタイミングで
そうした中で、日本の通貨当局が円買いドル売りの市場介入を行ったところで、5円程度しか押し戻せないだろうという見方が、市場では支配的です。
そもそも、円買いドル売り介入は、日本政府の持つアメリカ国債を売らなければ実施できないので、そうそうは実施できません。1回の失敗も許されないのです。
財務省としては、アメリカの金利の先高観が少し落ち着くのを待ち、国際的なドル高懸念ムードを味方につけた上で、乾坤一擲の市場介入に踏み切るタイミングを見極めているとみられます。
「日本は円安ウエルカム」と思われてしまった
アメリカのドルがここまで強いのは、コロナ禍からのアメリカ経済の回復が際立って強いという理由があります。
そうした中でも、主要通貨の中で日本円が際立って弱いのは、異常な金融緩和をここまで長引かせたという日本固有の理由があります。そして、その間に、世界の投資家や市場関係者には、「日本は円安ウエルカム、円安容認」だというパーセプション(認識)が擦り込まれたことも大きいように思います。
それは、「円安は企業業績と株価を上げるから、大いに結構」というメッセージを発し続けたツケでもあります。
かつてのような、強い経済ではなくなった日本は、「通貨安は、その国の信用を毀損する」という当たり前のことを、胸に刻むべき時なのかもしれません。
播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)