■「一度も安楽死の選択を考えたことはない」


安楽死法を支持する人がいる一方で、安楽死法に反対し、最後まで生を全うしようとしている人がいます。末期の脳腫瘍患者のカロリーナ・オルベ・アラルモさん(54)。終末期の患者に緩和ケア治療を行うホスピスで最後の時を迎えようとしています。

娘のマリアさん
「この病院に満足してる?」

カロリーナさん
「ええ」

夫と6人の子どもに恵まれたカロリーナさん。

脳腫瘍の手術後、ガンは全身に転移し、回復が望めなくなったため、去年6月にホスピスに入りました。夫のドミンゴさんは末っ子の9歳と12歳の娘にもこう告げましたた。

夫のドミンゴさん
「ママは具合が悪くて、もうよくならないかもしれないと。そのうち天国に行くかもと、伝えました」


娘のパロマさん
「ママの手を握ると、笑ってくれるの」

娘のアナさん
「ママも握ってくれてニッコリするの」

夫のドミンゴさん
私達は一度も安楽死の選択を考えたことはありません。私の妻であり、子どもたちの母に死を早めるなんてできるわけありません」


取材からおよそ3か月後の2021年10月、カロリーナさんは亡くなりました。


2021年12月、再びカロリーナさんの家族を訪ねました。ホスピスでのケアは、患者の痛みを取り除くだけでなく、幼い娘が母との別れを理解し、再起する手助けをしてくれたとドミンゴさんは話します。


夫のドミンゴさん
「妻が亡くなったことは本当に辛い体験でしたが、ホスピスという最高の場所にいることができたと思います」

娘のマリアさん
「ホスピスを知らずに情報もなければ、安楽死を選んだかもしれません」

“死の選択”にどう向き合うのかー。安楽死を認める国でも今なお議論が続いています。