火山活動によって生まれた世界遺産の島々

アメリカのハワイ島、日本の小笠原諸島、韓国の済州島など火山活動によって生まれた世界遺産の島々もあります。小笠原諸島の西之島のように誕生して間もない火山島では、溶岩だけで生命のない島にどのように植物が根付き、どのように動物がやってくるのか、つまり生態系が生まれていく過程を観察することができます。この点が評価されて世界遺産になったのがアイスランドの自然遺産「スルツェイ」です。

アイスランドの自然遺産「スルツェイ」

1960年代に火山活動で生まれた島ですが、進行しつつある生態系の形成プロセスに影響を与えないように、人間の上陸は厳しく制限されています。番組で撮影したときも植物の種などを持ち込まないよう、島へ向かうヘリコプター搭乗前に掃除機などでスタッフの衣服・荷物を丹念にクリーニング。島に滞在中に出たゴミもすべて持ち帰りました。

スルツェイに向かう前の撮影スタッフのクリーニングの様子

海域にもよりますが、火山島の周囲にはやがてサンゴ礁が生まれます。さらに火山島が沈降して海に没すると、リング状のサンゴ礁だけが残される場合があります。これを環礁というのですが、その中で世界遺産になっているのがフィリピンの「トゥバタハ海洋公園」。

フィリピンの自然遺産「トゥバタハ海洋公園」

ここには大小3つの環礁があって実に400種以上のサンゴが生息しています。番組で撮影したのですが、環礁の縁には、一気に100メートルも落ち込む断崖絶壁があり、そこでは巨大なカイメンなどを見ることができました。

トゥバタハの巨大なカイメン

環礁のリングの内側は穏やかな海のため魚などが暮らしやすい環境になっていて、海の生き物の撮影に適したスポットなのです。トゥバタハの場合は、こうした生態系と共に「リング状のサンゴ礁」という自然が生んだ景観美も評価されて世界遺産になりました。

トゥバタハのリング状になったサンゴ礁=環礁

日本の屋久島も、花崗岩と屋久杉が生み出す「自然美」が認められて世界遺産になりました。しかし屋久島の場合はもうひとつ大きな理由があります。それについては、また次回お伝えしたいと思います。