「特定の国に傾いている印象を与えないことで、最大の利益を得ることができる」

インドを出し抜くために周辺国とのつながりに力を入れる中国。そのひとつとしてスリランカに接近した中国は、巨額の融資でスリランカの発展に協力した。その結果、負債を返済しきれなくなったスリランカは南部・ハンパントタ港を99年間にわたり中国企業にリースすることとなった。これは「債務の罠」とも呼ばれ、今は中国の石油関連施設などが建設されているが、軍事拠点にならないとは限らない。

そして今、スリランカと同じ道を歩くかもしれないのが、インドの南西に1000を超える島々で構成される「アジアの楽園」モルディブ共和国だ。

このモルディブは中国が「一帯一路」を打ち出した2013年以降、インドや欧米諸国との関係が悪化。一時期インド寄りに揺り戻しはあったが、去年親中派の政権が誕生し今や蜜月だ。

モルディブの安全保障と外交政策を分析するインドのシンクタンクに聞いた。

グルビーン・スルタナ研究員
「(2023年に就任したモルディブの)ムイズ大統領が中国に近づき、インドとの関係を捨てているような印象であることに(国民は)あまり満足していないと思う。モルディブの人々は健康面などでインドに依存しているし、主食の多くはインド産だ。コロナの期間中、完全にロックダウンされ、インド国内では州から別の州を訪問することができなかったが、モルディブ人は健康診断のためインドを訪れることが許された。(中略)モルディブはインド洋の島として非常に戦略的な位置にある。小さな国だが戦略的立地を最大限に利用することができる。インドとも中国とも関係を上手く管理しバランスを取り、特定の国に傾いている印象を与えないことで最大の利益を得ることができる