南シナ海では、海域を我がものにせんと、中国がフィリピンと戦争寸前のつばぜり合いを重ねて久しい。中国の海洋進出は南シナ海にとどまらず、インド洋に広く展開していた。インドの南、スリランカはすでに中国と密接な関係にあり、その動きはインドやアメリカにとって看過できないものとなりつつある。そして今、中国は新たに美しい島国に手を伸ばしている。

「マラッカ・ジレンマ」 エネルギー政策の要衝がウイークポイントにも

パナマ運河、スエズ運河、ホルムズ海峡とともにシーレーンの世界的要衝となっているマラッカ海峡。日本を含む東アジアにとって、太平洋とインド洋をつなぐ最短ルートとして欠かせない航路だ。これは中国にとっても同様で、中国の石油などエネルギー輸入の8割がここを通る。

だが、マラッカ海峡周辺における覇権は長く西側が握っている。つまり、有事の際ここを封鎖されると中国にとって大きな痛手だ。対外政策、エネルギー政策の要衝がウイークポイントにもなる。これが「マラッカジレンマ」だ。国家主席時代の胡錦涛氏が「エネルギー安全保障を確保するために積極的対策が必要だ」と語ったのは20年以上前だ。

元外務副大臣 佐藤正久 参議院議員
「このマラッカ海峡を中国が押さえるのか、アメリカが押さえるのか、でぜんぜん戦略体制が変わってきちゃう。もし中国が押さえたら日本も台湾も韓国も干上がっちゃう。このジレンマは日本も韓国もみんな同じ」

笹川平和財団 小原凡司 上席フェロー
「中国は胡錦涛以前から危機感を持っていた。しかしそのころはコストもかかるし、技術も追いついていなかったが、胡錦涛が2003年もう一度危機感を強めている。それは中国がGDPでアメリカの6割を超えたら必ずアメリカは中国を潰しに来ると…。マラッカ海峡を封鎖される手段を非常に懸念していた。中国が経済力を増せば増すほど危機感も増している」

他人ごとではない。日本と韓国、実は中国以上にエネルギー輸入の9割がこのマラッカ海峡を通って行われている。しかし中国にとってはそれどころではない。そして中国は習近平時代に入り特にこのルートでの勢力を確保することに力を入れ始めた。南シナ海の領有権しかり、インド洋進出しかり…。南シナ海ではアメリカ軍が撤退したフィリピン相手なので順調に勢力を拡大している。だがインド洋では当然のことながらインドが強い。

佐藤正久 参議院議員
「(敵である)インドは非常にいい場所に軍事基地を持ってる。アンダマル・ニコバル諸島と言って、マラッカ海峡の出口を扇のように押さえてる。中国はこれを打破するために後ろ側のスリランカ、モルディブ、パキスタンと上手くやるしかない」