「インド洋は中国の故郷ではない。インドの故郷なのだ」

中国のモルディブ接近は軍事面で大きな脅威になっていると語るのはインドの西部海軍司令部の元司令官シンハ氏だ。中国軍はモルディブに対して無償で軍事援助を行う協定を結んでいるという。

シェカール・シンハ氏
「インドに近い島々は中国の監視下に置かれることになる。将来私たちが脅威にさらされないためにインド海軍は新しい基地(ミニコイ島)を設置した。(中略)モルディブが中国に自国の土地でも活動を許したとしよう。中国軍は監視レーダーや沿岸レーダーをモルディブの様々な場所に設置する。その監視範囲は、400キロ?、500キロ?、600キロかもしれない。(中略)訓練と称して空中からも監視されるかもしれない。地上7、8000メートルから1万メートルくらいを飛ぶ航空機からだ。より広いエリアが監視され、構造物をピンポイントで見ることができる。橋、道路、車両基地、鉄道基地…。そうなれば中国はインドの重要地域を正確に知ることになる」

インドはモルディブの近くにあるインド領のミニコイ島に新たに基地を設置。今後これを広げる計画もあり、警戒を強めている。

しかし中国はこの海域に海洋調査船のような船が頻繁に活動しているという。これをシンハ氏は潜水艦対策の調査船だと見ている。

シェカール・シンハ氏
「潮の流れや水中温度、音の伝わり方などを調査している船だ。この調査データを兵器システムにプログラムすれば敵の潜水艦を見つけるのに役立つ。(中略)中国はすでにパキスタンに進出している。スリランカにも、ジブチにも、ミャンマーにもいる。このようにインド半島はインド洋で中国の影響に包囲されつつある。インド洋は中国の故郷ではない。インドの故郷なのだ

親中派になるモルディブの気持ちをアメリカのシンクタンクでインドを中心に安全保障を研究しているハドソン研究所の長尾賢氏が解説してくれた。

米ハドソン研究所 長尾賢 研究員
「モルディブが生きていくためにはインドは必要です。ただサイズが全く違う『もの凄く巨大な隣人』。さらにインドはこの地域のリーダーを自認しているので、あーだこーだうるさい。強力な後ろ盾がいすぎると違う選択肢も欲しいという気分になる。そこに中国は入り込んだ。つまり選択肢が一つというのは自分で何かを決めている感じがしない」

モルディブの心理的隙間を上手くついた中国の手口。スリランカと同じ轍を踏まないことを祈るばかりだ。

(BS-TBS『報道1930』4月2日放送より)