地元食材を使うことでわかったこと
では、なぜ、シティホテルが「規格外品」を扱うのでしょうか。宿泊に特化するビジネスホテルと異なり、レストランや宴会などを扱う“フルスペック”のシティホテルにとって、「食品ロス」は長年の課題です。

環境省の調べによると、外食産業など事業系食品ロスの発生量は約279万トン(2021年度)。国では、2030年までに、2000年度比で半減させるという目標を掲げています。レストランや喫茶のほか、宴会などで多くの食品を扱うホテルアソシア静岡でも「朝食のブッフェなどでは、小盛り皿での提供などに取り組んでいるが、まだまだ模索中」(西田善輝営業部長)だといいます。
「食品ロス」への関心が高まる中、今回の企画は、地元静岡の食材を使っているホテルならではの視点から生まれたといいます。

「ホテルのメニューは、だいたい約3か月前から考えるが、生産者との話の中で、作る側の抱える悩みを知り、この解決にも一役買えないか」(西田営業部長)。第1弾は2023年11月、静岡県掛川市の会社「ジャパンベジタブル」と島田市の農業生産法人「エフエフランドアグリ静岡」と協力し、それぞれがこれまで廃棄していた「ミニサツマイモ」と「摘果ミカン」を使い、料理やスイーツとして提供しました。

50グラム以下のミニサツマイモは、ポタージュやブリュレに、間引きで出たミカンは、パスタの具材やベイクドチーズケーキに姿を変え、4か月間にわたって提供されました。

西田部長によると、生産者からは「ぜひ、来年もコラボしたい。商品開発の早い段階から協力したい」と声がかかったとのこと。さらには、新玉ねぎや大根などの規格外品の提供を受け、ホテル内で出されるスープや前菜の食材に活用する動きも始まっています。

このコラボでは、ホテル側にも変化がありました。第2弾では、スポンジケーキの端切れを使い、いちご大福に活用。食品ロスを自分事化することで、新たな発想が次々と生まれています。