何が量刑に影響を与える?

 ―――山上容疑者は旧統一教会への恨みから安倍元総理を襲撃したとみられています。責任能力の軽減はあるのか、家庭環境の考慮はあるのかという点について、川崎さんによりますと、弁護側は責任能力軽減を主張する可能性はあるということです。これはどういう理由からでしょうか?
 「今、報道で出ている情報を前提にすると、一定の旧統一教会への恨みというものがあったんだと。そこから一足飛びに、すぐにこの殺人事件まで至るかというと、そんなことはないわけで。そこに一定の論理の飛躍というものがあり、そしてそれが何らかの精神疾患が影響しているのであれば、それは一定の責任能力の軽減というものがあったんではないか、限定的なのではないか、こういう主張する可能性というのはあるんだろうなというふうに思います」

 ―――家庭環境が動機の面や責任能力で考慮される可能性はあるのでしょうか?
 「何らかの精神疾患がもし発現したあるいは助長されたということに家庭環境が影響するということもありえますし、あるいは動機形成の中で無差別にしたわけではなくて、もちろんこういうことがあってはならないわけですけれども、その中でどういう経緯があったのかということは、もし将来裁判になって量刑を決める、刑の重さを決めるときには当然要素になってくるのかなと思います」

 ―――今回の事件の被害者は元総理ということで、量刑に影響を与える可能性はどうなのかということですが、川崎さんによりますと、命の重さはみな同じで、被害者がどんな人物かよりも、大勢の観衆がいる前で拳銃を使ったということや、どんな気持ちで行ったかが量刑を決めると思われるということですね?
 「難しい問題なんですけれども、まず刑を決めるときには、どんな危ないことをどういう気持ちでやったのかということが重要になってきます。どんな方が被害者であるのかというのも、もちろんご遺族にとっても社会にとってもすごく重要な要素ではあるんですけれども、それであれば亡くなった人によって重さが違ってしまう。これが本当にいいのかということは当然あり得るわけで、できるだけ客観的にどんな行為をしたのか、そしてどんな気持ちだったのか、これがやはり量刑を決める重要なポイントになってくるだろうなというふうに思います」

 (元厚労省官僚・元衆議院議員 豊田真由子さん)
 「今のところはすごく大事なところです。私は安倍元総理と仕事をしましたけれども、今、申し上げたいのは、日本は法治国家で民主主義国家なので、被害者の方がどなたであるかによって、全く同じ対応で同じ犯罪を犯したのに刑が変わるってことは絶対ないんです。あってはいけないことで、命の重さはどんな方も同じなので。元総理であろうが誰だろうが命の重さは同じ。川崎先生がおっしゃっているのは、大勢の人がいる中で拳銃を打ったので他の人に当たるかもしれなかったとか、その危険性を考慮するという話で、命の重さは変わらないし、どなたであっても同じように罰して同じように刑をするのが日本国の法治国家としての私は矜持だと思っています」

 ―――今の段階では限られた情報しかありませんが、どういった刑があるか、川崎さんはお考えになりますか?
 (川崎拓也弁護士)
 「非常に難しいです。やはり事実関係が明らかになっていない中でのことですので、なかなか一足飛びには申し上げられないんですが、やはり、拳銃を使っているということ、そして、大勢の方がいる中で、しかも選挙活動中にあったということ、その意味ではやはり危険度の高い行為であったことは間違いありません。拳銃を使ってることも含めて相応にやはり重い刑にはならざるを得ないんだろうなというふうには思います」