安倍晋三元総理が銃撃され死亡した事件で、逮捕された山上徹也容疑者(41)の事件当時の精神状態を調べる「鑑定留置」が7月25日から始まりました。山上容疑者の精神鑑定が行われるということですが、「そもそも『鑑定留置』とは一体何なのか?」「なぜ行われるのか?」「検察の本当の狙い」について、刑事弁護に詳しい川崎拓也弁護士に話を聞きました。

「心神喪失」「心神耗弱」とは?

 ―――鑑定留置は、検察官が精神科医に鑑定を依頼し、その鑑定のために勾留を停止し留置するという措置がとられるということですが、どんなことが具体的に行われるのですか?
 「専門の精神科医の先生が鑑定人として選任されて、その方が主に面接・面談という形で被疑者の方に直接お会いしてお話を聞いて、あるいは周囲の関係者の方にお話を聞いて。ときには病院に行ってMRIなどの検査することもあります」

 ―――検察官が鑑定を依頼した場合は必ず鑑定留置が行われるのですか?
 「裁判所が許可をしたときに鑑定留置となります」

 ―――山上容疑者の鑑定留置は11月29日までということで、4か月間という期間についてはいかがですか?
 「4か月という期間自体はそんなに珍しくはなくて、やや長いかどうかぐらいです。面談自体は何度か行って、ドクターと被疑者の方との信頼関係もありますし、複数の面談を行うことで客観性を高めていくということもあるので、時間がかかってくるのかなと考えています」

 ―――鑑定留置が行われて、刑事責任能力の有無を判断するということになり、もし刑事責任能力がある場合は起訴されるということですが、刑事責任能力がない(心神喪失)場合は不起訴ということがあり得ると。どれぐらいの割合で起訴・不起訴となるのでしょうか?
 「これはそれぞれの事件、あるいは被疑者の方の状況にもよります。また数字もはっきりと出ているわけではないのでわからないのですが、やはり重大事件の場合はどちらかというと『あり』の方向になる数の方が相当多いのかなというふうには思います」

 ―――山上容疑者の場合は起訴された場合、殺人以外に銃刀法違反・武器等製造法違反に問われる可能性もあるということですか?
 「おそらく模造、自分で作られた凶器でされたということですので、それが銃刀法上の銃に当たるのかどうか、あるいは武器に当たるのかどうか、これは捜査を尽くした上で判断していくんだろうなというふうに思います」

 ―――鑑定留置の結果、「心神耗弱」という場合は刑を軽減することもあるようですが、この心神耗弱というのはどういう状態のことを指しているのですか?
 「法的には、事理弁識能力、善悪がそもそも判断できないかあるいは全く自分をコントロールできないときには、心神喪失。その能力が著しく減退し、かなり減退するというときには、心神耗弱というふうになっていますので、その程度問題ということになります」

 ―――そして起訴後、弁護側が精神鑑定を行うこともできるんですね?
 「もちろん弁護側あるいは被疑者の側も私的にドクターをお願いして精神鑑定的なことを行うということはできるんですが、なかなかやはり自由に体を動かせるわけでもないですし、自由に面談できるわけでもないので非常に難しい。あるいは起訴後に裁判所に求めていくこともできるんですけども、これが採用されるかどうか、これも事件ごとによってだいぶ変わってくるのかなという状況です」