慣れ親しんだ学び舎に別れを告げる卒業式。新しいステージへと旅立つ子どもたちを見送る大切な式典です。その場で卒業生1人1人に全て手書きで仕上げた卒業証書を贈ろうと、およそ5か月をかけて320人分の卒業証書を1人で仕上げた校長がいます。校長の思いに迫りました。
定年迎える校長「1人1人のための特別な卒業証書を渡したい」
巣立ちの春。浦添市の仲西中学校で卒業式が行われました。

少し緊張した面持ちで、名前を呼ばれると檀上に上がっていく生徒たち。その卒業生1人1人に卒業証書を手渡すのは平良亮校長です。この季節によく目にするこの光景ですが、1つだけいつもと異なる点があります。実は手渡されている卒業証書は平良校長が一から書き上げたものです。
卒業式の5か月前の昨年10月。早々に卒業証書作成に向けて準備を進める平良校長の姿がありました。
仲西中学校 平良亮校長
「子どもたちには何事にも挑戦だと言い続けていたので、自分自身を振り返った時に子どもたちにできることは何かと考えた時に、卒業証書を書きたいと考えた。生徒たち1人1人にそれぞれの人生があるように、1人1人のための特別な卒業証書を渡したい」

仲西中学校は県内有数のマンモス校で今年の卒業生は9クラス、320人。その全ての生徒に向けて自ら筆をとり、証書をしたためていくといいます。
実は今年度で定年を迎える平良校長。本採用となった36年前に初めて赴任した学校も、ここ仲西中学校でした。書道を嗜んできた経験から、それぞれの赴任校で卒業証書の作成に携わってきたといいます。
当時は名前や卒業番号のみを手書きしてきましたが、自身が校長になってからは全てを手書きにすることを決意。特に最後となる今回の卒業証書の作成は気合の入り方もひとしおです。
仲西中学校 平良亮校長
「今は作業が進まず切羽詰まった状態ですが、ゴールは決まっているので卒業式には絶対に間に合わせないといけない。毎回遅くなってしまってギリギリで焦ってしまうんですけど」

印刷機であれば、数百枚の卒業証書でもわずかな時間で完成させることができますが、手書きだとそうはいきません。文字の大きさの目安となる枠と文字を鉛筆で下書きし、その上から清書、消しゴムで下書きを消すなど作業工程は多く、高い集中力が必要とされます。
そのため、1枚仕上げるのに30分以上かかるといいます。しかも日頃の校長業務を終えた後に行うため、1日で数枚書くことができるかどうかです。

この日は下書きを進めるだけで時間が過ぎていきましたー














