60年ぶりに92歳の創業者社長から31歳の孫に社長を交代
こうした"元気な業界"はAIや半導体関連だけではない。ディエゴ・ロペス氏はこんなことも語った。
『グローバルSWF』創設者 ディエゴ・ロペス氏
「エンターテインメント業界への投資はもちろん増えている。サウジアラビアの公的投資基金(PIF)は任天堂などの日本のゲーム会社に投資している」
なんとサウジアラビアのPIFの任天堂持ち株比率は8.58%に上る。さらに、ゲームソフト会社には株上昇率が30%を超える企業が複数ある。番組では、エンタメ業界で株価の上昇率が最も高い企業を訪ねた。
数々の人気キャラクターで知られる『サンリオ』だ。世界中に熱烈なファンを持つ『ハローキティ』は今年50歳になった。

話を聞かせてくれたのは投資家向けの広報を担当するIR室長の河村誠一氏。
実は『サンリオ』2年前まで業績不振に泣いていたのだという。

『サンリオ』IR室 河村誠一ゼネラルマネージャー
「ハローキティをはじめ非常に認知度の高いキャラクターがいるにも関わらずそのキャラクターの価値を生かした経営ができていなかった。"いいものを作れば売れるはず"というプロダクト的な発想で事業を行っていた」
そんな中、2020年60年ぶりに92歳の創業者社長から31歳の孫に社長を交代した。
ここから経営方針を大転換した。デジタルを駆使してマーケティングを重視。最大の変更は、ライセンス事業の拡大だった。
例えば、芸能人や他社のキャラクターとコラボすることでキャラクターの価値をさらに高めるとともに、使用頻度を高めた。"ガンダムキティ"や"くまモンキティ"がそれだ。
『サンリオ』IR室 河村誠一ゼネラルマネージャー
「やはりコラボレーションがこれだけできるっていうことは強烈な映画作品だとかアニメ作品ではない形で(サンリオの)キャラクターが存在していますので、非常に余白があるんだと思うんですね…」
以前から『サンリオ』を知る人たちの間では"最近、キティってなんでもコラボしてるよね"と言われている。かつては考えられないことだった。

経済評論家 加谷珪一氏
「悪く言うとサンリオさんって、いいキャラクターがあるのにあまりにも大事にし過ぎて"安売りしない会社"っていうイメージだった。で今回ガラッと方針を変えて、悪く言えばいろんなとこに使ってもらって薄利多売…。でもいろんなキャラクターを持ってる会社がやるであろう当然の経営を始めた…と市場は見ているんですよ。だからこれはいけると思っていたら業績も上がってきた…」
井出真吾氏は92歳の社長を31歳の社長に変えたことが大きかったという。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾 チーフ株式ストラテジスト
「平成の20数年間(の経営者)はコストカットすることを求められた。マクロ的に見ると2010から15年くらいで無駄をそぎ落とし終えた。そこから日経平均も上がり始めた。経営戦略として昭和・平成の後向きな経営ではなく前向きに攻めていく…。サンリオだって攻めたんですよ。"自分たちが提供できる価値は何なんだろう"って考え『商標権ビジネス』に持って行った…」
「日本への賭けは一夜にして終わるようなものではない」
経営戦略を転換し企業として未来に展望が生まれ、そこにちゃんと目を向けた投資家がお金をつぎ込む…。どうやら今回の株価上昇はバブルとは違い簡単にはじけそうにはない気がする。ディエゴ・ロペス氏も明るい展望を語った。
『グローバルSWF』創設者 ディエゴ・ロペス氏
「日本への投資は長期的なものだ。中東政府系ファンドのメリットは長期的で忍耐強い資本だということ。彼らの日本への賭けは一夜にして終わるようなものではないだろう」
株価に引っ張られて賃金も上昇することを願うばかりだ。
(BS-TBS『報道1930』3月4日放送より)