19年振りに決勝進出の4×400mリレー
日本選手は男子4×400mリレー決勝と女子100mハードル準決勝に登場する。男子4×400mリレー予選の日本は1走から佐藤風雅(26・那須環境)、川端魁人(23・中京大クラブ)、ウォルシュ・ジュリアン(25・富士通)、中島佑気ジョセフ(20・東洋大)のメンバーで、1組2位と着順通過を果たした。世界陸上では03年パリ大会以来、五輪を含めると04年アテネ五輪以来の決勝を走る。
予選の3分01秒53は予選全体でも2番目のタイム。メダルを期待できないわけではないが、18年間も決勝から遠ざかっていたチームがいきなりメダルを取るシーンは考えにくい。
予選の4人のスプリットタイムは1走から45秒51、45秒07、44秒99、45秒96(主催者発表)。1走以外は10mの加速区間を走った後の400mが計測されるが、1走だけは静止状態からスタートした400mなので他の区間より遅くなる。佐藤の45秒51は予選1組では米国、ジャマイカに次ぐ3番目で悪くなかった。
4走の中島が45秒96要したのは確実に予選を通過する走りをしたからだ。2~4位の日本、ジャマイカ、トリニダードトバゴが混戦状態でバトンを受けたが、すかさずトップに立ちペースを少し抑えた。得意とする終盤で勝負をするためで、狙い通りにラストの直線で混戦から抜け出し2位を確保した。
中島は5月の関東インカレの4走を44秒8(非公式)で走った。決勝で追う展開になれば1秒以上タイムは上がる。3分00秒76の日本記録(96年アトランタ五輪と昨年の東京五輪でマーク)更新は決勝で実現するだろう。
期待したいのは2分台の記録と4~6位の中位入賞だ。予選後のインタビューに答える様子を見ているとチームの雰囲気の良さと、19年ぶりの決勝の舞台にテンションが上がっていることが伝わってきた。中島以外も1人0.1~0.2秒縮められれば2分台も不可能ではない。メダル争いにかなり近い位置でレースができるのではないか。

予選の福部は12秒96(+0.5)と、世界陸上日本人最高記録もマークした。青木は13秒12(-0.4)で同タイムが4人いたが、1000分の1秒単位までの計測は13秒112で4人の中で一番良かった。2台目で右隣のレーンの選手と接触してバランスを崩したが、「最後まであきらめずに行った」ことが1000分の2秒差での準決勝進出につながった。
決勝に進出するには東京五輪では12秒67が、19年世界陸上ドーハでは12秒65が必要だった。2人とも青木の持つ日本記録(12秒86)を更新し、世界トップハードラーたちの少しでも近くを、少しでも長く走ることが目標となる。
だが強豪選手が予選で敗退しているし、ハードルにぶつけて失速するアクシデントも多い種目である。決勝進出の可能性はゼロではない。
オレゴン大会の最終種目は女子4×400mリレー。米国は8日目の女子400m障害で50秒68の世界新記録を出したS.マクローフリン(22・米国)、400m障害の前世界記録保持者のD.ムハンマド(32)、今大会で引退するA.フェリックス(36)といったオールスター的なメンバーになるかもしれない。フェリックスは世界陸上金メダル13個を獲得してきたレジェンドである。
東京五輪は1走のマクローフリンが50秒2、2走のフェリックスが49秒3、3走のムハンマドが48秒94のスプリットタイムで走った。唯一静止状態からスタートする1走は少しタイムは落ちるが、マクローフリンは1位でフェリックスにバトンを渡している。
今大会のフェリックスは男女混合4×400mリレーの2走で50秒15、女子4×400mリレー予選の2走で50秒61。混合リレーでは優勝したドミニカに抜かれてしまった。
15年世界陸上では47秒72と驚異的なスプリットで走ったことがあるフェリックス。最後に50秒を切る走りで母国の優勝に貢献し、自身の競技人生とオレゴン大会の最後を飾ることができるだろうか。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)