受刑者の日常 風呂は週3回、1日30分の運動、認知症の進行が止まることも

刑務官「点検終了、洗面、洗濯始め!」

舎房は独居房と集団室に分かれる。部屋に鍵はなく通路は自由に移動できる。ただし“私語”は厳禁だ。

トイレや洗面台は共同使用。入浴は夏、冬ともに週3回。20分が目安だ。男性の刑務所より5分長い。時間が徹底的に管理されている世界だ。

1日30分の運動時間は殆ど自由時間になる。働く工場別に帽子の色が分けてある。人数を迅速に把握する為で、逃走防止の意味合いがある。

爪切りは運動場で行う。自殺防止のために部屋に刃物類は一切ない。

刑務官のほぼ7割を女性が占める。男性刑務官は女子受刑者との不要なトラブルを避ける為に“ウェアラブルカメラ”を付けている。

ーー気を遣いますか

男性刑務官
「男性受刑者と違った気の遣い方がある。ちょっとぶつかって、ちょっと当たったりしても『ごめん』で済まないこともあるでしょうし」

刑務作業で受刑者が手にする報奨金は月に平均3千円程度。

工場ではフリガナが振ってある看板が目に付く。学力不足の受刑者も珍しくない。

この受刑者は家庭の事情で殆ど学校に通えず漢字を読めなかったと言う。

40代前半・服役2回 窃盗
「市役所で書類を書くときに漢字がでてこない。『ひらがなでいいですよ』と言われて悔しいし、恥ずかしかった」

刑務所から出す手紙に『漢字が増えたね』と子供に褒められたと自慢げに話していた。

決まった額で洗剤、チリ紙、タオルなどの必需品に限り売店で注文が出来る。しかしメイク道具の口紅などは一切許されない。

岩国刑務所 内藤睦所長
「化粧をするとかなり人相が変わる。逃走や保安上など、人相が変わった人がいると難しい」

面会時間は約30分。遠隔地から子供連れで訪れる家族も少なくない。

受刑者の短歌
『まってると 獄に届きし吾子の文 心弾みて今日が始まる』

20年間岩国刑務所に勤務する医師の専門は婦人科だ。塀の中では認知症が進まない傾向があると話す。

矢次信三医務課長
「認知症患者が刑務所にくると、不思議と一般社会より改善する。なぜかというと、刑務作業などがとても良くて、仕事をして頭を使う。毎日動いて、食堂に行って、人から刺激を受けるので、わりと進行が進まない。回復はしませんが、(進行が)止まったり、普通の生活に戻っていたりします」

受刑者の食事は複数の幹部が“検食”する。

刑務官
「本日の献立は、鶏肉のごま焼き、ほうれん草のクリーム煮、オムレツチーズ」

コロナの最中には一時期コンビニの弁当が調達されたという。

岩国刑務所 内藤睦所長
「最初のうちはとても好評だった。1週間経つと、刑務所のご飯が食べたいと言うようになった。“お通じ”とかですね」