「各国誘致競争の中で一定額の支援が要るのが現実」「進捗示していくことが国民理解得るために重要」

ーーーTSMCの第1工場だけでも4760億円を助成するほか、2021年度からの3年間でおよそ4兆円もの巨額の予算を確保しています。それだけに、投資額の大きさに対する懸念の声も上がっているのが実情ですが、その点をどのように受け止めていらっしゃいますか。

野原諭局長:
半導体は非常に投資額の大きな産業でありまして、グローバルに大きな額の投資が必要になっています。各国は成長産業である半導体産業を自国の基幹産業として大規模な財政出動をしています。アメリカであればCHIPS法に基づいて設備投資の補助金と設備投資に対する税制の減免で合わせて11兆円ぐらいの財政出動を既にしています。ヨーロッパもドイツを中心に7兆円ぐらいの規模の財政出動をしていますので、他の国々もそれぞれ強力な処置を講じて、自国の半導体サプライチェーンの強化に取り組んでおります。各国の誘致競争の中で日本に投資を集めるためには一定額の支援が要るというのが現実だと考えています。目に見える形で進捗をお示ししていくことが国民の理解を得るためには非常に重要なことだというふうに考えています。

「コロナ禍に半導体不足でお風呂に入れない問題も」「半導体使っていない電子製品はほぼない」

ーーー今後も半導体が足りなくなる懸念はあるのでしょうか。

野原諭局長:
コロナの時代には随分と半導体が不足して色々なもの、自動車の生産も止まりましたし、他の電子機器ですね生活必需品でも、普通に手に入らないものがあったり、お風呂に入れないとかいろんな問題が起きました。電子製品でいま半導体を使っていないものは、ほとんどありません。そういう意味では皆さんの生活に必要なものは半導体があるから動いているということになりますので、生活に必要不可欠な存在である半導体の安定供給を図るというのが全体の政策の中で一番重要な目的だと思っております。
半導体には色々な種類がありますので、種類ごとにおおよその需給の見通しを分析していますし、各国も分析してると思いますけれども、お互いの見通しを突き合わせて「この分野は足りないね」「この分野は余るかもしれないね」と分析していまして、余るかもしれないところは“余るかもしれない問題”にどうするか。一方、足りないことがわかっているところには頑張って投資しないと、将来半導体不足になるので、需給の見通しに基づいて重点投資の必要がある分野の投資を優先的にいま取り組んでいます。将来の半導体不足が起き得るプライオリティが高いところに重点的な投資をしなければならないということですね。足しそうな分野に重点的に投資をする、余りそうなところはどう対策するかということを議論しているというのが今の国際連携の現実だと思います。