「逆にいつ我が身になるか…で骨抜きに」

自民党が予算審議と引き換えに野党案を飲んだ。それによって強い権限を持った政倫審が誕生する方向で話が決まったはずだった。1985年2月27日の昼間のことだった。
ところが、この日の午後、田中元総理が脳梗塞で倒れる。すると…。

元参議院議員 平野貞夫氏
「小沢さんがですね、(与野党協議で)田中さんの病状を言って『そういう事情だから暫く審議を延期したい』という要請をするんですよ。(中略)結局1985年のもう3月に入って、野党の方から、だって田中さんを一つの狙いにしてたわけでしょ。だから『逆にいつ我が身になるかも…これから』ということから『ま、緩やかなものにしようよ』ってことになって、政治倫理協議会の事務をやってる僕らのところに、様々などうやって骨抜きにするかという話が来て…

“田中元総理の影響力を弱める”という大命題、目標を失った野党、そして一部の自民党の議員が“厳しくすれば、いつかは自分たちに跳ね返る”とルールを甘くしたのだという。かくして政倫審に強い権限を持たせないことが決まる。結局“除名勧告”など厳しい規則は設けられず、“行動規範の順守の勧告”など甘い罰則権限しか持たない機関として今日に至っている。
政倫審が骨抜きか否か…以前に“こんなものいらない”というのは、元総務大臣の片山善博氏だ。

元総務大臣 片山善博氏
「もともと懲罰がある。除名とか議員の身分剝奪とか…、党で処分決められるわけです。
もうひとつ、犯罪であるなら司法でちゃんとやればいいんですよね。今回3000万だか4000万だかで線引きしてるっていうのは司法の怠慢だと思う」

「それをさせなくするために、あるいはそれを柔らかくするために政治倫理審査会を悪用」

現在、政倫審は“5人以外も出席を”とか“公開で”とか、しまいには延期になったが、そもそも政倫審が正義として扱われていることに平野氏は腑に落ちないようだ。

元参議院議員 平野貞夫氏
「しかし、今度のパーティー・キックバック裏金問題というのは政治資金規正法の倫理、政治とカネの倫理に違反している部分もありますが、それだけじゃないわけでしょ。明確な法律違反、犯罪という部分がありますから、岸田さんも与党も政倫審で政治資金規正法の問題をやるということは、政治責任の問題にしようということでしょ。法的な違反の問題についてそれを決めるのは司直ですから…しかしそれをさせなくするために、あるいはそれを柔らかくするために政治倫理審査会を悪用するという企みがあるんじゃないかという問題が私はあると思う」

政倫審が終わると、一件落着という政治家側の思惑があるとするならば、今回は国民の感情を読み違えているのかもしれない。

(BS-TBS『報道1930』2月26日放送より)