出会い

炊き出しの会場で、顔見知りになった来場者に声をかけているのは、大学4年生の兼本海音(かねもと・うみね)さん(22歳)です。兼本さんは、任意のボランティア団体「北海道の労働と福祉を考える会(通称・労福会)(*注1)」のメンバーとして、去年1月から、路上生活者ら生活困窮者の支援に携わっています。きっかけは、大学のゼミの先輩から「週末の夜に野宿者の実態調査をするんだけど、手伝ってくれない?」という誘いでした。

最初は困窮者の現状をまったく知らず、目的意識もないまま参加しました。ところが最初のボランティアとなった野宿者の実態調査で、零下の路上に段ボールや衣類にくるまって寝ている人を目の当たりにしたり、その後の炊き出しの現場で参加者と触れ合ったりして、それまでの困窮者に対するイメージが一変します。汚く、臭い…怖い…頭の片隅にあった思い込みは目の前のどこにもなく、困窮者同士が情報交換をしたり、労福会のメンバーと談笑したりする様子は不思議な光景に映りました。
「元気だった?」
「身体の調子はどう?」
「おとといの晩は冷え込んだね…」
自分が友だちや親と交わす会話と何ら変わりないことに驚き、やがて、この人たちはなぜここに来ているのか?どんな背景があるのか?ボランティアの人たちはどうしてそういう対応ができるのか?という疑問が次々と湧いて、労福会が毎週土曜日の夜に行っている夜回り(*注2)に、毎回参加するようになっていました。
「自分にできることが、何か見つかるかもしれない」