「戦死者数」知事が異例の公表 国が公表せず・・・なぜ?

プーチン大統領はロシアの祝日「祖国防衛の日」にあたる23日、無名戦士の墓に献花を行いました。
この1年、兵力の増強を推し進めてきたロシアですが、国民の反発を招いた動員に変わり兵員確保の主な手段となってきたのが、「契約軍人」の募集です。
ロシア国防相は「契約軍人」を募集する動画を作成し、すでに50万人以上が兵役についたとされています。

ロシアの平均月収の約7万ルーブル(約11万円)をはるかに上回る、月収20万4000ルーブル(約33万円)以上の報酬を約束するとしています。
その一方で、ロシアがひた隠しにしてきたのが、兵士の損失です。2022年以降、死者に関する情報は一切発表していません。ただ、地方に行くと、ロシア側の損失も拡大していることがうかがえます。
北海道からわずか40キロ余りのロシア極東サハリン。中心都市の外れにある墓地の一角を、ウクライナ侵攻による戦死者の墓が埋め尽くしていました。その数はすでに100以上となっています。

まだ新しい墓には「民間軍事会社ワグネル」や受刑者らの突撃部隊とされる「ストームZ」の旗が掲げられているものもありました。

息子を亡くした女性「息子はいつも『母さん(戦場は)なんて恐ろしい所だろう、僕は生き延びたい、何とか生き延びたい』と話していました」

一角の中心にある慰霊碑には、ウクライナ侵攻を支持するシンボル「Z」の文字が刻まれ、「英雄たちの記憶」という言葉も記されています。2か月前に建てられたものですが、主導したのがサハリン州のリマレンコ知事です。

サハリン州のリマレンコ知事「われわれの息子たちが、ここに眠っています」
リマレンコ知事は、地元出身の兵士が亡くなるたびに、名前や階級などをSNSで公表しています。

リマレンコ知事のテレグラムより
「ユジノサハリンスクとホルムスク出身の一等兵2人が任務を全うして亡くなった」

知事が公表した分だけでも、サハリン州の死者は443人(人口約46万人)にのぼり、ロシア独立系メディア「メディアゾナ」は首都モスクワの死者523人(人口約1300万人)に比べ、地方の戦死者が際立っていると指摘しています。
情報が広まりやすい地方で損失を隠すよりも「英雄」として示すことで、市民の不満を抑え込みたい狙いがあるとみられます。

サハリン州の市民
「(戦死者を)隠すことに意味はありません。いずれ何らかの形で知ることになります」
「真実を知る必要があります。誰もが早く終わることを望んでいます」
ウクライナから遠く離れたロシアの地方にも、終わりの見えない侵攻の代償が重くのしかかっています。