日本の子どもはなぜ睡眠不足? 三つの要因を紹介

──日本の子どもの睡眠時間が短いのはなぜなのでしょうか?

「朝は同じぐらいの時刻に各国で起きているので、睡眠が短い要因のほとんどは、就寝時刻が遅いことによると思います。では、なぜ日本は就寝が遅くなってしまうのかですが、色々な要因があります。

まず一つは光の問題です。夜は、家全体をあまり明るくしないようにして、できるだけリラックスできる環境にすることが大切です。しかし、日本の住宅は夜も光が明るすぎる傾向にあります。このことは、体内時計からすると『まだ昼だよ』ってシグナルになるんです。

加えて、子どもがどこで寝ているかという点です。私はアメリカでの生活が長いのですが、アメリカでは基本的に赤ちゃんの時から子ども部屋にベッドを置いて、親とは別に寝ます。その方が子どもの適切な睡眠のリズムを保ちやすいです。

しかし、日本は親と子どもが同じ部屋で寝ることが多いです。そうなると、どうしても親の生活リズムに子供が引きずられがちになります。

さらに、日本の子どもは忙しすぎます。学校と塾の二重生活になってしまっています。本当は学校から帰ってきて、学校の宿題や予習だけやって、後は睡眠時間を確保できるはずが、塾のために2〜3時間とられるので、早く寝るということはやっぱり大変です」

睡眠不足が当たり前の悪循環 「完全に寝不足」の自覚を

──日本特有の睡眠の考え方も関係する?

「日本人は、睡眠を重視しません。仕事が忙しくて、やることがたくさんあって、自分の時間も取りたくて、その残りの時間で睡眠をとりましょう、という文化になってしまっている。睡眠を後回しにする生活習慣が根付き、その人々の子どもも睡眠不足になりがちに。悪循環はもう世代を超えて続いてしまっているんじゃないでしょうか」

──悪循環を断ち切るために理想的な社会は?

「『ここからここまでは睡眠の時間』と言って、『何時だから、寝る』と言って寝ることができるのが、普通の社会だと思います。まずとにかく、自分にとって必要な睡眠量はもう1日のうちから抜いて考えると。他にすべきと思うことがあっても、睡眠時間はもう置いておいて、手をつけないと。そういう根本的な考え方を変えないとまずいと思います」

※:2021年の調査によると、OECD33か国の平均睡眠時間は以下の通り。
中国9時間2分、アメリカ8時間51分、カナダ8時間40分、イギリス8時間28分、33か国平均8時間28分、ドイツ8時間18分、日本7時間22分

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聞き手:TBSテレビ デジタル編集部・久保田智子 構成:影山遼

(TBS NEWS DIGオリジナルコンテンツ「SHARE」より)