ホームレスの日々

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 それから離職者支援の貸付金で何とか食いつなぐ日を続けます。しかしその時もギャンブルを断ち切ることはできませんでした。45歳の年にその貸付金も得ることができなくなり、麻雀店などで働きながらその日暮らしを続けます。そうして得たわずかな稼ぎもギャンブルにつぎ込み、遂には路上で寝泊まりする身となっていました。46歳でした。

 「夜はビルの地下などに潜り込んで横になっていました。2月の最も寒い時期で、ほとんど眠れませんでした。おなかがすいて、スーパーの試食コーナーで食いつないでいたんです。深夜まで営業しているゲームセンターで、ゲームするふりをして時間を過ごしたりしていました」

 「退職した時は自己破産するつもりでした。でも、妹が助けてくれたんです。借金の一部を返済して連帯保証人になってくれて、離職者支援の貸付金を一時得ることができたんです」

 「でも、それからもダメダメで、ホームレスになってしまったんです」

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 北海道北部の小さな町から国家公務員になり、霞が関でも働いたエリートが、一転、ホームレスとして辛酸をなめることになりました。

 「俺はもう死ぬんだろうな」

 島田さんはぼんやりと覚悟しながら、その日のねぐらを探す身となりました。

 その路上生活で、後の人生を左右する出会いを迎えることになります。

◇文・写真 HBC油谷弘洋

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「夜回り」をする支援者(札幌市・1月)

 路上生活者はこの十数年で減り、街角でも見かけることが少なくなりました。その一方で、車の中やインターネットカフェを転々としながら暮らす人が増え、生活困窮者の実態が見えにくくなっています。ハウスレスという言葉をご存知でしょうか?ホームレスとハウスレスの違いは何でしょうか?

 生活困窮者がそうした暮らしを続ける理由は多様です。経済的な問題だけではなく、家族や職場とのトラブルから居場所をなくして孤立する人、障害や精神疾患があって社会への適応が難しい人、依存症になって治療を要しながらもその伝手を得ることができない人、一旦は生活保護の受給を得てもまた路上に戻る人など様々です。

 冬には-10℃を下回る厳しい環境の札幌で、ホームレスの人、ハウスレスの人、彼らを支援する人…。この連載企画では、それぞれの暮らしと活動に向き合って、私たちのすぐそばで起きている貧困と格差の今を考えます。

【連載のバックナンバー】
(第1話)ホームレスもハウスレスも経て…(1)
(第2話)ホームレスもハウスレスも経て…(2)
(第4話)ホームレスを支援する元ホームレス(2)
(第5話)伴走型支援で寄り添う留学生ボランティア
(第6話)地味に関わり続けて学ぶ看護学生
*このシリーズは今後も不定期で連載してゆきます