「あの時はあの時で毎日楽しかった」サポートに徹した東京五輪
石井アナ:上半身を鍛えてきたということがありましたけれども、具体的にお伺いしてもいいですか?
早田選手:昔から結構、手足が長い分、筋肉がつきづらい体質であって、今はみんなに「食べてる?大丈夫?」って。試合をしたりすると筋肉がしぼんでいってしまって、痩せていってしまうような体質。これだけ試合が多くてなかなか筋肉量を増やすのが難しい。卓球はオフシーズンがないのでそこの苦労があるんですけど、ちょっとでも時間がある時に強化できればなと思って練習ができる日はほとんど毎日どこかしらのトレーニングに取り組んでいる。体重としても増やしていけたらいいんですけど良いも悪いも全部自分の体なので自分に返ってくると思うので。パリ五輪に向けてどういった形で体づくりをしていくかが大事だと思っています。

石井アナ:改めて振り返ってみると、私も東京五輪の現場にいまして、早田選手がリザーブメンバーとしてボールを拾ってたりとか声を出して。特に無観客だったから早田選手の声が選手に届いているという姿も目の前で見ていたんですけど。今振り返るとあの時の時間というのはどのように感じていますか?
早田選手:選手の自分じゃなくてサポートをする側の自分っていう経験として思い出で、一番残ってる。あの時があって良かったなと思ってましたし、あの時はあの時で毎日楽しかったので。
石井アナ:当時は悔しいわけですよね?
早田選手:コロナで延期になって1年半前の代表発表になったので「悔しい」はそこで終わっていた、自分の中で。3人に直接聞くわけじゃないので、本当に自分が100%でサポートできていたのかというのは分からないんですけど、3人のためにどう自分が動けるか。右利きとあたるってなったら右の選手の角度で練習したりとか。そういうのを精一杯やろうと思ってサポートに入っていたので色々な景色が見られて楽しかったと思います。
「世界一を獲るためにすべてのことを変えていった」
石井アナ:代表選考レースの2年間、何が一番成長しましたか?
早田選手:卓球に対して進化する楽しさを覚えたというか。進化することって怖いけど、できたときに楽しさが2倍、3倍にもなる。それで勝ったときはなおさら嬉しいと思ったので。変えられるならどんどん変えていこうという思考にどんどん変わっていきました。
石井アナ:変えちゃうんですか?
早田選手:変えちゃいます。私は目の前の相手に勝つだけじゃなくてもっともっと上のレベルで世界一を獲らなきゃいけないという、相手に勝たなきゃいけないのにそこ(目の前の相手)に勝つためだけにやっていても限界があるよなというのを感じて。世界一を獲るためにすべてのことを変えていったという感じですね。
石井アナ:世界一を獲るとはっきりおっしゃいました。日本選手権後のインタビューでも「パリ五輪の金メダルを獲るためにやってきた」と。これだけはっきり言えるというのは、どこから自信というのが湧いてくるんですか?
早田選手:東京五輪のリザーブというのを経験してどの大会でもいいから世界一を獲るっていう覚悟があったからこそ、自分の中で思っているだけでは夢は叶わないと思うので。パリ五輪で金メダルが獲れなかったとしても、もしメダルが獲れなかったとしても、そこまで頑張ってきたものっていうのは経験にもなりますし。世界一になるために、そしてその先の目標を達成するために卓球をやる以上はずっと頑張り続けたいなと思っています。
石井アナ:まさにその言葉が、すぐ中国のニュースになっていて。「早田ひな選手が五輪で金メダルを獲ると言った」という記事まで出ていました。中国の選手に対する思いはどのようにありますか?
早田選手:自分を一生強くしてくれる存在。(試合で)勝ち上がれるようになってきてるからこそ中国選手との対戦も多くなってきているので、自分の中でつかんできているなと感じることもありますし、つかみかけた時に、また違う引き出しを持っていたり本当に果てしない道のりだなというのはいつも思っているんですけど。毎回毎回対戦して負けて、やるしかないなと思ってまた練習を重ねて。たった1回勝てるようになったりして、それが自分の中で楽しさでもあって。逆に言うと「これだけやってやっと勝てたか」という気持ちにもなります。
石井アナ:とにかく今回のパリで金メダルを獲ると。我々もそれに向かって全力で応援をしていきたいと思いますけど早田選手の心の中でどんな言葉だったりとかどんなものを大事にパリ五輪では戦っていきたいと思っていらっしゃいますか?
早田選手:パリ五輪で戦う自分を受け入れて頑張るという感じですね。パリに行くイメージはできていますし、東京五輪をサポートで経験させてもらったからこそわかる部分もあるんですけど、それは競技者じゃなくてサポートする側で経験しただけなので、もしかしたらパリに行った瞬間に感覚がなくなってしまうかもしれない・・・っていうのも。いろいろなことが起こるかもしれないですし、本当にそのときの自分で戦うしかないと思うのでパリに行ったときの自分で精一杯戦うというのが今の目標です。