(ブルームバーグ):1バレル=100ドルの原油相場は、なかなか下がらない。
中東からの原油供給量は、米国・イスラエルによる対イラン攻撃が史上最大級の供給混乱を招く前の水準にほぼ回復した。しかし、世界の原油相場は100ドルを上回って推移し、紛争開始時に比べ約40%高い水準にとどまっている。原油高は世界経済に衝撃を与え、インフレを加速させるとともに、産業界と消費者の双方を圧迫している。
主要7カ国(G7)とそのパートナー国が緊急備蓄の原油とディーゼル燃料を最大1億バレル放出すると2日に発表しても、価格を押し下げることはできなかった。むしろ、複数の問題が重なり、価格を高止まりさせている。
トレーダーは、戦争がいつ再び激化してもおかしくないと懸念している。特に米国が現在、ペルシャ湾に空母を追加派遣し、部隊を増強していることが懸念を強めている。現在の膠着(こうちゃく)状態にもリスクがあり、イランはホルムズ海峡の支配を図り、一部の船舶を攻撃している。
同時に、世界の石油在庫は大幅に減少し、現在は5年ぶりの低水準にある。ロシアによるウクライナでの戦争が続く中、原油を精製して石油製品にする多くの製油所からの輸出が滞っている。このため、他地域の製油所は操業を止めないために必要な原油を確保しようと、高値を支払うこともいとわない。
さらに、戦闘地域から別の海上輸送ルートを使って原油を運び出すこと自体が極めて難しく、それがコストを上乗せしている。
カロバー・キャピタルのハリス・クルシド最高投資責任者(CIO)は「供給が失われて在庫が減少し、原油をディーゼルなどの石油製品に転換する能力も損なわれた。原油の輸送が再開したからといって、こうした問題が直ちに解決するわけではない」と述べた。
原油相場が100ドルを上回り続けている五つの理由を以下に挙げる。
根強い懸念
市場では、戦闘が激化する可能性への懸念が根強い。米国とイランは戦争終結に向けた要求を巡って大きな隔たりがあり、今春に見られた全面的な交戦状態には戻っていないものの、時折攻撃を応酬している。先月には、サウジアラビアの東西パイプラインがドローン攻撃を受け、重要な原油輸送ルートが停止したことで、リスク持続が浮き彫りになった。

イランと米国はいずれも、戦略的要衝ホルムズ海峡の通航を管理しようとしている。同海峡は戦争前、世界の原油の20%が通過していた。さらに、親イラン武装組織フーシ派は、バブルマンデブ海峡を経由する紅海でサウジの船舶を封鎖すると宣言しており、もう一つの原油輸送ルートを脅かしている。
輸送コスト
一部の船舶はこうした要衝を通航しているものの、通常の航行に支障が生じていることで、原油を市場に搬送するコストは上昇している。
ホルムズ海峡から原油を運び出すには、海峡を往来するシャトル輸送や船舶間の積み替え、通常とは異なる航路に大きく依存している。ペルシャ湾から中国への原油輸送費は1日当たり120万ドル(約1億8900万円)を超え、タンカー運賃として過去最高を記録しており、消費者が負担するコストをさらに押し上げている。
国泰君安先物の石油担当シニアアナリスト、チャオ・シューイー氏は「核心的な問題は、供給量が回復しても、供給システムが完全に正常化したことにはならない点だ」と指摘。「市場が織り込んでいるのは、どれだけの原油が積み込まれているかだけではなく、その原油を安全かつ確実に、低コストで搬送できるかだ」と語った。
在庫減少
中東からの原油出荷は増えているものの、世界の在庫は戦争の影響で大幅に減少したままだ。コンサルティング会社エナジー・アスペクツのデータによると、世界の在庫は現在約43億バレルと、戦争が丸1カ月続いた最初の月である3月以降、4億バレル超減少している。
一方、世界の石油需要は、高値による当初の落ち込みから回復している。エナジー・アスペクツのデータによれば、現在の需要は日量約1億480万バレルと、戦争開始以降の最低水準を記録した5月から日量650万バレル増加している。
燃料危機
原油の供給が回復しても、ディーゼルなど石油製品の世界的な不足が解消されるわけではない。世界の主要な精製拠点である中東とロシアからの輸出は、引き続き抑制されている。
この結果、両地域以外の製油所は不足分を補うためフル稼働を続けており、酷使された設備が故障すれば、予期せぬ操業停止に陥るリスクがある。製油各社は原油の安定的な調達を確保するため、必要なだけのコストを支払っている。

インフレヘッジ
世界の中央銀行当局者は、燃料価格の上昇がインフレ圧力を高め、最終的に金利上昇につながる可能性があると指摘している。債券利回りが上昇する中、特に過去数週間は原油がインフレヘッジの手段として再び注目されていると、トレーダーは話す。これは原油の実需ではないものの、同様に相場を押し上げる可能性がある。
原題:Why Oil Is Stuck at $100: War Risk, Ship Squeeze, Low Supply(抜粋)
(2枚目の写真の説明を日本語にするとともに、関連記事を追加して更新します)
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