29日の米国債市場では長期債が続落した一方、短期債は上昇した。原油価格が下落したものの、依然として高水準にあるエネルギーコストがインフレを押し上げ、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げにつながるとの懸念を和らげるには至らなかった。

30年債利回りは一時5.61%を付け、ドットコム・バブル崩壊後の2002年以来の高水準となった。一方、2年債利回りは低下。ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁の発言を受けて、市場が織り込む10月の利上げ確率は約50%に低下した。

国債利回りは、世界金融危機から新型コロナウイルス禍にかけて続いた低金利時代の前に一般的だった水準に戻った。エネルギー価格の高止まりがインフレ圧力を強めているほか、大規模な社債発行も相場の重しとなり、利回りが一段と押し上げられている。

10年債利回りは一時5.29%を上回り、07年以来の高水準を付けた。

BMOキャピタル・マーケッツのイアン・リンジェン氏は「中東の紛争と、それが今後のインフレに及ぼす影響が引き続きマクロ経済最大のテーマであり、当面は米金利の動きを左右する可能性が高い」と述べた。

バークレイズ・キャピタルのアンシュル・プラダン氏は、今月の米国債売りでは生産性の伸びが持続的に加速するリスクがまだ織り込まれておらず、30年債利回りは6%まで上昇する余地があるとの見方を示した。

ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、インフレ抑制の一助として今年あと1回の利上げが適切となる可能性があると述べた。同総裁は同時に、米金融当局が今月利上げを決定したことを踏まえ、対応を急ぐ必要はないとの認識も示した。

ウィリアムズ総裁は29日、ニューヨーク州バファローでのイベントで講演。「経済が私の予測とおおむね整合的な形で推移すれば、インフレ率をより早期に目標水準に下げるため、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを今年終盤にもう一段引き上げることが適切となる可能性がある」と述べた。発言内容は事前に準備された原稿に基づく。

シティグループのストラテジストは米国債市場について、「軽度の買い手不在」状態だと指摘した。

RBCグローバル・アセット・マネジメントの債券部門で最高投資責任者(CIO)を務めるマーク・ダウディング氏は、世界的な債券売りは行き過ぎだとの見方を示した。

株式

米国株は小幅続落。S&P500種株価指数の構成銘柄では約300社が下落した。

経済指標では、8月の求人件数が減少し、5カ月ぶりの低水準となった。夏の終わりにかけて企業が人員拡大に一段と慎重になったことが示唆された。9月の消費者信頼感指数は前月比で低下し、2014年以来の水準に落ち込んだ。

eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏は求人件数について、「低採用・低解雇」の状況が定着していることを改めて裏付けたと述べた。消費者信頼感については、期待外れとなった総合指数も驚くべき結果ではないと話した。

個別銘柄のニュースとしては、OpenAIが新規株式公開(IPO)計画を先送りしたことを受けて、新たな資金調達ラウンドで少なくとも300億ドル(約4兆7200億円)の調達を目指していることが明らかになった。

外為

外国為替市場では円がドルに対してほぼ変わらず。前日終値を挟んで、もみ合いに終始した。この日の安値はニューヨーク時間早朝に付けた157円72銭。高値は朝方の156円98銭。

ドル指数は2営業日連続で上昇し、2カ月ぶりの高値を付けた。米長期金利の上昇がドルを押し上げた。ユーロは対ドルで2025年5月以来の安値に下落した。

ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのグローバル市場戦略責任者、エリアス・ハダッド氏は、他の主要中央銀行による金融引き締めでFRBとの乖離(かいり)が縮まり、ドルの一段高が抑えられる可能性があると指摘した。一方で「米国の経済成長が他国を上回っていることや、海外投資家による米国証券への旺盛な需要が、ドルの上値を抑えるこうした要因を打ち消す可能性がある」と語った。

原油

原油相場は反落。サウジアラビアの主要パイプラインを経由した原油供給が増え、米国とイランの協議停滞を巡る懸念を相殺した。

ドローン攻撃を受けて損傷したサウジの東西パイプラインは、輸送能力が約半分まで回復したとされる。ホルムズ海峡の通航が混乱する中、同パイプラインは重要な代替ルートとして、世界の市場にとって生命線となっている。

海上輸送にはなおリスクが残るものの、船舶は位置情報を発信しない状態で航行を続け、ペルシャ湾からホルムズ海峡を通じて一定量の原油が運び出されているもようだ。

またトランプ政権は、戦略石油備蓄(SPR)から最大4000万バレルを追加放出する方針を発表。原油価格の重しとなった。米国では中間選挙まで2カ月を切る中で燃料価格が急騰しており、エネルギー価格の上昇を抑制する狙いがある。

CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「ホルムズ海峡を通過する原油が増え、サウジの東西パイプラインも再稼働したことで、市場には供給面で一定の安心感が出ている」と指摘した。

「問題は今後のイランの出方だ。ホルムズ海峡を巡る影響力の低下で交渉に傾くのか、影響力を取り戻そうと緊張を高める戦略に傾くのかが焦点となる」と述べた。

30日に期限を迎える北海ブレント11月限は、前日比2.69ドル(2.6%)安の1バレル=102.59ドルで終了。中心限月の12月限は1.7%安の96.16ドルで終えた。

ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)11月限は同3.22ドル(3.5%)安い89.38ドルで引けた。

原油は月間で3カ月連続の上昇となる見通しだ。背景には、イラン戦争やサウジの東西パイプライン経由の供給混乱、米政府によるディーゼル輸出規制の可能性がある。

現物原油の供給は逼迫(ひっぱく)しているものの、国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は、追加の石油備蓄放出を最優先課題とするには、エネルギー危機が「はるかに深刻になり」かつ長期化する必要があるとの見方を示した。

ペルシャ湾岸の産油国は、イラン戦争による混乱が続く中でも市場への供給を維持する方法を模索している。オマーンはホルムズ海峡の外側に位置する港湾で、石油貯蔵能力を2倍以上に増やす計画を立てており、顧客が同海峡への依存を減らせるよう支援する。

戦争開始から8カ月目に入る中、米国とイランは先週ニューヨークで行った協議で、ほとんど進展を得られなかった。カタール外務省の報道官は29日、同国が現在、米国、イラン双方と会合を開き、解決策を巡って意見を交換していると説明。妥協点を見いだすことに注力していると述べた。

一方、トランプ米大統領は、政治犯の釈放と引き換えに対ロシア制裁を緩和する案を支持していると、米誌アトランティックがジョン・コール米特使の話として報じた。産油国のロシアは、制裁によって原油輸出が難しくなっている。

金

金相場は反発。前日の急落からやや持ち直した。PCE価格指数の発表を翌日に控え、インフレ抑制に向けてFRBが金融引き締めを継続するのか、見極めようとする動きが広がった。

金スポット価格は一時1.4%高の1オンス=4175.20ドルまで上昇した。前日は4%下落していた。

原油相場はこの日下落したものの、なお高止まりしている。また、米30年債利回りは5.6%を上回り、2002年以来の高水準に達した。エネルギー価格の高騰がインフレ圧力を強め、FRBに追加利上げを促すとの懸念が背景にある。利息を生まない金にとって金利上昇は通常、相場の重しとなる。

金相場は9月に入って6%余り下落。FRBが根強いインフレを抑制するため、2023年以来となる利上げを実施し、追加利上げの可能性を示唆したことが重しとなっている。短期金融市場は現在、10月利上げの確率を68%織り込んでいる。

TDセキュリティーズのシニア商品ストラテジスト、ライアン・マッケイ氏は、トレンド追随型の商品投資顧問(CTA)は金を含む貴金属で売り手に回るか、売りに傾きやすくなっていると話した。同氏は当面の下値トリガーを4053.70ドルとみている。

金スポット相場はニューヨーク時間午後2時26分現在、前日比49.13ドル(0.8%)高の1オンス=4164.84ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は同11.30ドル(0.3%)上げ、4179.70ドルで引けた。

欧州

債券市場は、原油価格の下落に伴い一時上げ幅を拡大したものの、ほぼ横ばいで取引を終えた。

ドイツ10年債利回りは、一時6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)下落したが、終値では1bp低下の3.6%だった。英10年債は2bp低下し5.4%となった。

欧州株はほぼ横ばいだった。同日発表の9月の米消費者信頼感指数が低下したものの、米30年債利回りは2002年以来の高水準を付け、午後にかけてリスク回避姿勢が強まった。

ストックス欧州600指数は一時0.7%高となったものの、小幅安で終えた。半導体株が上昇し、ASMLホールディングは4.2%高となった。原油価格の下落を受け、石油・ガス株は下落率上位となり、最高値から反落した。

個別銘柄では、スイス金融当局の法執行手続きが終了し、事業再編が完了したジュリアス・ベアが7.2%上昇した。同行は、自社株買い再開の許可を申請したと発表した。スイスのチョコレートメーカー、リンツ&シュプルングリーは、今年2回目となる売上高成長率見通しの下方修正を受け、8.7%下落した。

9月29日の欧州マーケット概観(表はロンドン午後6時現在)

原題:Stocks Fall as Long-Term Yields Hit 24-Year High: Markets Wrap(抜粋)

Bond Yields at 24-Year High Fuel Curve Steepening: Macro Squawk

US 30-Year Treasury Yield Rises to Highest Level Since 2002 (3)

Dollar Jumps Alongside Yields; Euro at 16-Month Low: Inside G10

Oil Drops as Saudi Arabia Ramps Up Flows Through Key Pipeline

Gold Gains as Traders Weigh Fed Rate Path Amid High Yields

Stocks Fall as Long-Term Yields Hit 24-Year High: Markets Wrap

European Stocks Erase Gains as Selloff in US Bond Market Resumes

Gilts Lead European Bonds Higher as Energy Prices Retreat

--取材協力:畠山朋子.

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