(ブルームバーグ):トランプ米大統領は中国の習近平国家主席を国賓としてワシントンに迎える。世界1、2位の経済大国が長年対立してきた問題で打開が期待されるというより、盛大な儀礼に重点を置いた習氏受け入れとなりそうだ。
トランプ氏は米東部時間23日午後6時(日本時間24日午前7時)、習氏と妻で元軍所属の歌手、彭麗媛氏をアンドルーズ統合基地で歓迎する式典に参加する。米国の大統領が中国国家主席を米国の空港の駐機場で出迎えるのは、極めて異例だ。
24日には貿易や台湾など難しい問題を巡り首脳会談が行われ、現在のトランプ政権で2回目となる国賓を迎えての夕食会も開かれる。米中首脳は25日に別れのあいさつを交わす。
習氏のワシントン訪問は2015年以来。米中双方とも、大きな進展への期待や対立の激化懸念を抑えている。20日にニューヨークで行われた2国間協議は前向きだったと評価されたが、11月に期限を迎える関税休戦の延長では合意に至らなかった。
ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)に所属し、アジアで勤務経験のある元米外交官エドガード・ケーガン氏は、「今回の訪米そのものがメッセージだ」と指摘。「ホワイトハウス、中国のいずれからも習氏訪米の主要目標を示すシグナルが驚くほど出ていない。両国の関係を管理することが非常に大きな目的だという位置付けだと思う」と述べた。
会談を円滑に進めたい意向を示すかのように、トランプ氏は国連総会での22日の演説で、中国を名指ししたのは1回だけだった。高市早苗首相との日米首脳会談では、習氏の訪米について協議した。
米国は熱烈な歓迎ぶりで友好ムードを演出するが、水面下では亀裂が残っており、中国によるレアアース(希土類)支配からの脱却を急いでいる。ベッセント米財務長官はAIを巡り、「中国が勝てば、その先に明日はない」と警告している。
中国側は、米国による台湾への140億ドル(約2兆2000億円)規模の武器供与計画を阻止することに重点を置いている。習氏が総書記として率いる中国共産党は、台湾を統治したことはないが、台湾を自国領土の一部だと主張している。
南京大学国際関係学院の朱鋒院長によると、中国の主な目標は首脳会談を巡り両国で好ましいメッセージを打ち出すことに加え、中国のAIを巡る脅威について米国が誇張しているとの認識を和らげることと台湾を巡る中国の最も重要なレッドライン(越えてはならない一線)を守ることだ。
朱氏は「米国の兵器製造が国内で障害に直面する中、台湾への武器売却のペースを鈍化させ、数量を減らすことは実現可能に見える」との分析を示した。
国内問題
米中首脳の会談は、双方にとってセンシティブな時期に行われる。トランプ氏(80)は11月の中間選挙で共和党が敗北する事態に備えており、政権末期に影響力が低下するレームダック化の可能性に直面している。一方、習氏(73)は異例の4期目に向けて権力基盤を固めているが、低調な経済成長と若者の失業率上昇への対応を迫られている。
会談には米国内の反発など、他にも大きな問題が影を落とす。上院軍事委員会のウィッカー委員長(共和党)は22日のスピーチで、「率直に言って、ホワイトハウスから助言を求められていたなら、これほど豪華な歓迎を用意して習近平氏をワシントンに招くべきではないと大統領に進言していただろう」とトランプ氏を批判した。
米政権高官によれば、習氏が訪米団の一員として中国企業のトップを米国に同行させることも見込まれていない。中国から米国への投資がすでに減少している中での訪米となる。
トランプ氏は、中国車の米市場参入を認めるかどうかについて相反するシグナルを発している。実現すれば業界に大きな波紋を広げる可能性がある。同氏はこれまで、中国企業が米国人労働者を雇用するのであれば、米国内に自動車工場を建設することを認める可能性を示唆していた。米当局者の1人によると、こうした取引が実現するには国家安全保障上の規則を満たす必要がある。
AIを巡る緊張が高まる中、米国は中国からの新しい人型ロボットと電力インバーターの輸入を禁止し、強制労働を理由に中国企業を制裁対象としたほか、中国の主要テクノロジー企業を国防総省のブラックリストに加えた。
中国政府も米企業を締め出し、ドローン(無人機)の輸出規制を強化した。それでも、より広範な休戦を崩壊させるほどには、いずれの側も対立をエスカレートさせていない。トランプ政権当局者はAIを巡る協議への期待を抑えているが、ベッセント氏によると、米中はこの問題について新たな対話を設けることで合意した。
中国の有力AI企業がシリコンバレーへの挑戦を急ぐ中、米国はこれら企業が「蒸留(distillation)」と呼ばれる手法を使い、米国の先端AIモデルの成果を不適切に利用していると非難している。中国政府はこの主張を否定している。
コンサルティング会社アジア・グループのマネジングプリンシパル、ブレット・フェタリー氏は「現実には、現在の特殊な政治・テクノロジー環境の下で対話から何が生まれ得るのか、どちらの側も実際には分かっていない」と語った。
米当局者は18日のオンライン記者説明会で、中国には合成麻薬フェンタニルの流入抑制とレアアース輸出の拡大に一段と取り組む必要があると明らかにした。
中国が20日に発表した税関統計によれば、中国から米国へのレアアース磁石の輸出は8月に前月比21%減少した。一方、中国の対米貿易黒字は同月、前年同月比で約44%急増し、290億ドルを超えた。トランプ氏が2025年1月に大統領に復帰して以来、最大の黒字幅となった。
中国は先端半導体とその製造装置を対象とする米国の輸出規制に引き続き脆弱(ぜいじゃく)だが、中国国内の半導体産業は前進している。
中国の華為技術(ファーウェイ)は先週、次世代AI半導体の計画を加速させた。米国のテクノロジー規制に対抗する姿勢を示す動きだ。
勢いづかせる可能性
習氏がワシントン入りする中、トランプ氏は異例の形で大統領権限の限界に挑んでいる。トランプ氏は主要報道機関3社をホワイトハウスから締め出し、中間選挙を前に投票ルールの変更を求めるとともに、関税を課す権限や出生地主義による市民権の廃止を目指す取り組みを裁判官が制限していることに不満を表明している。
司法省を含む閣僚級省庁の建物にはトランプ氏の画像をあしらった横断幕が掲げられており、権威主義国家を想起させるイメージだとの批判もある。
トランプ氏は習氏との関係を繰り返し自賛しており、北京で行われた前回会談の写真がホワイトハウス西棟の壁の目立つ場所に飾られている。こうした厚遇は、台湾問題に限らず習氏を勢いづかせる可能性がある。
「米国は基本的に習氏を容認している」とCSISの中国専門家ケネディ氏は述べた。「われわれは実際のところ、意味のある形では中国をほとんど制約していない」
原題:Trump Pageantry for Xi Will Mask Feud Over US-China AI Race (1)、Trump to Host Arrival Ceremony With China’s Xi 6pm ET Wednesday(抜粋)
--取材協力:Michelle Jamrisko、Jing Li、Colum Murphy.
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