(ブルームバーグ):世界最大の米国債市場を不安が覆っているにもかかわらず、一部の投資家は買いに動く十分な理由を見いだしている。利息収入だ。
高止まりするインフレや膨らむ財政赤字、相次ぐ社債発行を背景に、米国債は数カ月にわたり売られてきた。今週は指標となる10年債利回りは約3年ぶりに5%を上回った。その後、世界的な供給リスクの高まりを受けて原油価格が上昇すると、利回りは2007年以来の高水準を付けた。
インフレ抑制を目指し、米連邦公開市場委員会(FOMC)が16日、約3年ぶりに利上げしたことを受け、長期金利の上昇はいったん一服した。ただ、これまでの利回り上昇で投資家はすでに大きな痛手を被っており、主要な債券指数は2026年に入ってからだけでなく過去5年間でもマイナスとなっている。
長期金利の上昇は住宅ローン金利を約1年ぶりの高水準に押し上げ、景気への逆風にもなっている。一方、投資家にとっては明るい面もある。世界金融危機以降、わずかな期間しか訪れなかった好機だ。今購入すれば、今後10年あるいはそれ以上にわたり年率約5%のリターンを確保できる可能性がある。これを見過ごし難いと考える運用担当者が増えている。
米国の債券投資信託と上場投資信託(ETF)には、今年1-8月にネットで6250億ドル(約98兆6000億円)が流入した。モーニングスターが2010年までさかのぼって集計するデータでは、同期間として過去最高。パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)やバンガード・グループなどの運用会社は、投資家が株式から債券へとポートフォリオをリバランスするにつれ、流入ペースはさらに加速するとみている。
リバーフロント・インベストメント・グループのグローバル債券最高投資責任者(CIO)、ケビン・ニコルソン氏は「資金を投じるには魅力的な利回りだ。特に、過去15年以上にわたり株式に全面的に投資してきた投資家にとってはそうだ」と述べた。
ニコルソン氏によると、同社は短期債の保有を増やしており、より年限の長い債券の購入も検討している。

PGIMのチーフ・グローバル・エコノミスト、ダリープ・シン氏は、こうした資金流入を特に重要視している。AIハイパースケーラーの旺盛な借り入れが米国債利回りを押し上げる一因になっているとの懸念があるためだ。こうした状況を背景に、ベッセント米財務長官は長期債の買い戻し拡大など、長期ゾーンの利回り抑制に向けた措置を講じた。
シン氏によると、先週実施された10年物と30年物の米国債入札では、落札利回りが2007年以来の高水準となる中、堅調な需要が見られ、懸念の一部が和らいだ。特に30年債入札は落札利回りが約5.31%となり、歴史的に強い需要を集めた。
今週初めに10年債利回りが5%を上回った際にも買い手が現れた。FOMCの決定後に利回りは5%を下回り、17日には4.93%まで低下したため、こうした買いは報われた格好だ。
債券に流入する資金の規模は「非常に心強い」とシン氏は指摘。「記録的な規模の社債発行が同じ資金を奪い合う中でも、この水準なら米国債は魅力的だ」と述べた。
利回り上昇は、米投資適格債市場全体に広がっている。主要な債券指標であるブルームバーグ米国総合債券指数の最低利回り(YTW)は、イラン戦争勃発前の2月の4.15%から5.3%に上昇した。
FOMCの利上げ前に平均約3.4%の利回りを提供していた安全性の極めて高いマネー・マーケット・ファンドと比べても、債券で年5%を超える収益を得られる可能性は魅力を増している。一方、10年債利回りとS&P500種株価指数の来年の予想配当利回りとの差は、ブルームバーグが集計する約20年分のデータでほぼ最大となっている。
債券の復活
バンガードで債券クライアント・ポートフォリオ・マネジメント責任者を務めるマット・レズニエフスキー氏は「債券が復活し、利息収入も戻ってきた。これは強力な手段になる」と指摘。「利回り5%は通常、市場の関心が本格的に集まり始める水準だ」と語った。
もっとも、投資家は過去5年間に債券の魅力を何度も聞かされてきたが、そのたびに予想外に力強い成長やインフレ、財政見通しを巡る懸念によって強気論は後退してきた。数十年にわたり米国債に強気だったホイジントン・インベストメント・マネジメントも、債務とインフレへの懸念から7月に弱気に転じた。
それでも、債券投資家が自信を持てる理由はある。米国総合債券指数は16日までの年初来で1.6%下落し、年間ベースで2022年以来となるマイナスに向かっているが、現在得られる利息収入を踏まえると、債券の計算上、今投資した場合の1年間のリターンがマイナスになるのは、同指数のYTWが今後1年間に6.2%近くまで上昇した場合に限られる。同指数のYTWが6%を上回ったのは2001年が最後だ。
ピムコのシニア・ポートフォリオ・マネジャー、マイケル・カジル氏は「この水準で買う投資家には、利回りがさらに上昇しても耐えられる余地がかなりある」と述べた。
原題:Bond Rout’s Silver Lining Emerges With Chance to Grab 5% Yields
(抜粋)
--取材協力:Michael P Regan.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.