カナダは米国との貿易対立による打撃を和らげるため、世界の他地域との経済関係を強化する必要がある。カーニー首相は、欧州連合(EU)との関係を一段と緊密にしたい考えを明確にしている。

EUの行政執行機関、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は9月16日、カナダを世界で最も強力な貿易圏の「準加盟国」とすることを欧州議会での年次演説で提案した。これは、大方の予想を上回る踏み込んだ内容だった。

準加盟国となれば、カナダは欧州の市場や戦略産業への関与をさらに深められる可能性がある。ただ、この関係は現在の特殊な状況を踏まえ特別に設計される新たな枠組みとなり、EUはその具体的な意味をまだ定めていない。

準加盟国になると、EU内でどのような立ち位置になるのか

構想されているのは、正式加盟には至らないものの、その恩恵の一部にあずかることのできるパートナーシップだ。EUに正式加盟するには、欧州大陸に属する国であることが要件となるため、カナダは地理的に正式加盟を目指すことが法的に不可能だ。

考えられるモデルの一つが、欧州経済地域(EEA)に加わっているノルウェーとアイスランド、リヒテンシュタインだ。これら3カ国は、EUと貿易するためにEU単一市場のルールに従う必要があるが、EUの機関運営や法律の制定には関与できない。その代わり、多くの関税やその他の貿易障壁に直面することなく、EU域内で商品やサービスを販売し、資本を移動させることができる。

欧州議会国際貿易委員会のランゲ委員長はカナダとの関係拡大について、EUとスイスの関係に似た形としつつ、政治面での関与をより強めることが考えられると説明。

「スイスとは約100の異なる協定を結んでおり、かなり緊密な関係にあるが、スイスは政治的な意思決定プロセスには組み込まれていない」と述べ、カナダには完全な議決権を与えずに、EUの意思決定に一定の発言権を持たせることが可能との見方も示した。

カナダにとって何が変わるのか

フォンデアライエン氏とカーニー氏はいずれも、製造業とテクノロジー、防衛、エネルギー、北極圏を協力深化の対象分野として挙げている。

カーニー氏はブルームバーグとのインタビューで、渡航に関する権利や教育の分野でも進展を期待していると語った。カナダはすでに、1500億ユーロ(約27兆円)規模のEU防衛調達向け融資プログラム「SAFE」に参加する唯一の非EU加盟国となっている。

貿易面では、すでにかなり緊密な関係をさらに深めるのは容易ではないかもしれない。カナダとEUの貿易は、10年前に締結された広範な貿易協定である包括的経済貿易協定(CETA)の下にある。

CETAはほぼ全ての物品の関税を撤廃し、EUによるカナダのサービス市場へのアクセスを拡大した。CETAは暫定発効しているものの、EU加盟10カ国がまだ批准していない。こうした状況は、カナダとのさらなる統合に踏み込むことにためらっているEU加盟国があることを示唆している。

カナダはEU史上初の「準加盟国」になる可能性がある

カナダのEU準加盟は、すでに決まったようなものなのか

EUとの関係を緊密化する構想は、カナダで幅広い支持を得ている。アバカス・データが9月前半にカナダ人を対象に実施した調査では、外交政策や防衛、経済機会などの分野でEUとの協力を強化することに80%が賛成し、2月から6ポイント上昇した。EUへの正式加盟に対する支持はこれより低く、49%だった。

EU加盟国の一部にとって、準加盟国という形であってもカナダを迎え入れるという構想は受け入れ難い可能性もある。現在9カ国が正式なEU加盟を待っており、カナダを優遇していると受け取られかねない動きには一定の抵抗が生じかねない。

EU加盟を目指すウクライナは、ドイツのメルツ首相がウクライナに提案した「軽量版の加盟」という考えを拒否している。

それでも、EUにとって歓迎すべき追い風かもしれない。アイスランドは8月下旬の国民投票で、EU加盟交渉を再開しないことを決めた。その理由の一つは、EEA加盟国としてすでにEU市場への大きなアクセスを得ていることだ。アイスランドは人口わずか40万人の小国だが、その拒否は欧州委にとって一定の打撃となった。

もう一つの大きな問題は資金だ。EU加盟国は現在、次期7カ年予算を巡る交渉のさなかにあり、準加盟国が資金を拠出せずにEU加盟の恩恵を得ることを快く受け入れる公算は小さい。

EU接近はカナダと米国の経済関係を危うくするのか

米国とカナダの貿易協議が先月決裂した後、トランプ米大統領は200億米ドル(約3兆1000億円)相当のカナダ製品に50%の関税を課し、カーニー氏もほぼ同額の米国製品を対象に報復措置を講じた。

EUとの関係強化は、対外依存を減らすことを目的にカーニー政権が掲げる主権重視の政策を推進する一助となる。ただ、国境をまたぐサプライチェーンが複雑に絡み合うなど、カナダ経済は米国と深く統合されている。このため、EUと米国で異なる製品安全基準などの分野を含め、カナダ政府は難しい選択を迫られる可能性がある。

カーニー氏は8月の対米交渉決裂後、米国がカナダが将来結ぶ可能性のある貿易協定について発言権を求めたことが対立点の一つだったと語った。それはカナダが自ら決定する権利に対する容認できない制約だったという。

また、トランプ政権が石油や鉱物を含むカナダの豊富な天然資源をより多く確保することに関心を持っているのも明らかで、欧州によるこうした原材料へのアクセス改善を保証するような合意を好意的に受け止めない可能性がある。

カナダ議会図書館の調査報告書によると、カナダとEUの貿易は拡大しており、昨年の商品貿易額は1340億カナダドル(約15兆円)だった。サービス貿易は580億カナダドルに上った。それでも、昨年8000億米ドルを大きく上回ったカナダの対米貿易額と比べれば、わずかだ。

カナダはどの程度早くEU準加盟国になれるのか

新たな形の関係となるため、カナダの準加盟を正式なものとするために今後どのような手続きが必要になるのか、また正式加盟と同様の義務を伴うのかは明らかではない。

まずEU加盟国は、フォンデアライエン氏の提案を検討する必要がある。EUの行政トップとして、同氏には提案を発議する権限がある。

ただ、EU拡大に関する提案は、欧州議会と加盟国を代表するEU理事会の承認も必要となる。EUへの正式加盟には全加盟国の全会一致による承認が必要だ。モントリオールで10月に開かれるEU・カナダ首脳会議までに首脳らは具体的な進展を探ることになりそうだ。

原題:What Would EU ‘Associate’ Status Mean for Canada?: Explainer(抜粋)

--取材協力:Jorge Valero.

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