AIの普及と歩調を合わせるように、AIの影響を最も受けやすい専攻の卒業生の間で、就職率と卒業直後の収入が大きく低下したことが新たな調査で分かった。この懸念すべき傾向は、その後のキャリアを何年にもわたって左右する恐れがある。

米国勢調査局のエコノミストは、2016年から24年に米国で授与された学士号の約29%を対象とするデータを分析。22年11月にOpenAIの対話型AI「ChatGPT」が登場した後、新卒者に大きな影響が及んだことが分かった。

大学の専攻を、AIの影響を受けやすい度合いに応じて10のグループに分けたところ、最も影響を受けやすい上位10%では、ChatGPT登場後、卒業直後の就職率が5ポイント低下し、収入も13%減少した。新卒者の多くが、小売業や飲食業など賃金の低い分野で、経験をあまり必要としない仕事に就いたことも一因だという。

調査をまとめた研究者らは、「収入の落ち込みは、大規模なリセッション(景気後退)期に卒業した場合に生じる収入減と同程度だ」と指摘した。AIの影響を最も受けやすい上位10%では、コンピューター科学や情報システムなど、ソフトウエア関連の専攻が大半を占めた。

AIが若者の雇用を奪うとの懸念は、急成長するAI業界を巡る問題の一つにすぎない。最近相次いだセキュリティー関連の問題を受け、アンソロピックのダリオ・アモデイ最高経営責任者(CEO)や、OpenAIのサム・アルトマンCEOらは、最先端AIモデルの開発速度を落とすべきだとの考えを示した。これに対しトランプ米大統領は、開発を減速させれば、競争相手である中国をAI開発で利することになるとの見方を示した。

今回の調査は、失業率が全体では比較的低い4.1%にとどまる一方、若者が労働市場への参入に苦戦していることを示す新たな証拠となる。ニューヨーク連銀のデータによると、大学を最近卒業した人の失業率は6月時点で5.7%と、大卒者全体の2.9%のほぼ2倍だった。

米国勢調査局のエコノミストによると、ChatGPT登場前は、コンピューター関連分野に進む若者が急増していた。こうした分野は現在、AIの影響を最も受けやすいとされるが、当時は若者の流入に見合うペースで雇用も増えていた。AIの普及で状況が逆転しつつあるように見えるなか、こうした分野の卒業生が、大規模言語モデル(LLM)の普及前に卒業した人たちに追いつけるかどうかが問題だという。

研究者らは、「今回の結果は、AIの台頭がキャリア初期の若者に長期的な影響を及ぼす可能性を示している。とりわけ、AIの影響を受けやすい分野で多額の費用を投じて知識や技能を身につけてきた新卒者への影響が懸念される」と指摘した。

原題:Graduating in AI Era Is Like ‘Large Recession’ For Starting Pay(抜粋)

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