林芳正総務大臣の留任観測が示す高市政権の安定化

週末には金融政策以外にも興味深い政治報道があった。産経新聞が報じた「<独自>内閣改造、林総務大臣が留任意向 高市首相が近く処遇判断 続投なら総裁選出にくく」である。林総務大臣が高市首相から17日に予定されるとされる内閣改造に関して意向を確認され、留任したい考えを伝えたという。

仮に林氏が高市内閣に残留する場合、27年9月に予定されている次回総裁選に高市首相の対抗馬として立候補する可能性が低下する。

すでに「昨年10月の総裁選で首相と争った4人のうち、小泉進次郎防衛相、小林鷹之党政調会長、茂木敏充外相の3氏はそれぞれ留任する方向」(産経新聞)であり、高市首相が無投票再選に近い状況となる可能性が高まる。

これは自民党内のパワーバランスにも影響を与えるだろう。これまでは、林氏が対抗馬として出馬する場合、高市首相は前回総裁選と同様、麻生副総裁をはじめとする党内有力者の支持を取り付けながら党内基盤を固める必要があるとの見方が多かった。

しかし、対抗馬不在の状況になれば、そうした票集めの必要性は低下する。結果として高市首相の政策運営の自由度は高まることになる。

金融市場の観点からみれば、キングメーカーとされ、積極財政には消極的とされる麻生氏の影響力が低下する可能性が高いことが重要だろう。これは積極財政路線を抑制してきた勢力の影響力低下につながる可能性がある。

従来であれば、高市政権に対する牽制役として意識されていた政治力学が弱まることで、「高市リスク」、すなわち円安や金利上昇への警戒感はやや高まったと評価できるだろう。

それでも市場が高市リスクを急いで織り込まない理由

もっとも、現時点で金融市場が直ちに高市リスクを織り込みに行くとは考えにくい。なぜなら、足元で市場が最も重視しているのは、自民党内の力学ではなく、米国側の姿勢だからである。

特に足元ではベッセント米財務長官の発言が日本の政策運営に大きな影響を与えているとの見方が強い。市場では、高市政権が過度な積極財政やリフレ政策に傾斜する場合、米国側から何らかの牽制が入るとの期待も根強い。その意味では、高市リスクの帰趨を決めるのは麻生氏よりもベッセント氏だと言えるかもしれない。

また、林氏の行動にも注目しておく必要がある。これまで次期首相候補として全国行脚を続けてきた林氏が、あえて留任を選択するのであれば、その背景にも関心が集まる。

次回総裁選まではまだ約1年ある。仮に高市政権が途中で求心力を失った場合、閣外で動くよりも、閣内にとどまっていた方が「ポスト高市」として浮上しやすいとの判断も十分考えられる。

したがって、今回の内閣改造で高市首相のライバル候補が軒並み留任したとしても、それが直ちに党内の反高市勢力の消滅を意味するわけではない。

高市政権にとっては、金利上昇や円安が急速に進み、それが「日本版トラスショック」のような市場混乱につながることが引き続き最大のリスクである。当面は安定的な政策運営が続く可能性が高いと筆者はみている。

(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)