米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーシュ議長は、注目されていた8月の米消費者物価指数(CPI)を受け、来週の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で利上げに踏み切るよう強い圧力に直面している。

食品とエネルギーを除くコアCPIは前月比0.3%上昇し、市場予想を上回った。5年以上にわたりインフレが高止まりする中、物価上昇圧力を抑えるためFRBは行動する必要があると複数の政策当局者が主張しており、今回のCPIはそれを後押しする内容となった。

インフレーション・インサイツの社長兼創業者、オマイル・シャリフ氏は顧客向けリポートで、「FRBにとって、今こそ行動で示すか、黙るかの時だ」と指摘した。

FOMC後の記者会見に臨むウォーシュFRB議長(7月29日、ワシントン)

CPIを受け、投資家の見方は鮮明になった。フェデラルファンド(FF)金利先物の動向に基づく15-16日のFOMC会合での利上げ確率は85%超に上昇。10日時点では約70%だった。市場は12月までに2回目の利上げも見込んでいる。

CPI統計の発表前は、エコノミストの間で利上げ観測は市場ほど強くなかった。しかし発表後、TDバンクやJPモルガン・チェースなどのエコノミストが利上げ予想に変更した。

KPMGのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏は「今回の数字で、利上げに向けて重心が移りつつあることが一段と明確になった」と指摘。「今や問題は利上げするかどうかではなく、このインフレを抑えるためにどこまで利上げする必要があるかだ」と述べた。

ブルームバーグがまとめたデータによると、8月のコアインフレ上昇には、携帯電話サービス料金が過去最大の上昇となったことが大きく影響した。これはインフレへの一時的な影響とみることもできるが、複数のアナリストは、今後の改善を期待してFOMCが金利を据え置き続ける余裕はないと指摘した。

ウォーシュ議長が8月28日にワイオミング州ジャクソンホールで行った講演も投資家は考慮している可能性が高い。議長は基調的なインフレに目立った改善はみられないと指摘。インフレ率がFRBの目標である2%に向かっているとの新たな確信が得られなければ、政策当局者には「やるべきことがある」と述べていた。

インフレーション・インサイツのシャリフ氏は「ジャクソンホールであのような講演をしておいて、次回会合で利上げを支持しないというわけにはいかない」と述べた。

支持拡大

FOMCは今年これまでの5回の会合で政策金利を据え置く一方、利上げへの支持が広がっていた。7月会合では3人が0.25ポイントの利上げを支持して据え置き決定に反対票を投じ、投票権を持たない2人も、投票権があれば利上げを支持していただろうと述べた。

一方、利上げに慎重な政策当局者は、基調的なインフレが今後数カ月で鈍化するとの見方を示してきた。ただ、その一部は、金利据え置きを引き続き支持するには、インフレ鈍化を示すさらなる証拠を確認する必要があると認めていた。

来週の利上げ決定は、インフレ抑制を重視するウォーシュ議長の主張への信頼性を高め、7月29日の記者会見で損なわれた信頼の回復につながる可能性がある。議長はこの会見で、なぜ金利を据え置いたのかについて、少なくとも投資家が納得するような説明ができなかった。

ピムコのエコノミスト、ティファニー・ワイルディング氏はブルームバーグ・サーベイランスで、8月のCPIについて語った

クリシュナ・グハ氏らエバーコアISIのエコノミストは11日の顧客向けリポートで、「来週のFRB利上げは今や実施される公算が大きい」と指摘。「ウォーシュ議長は、原油高によるさらなる圧力を看過できるほどデータは良くなく、7月の記者会見で揺らいだ信頼を維持するためにも利上げが必要だと判断するとみている。投票権を持つメンバーのかなりの多数から支持を得られる可能性が高い」と記した。

ただ、利上げに踏み切れば、ウォーシュ氏を議長に指名し、利下げを繰り返し求めてきたトランプ米大統領の反発を招く可能性もある。トランプ氏は先週、FRBが利下げしなければ、一部の国との貿易を打ち切ると警告した。

国家経済会議(NEC)のハセット委員長は11日、ブルームバーグ・テレビジョンで、「FRBが大きな動きに出れば、大統領は何か言うだろうと思う」と述べた。

トランプ大統領は先週もウォーシュ議長を「素晴らしい新議長」と呼んでいたが、トランプ氏が批判する利上げは1回だけでは済まない可能性がある。

イランでの紛争が長引く中、原油価格は再び急騰している。北海ブレント原油は10日、一時1バレル=109ドルまで上昇した。さらにエコノミストは、データセンターの建設拡大など、インフレを押し上げている主な要因の一部は近く収まる可能性が低いと指摘している。

消費者の間でも懸念が強まっているもようだ。ミシガン大学が11日に発表した9月の消費者調査によると、1年先のインフレ期待は4.6%と、前月の4%から上昇した。今後12カ月に金利が上昇すると予想する消費者が2023年以来初めて過半数となった。

金融当局者の一部は、現在の金利水準は従来考えられていたほど需要を抑制していないと主張している。賃金がインフレを押し上げている兆候はみられないものの、失業率は低く、安定しているとの見方が広がっている。

こうした状況は、労働市場の減速懸念がより強かった昨年にFOMCが実施した計75ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げを巻き戻す根拠となり得る。

ブルームバーグが8-10日に購読者を対象に実施した調査では、FRBが来週利上げに踏み切る場合、1回または2回の利上げによる調整になる可能性が高いと大半が回答した。ただ、11日には一部のエコノミストが、利上げ回数はさらに多くなるとの見通しを示した。

RSM USのチーフエコノミスト、ジョセフ・ブルスエラス氏は顧客向けリポートで、「FOMCは2025年終盤に実施した3回の利下げを巻き戻し、今四半期に潜在成長率を大きく上回る成長が見込まれる景気を減速させる必要がある」と記した。

原題:Warsh Faces Intensifying Pressure to Raise Rates After Hot CPI(抜粋)

--取材協力:Maria Eloisa Capurro、Enda Curran、Catarina Saraiva、Andrew Ackerman、Kerry Benn.

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