(ブルームバーグ):トランプ米大統領は11月の中間選挙を控え、選挙運動への関与も資金支出も控えめだ。今週、テキサス州ダラスで開かれている共和党大会では関与を強める一方、長年成果を上げてきた戦略、つまり自らを前面に押し出す手法に力を入れている。
トランプ氏はここ数カ月、ワシントンで進める建設事業をアピールしたり、大型スポーツイベントに足を運んだりしてきた。その間、世論調査では支持率が過去最低水準に落ち込んでいた。しかし、共和党が逆風に直面する中、現在は中間選挙に一段と力を入れているようで、有権者に対し、自分が投票用紙に載っているつもりで投票するよう訴えている。
トランプ氏の元顧問スティーブ・バノン氏は「大統領は今回が説得によって票を獲得する選挙ではないと理解している」と指摘。大統領自身の支持基盤に加え、「投票に行く可能性が低い有権者」や「MAHA(Make America Healthy Again=米国を再び健康に)」運動の支持者を活気づける必要があると述べた。
「それができれば、下院では1議席差で過半数を維持し、上院では同数に持ち込める。それが目指しているところだ」と続けた。
トランプ氏の戦略では、2026年に有権者が抱える懸念を乗り越えるため、看板政策の減税法案や国境での取り締まり強化など、2025年の主な成果を改めて訴える必要もある。ただ、昨年の実績を誇示しても、現在の物価高やイラン戦争に不満を抱く有権者にとっては大きな慰めにはならない。
トランプ氏は最近、ホワイトハウスで共和党議員に自身の実績を掲げて選挙戦を戦うよう促し、「それについて話すだけでいい。そうすれば勝てるし、大勝できる」と述べた。接戦の候補者を応援する計画については、「私がやるのは、戦って、戦って、戦って、勝って、勝って、勝つことだけだ」と語った。
大統領がこの計画を貫くかどうかは、まだ分からない。ホワイトハウスは今年に入り、トランプ氏が各地を回って候補者の選挙運動を支援すると繰り返し約束してきたが、これまでのところ目立った動きはほとんどない。トランプ氏を支援するスーパーPAC(政治活動特別委員会)「MAGA Inc.」の支出も低調だったが、最近のテキサス州とサウスカロライナ州での支出を受け、共和党内では期待が高まっている。
2026年6-8月のトランプ氏の移動状況を、1期目の中間選挙があった2018年の同時期と比較すると、8年前の方が州共和党のイベントや資金集め、候補者の集会により多くの時間を費やしていた。投票日まで残り54日となり、この状況を転換する時間はほとんど残されていない。

9日夜にダラスで行われるトランプ氏の演説について説明した共和党関係者は、民主党がすでに大統領とその政策を批判する形で選挙戦を展開しているため、中間選挙を全国的な構図で戦う戦略には理があると述べた。この戦術はサウスカロライナ州で奏功した。先月、上院選共和党候補を決める特別予備選の決選投票で、政治経験の浅いダーリン・グラム上院議員が接戦を制したのは、トランプ氏の支援が後押しした可能性がある。
しかし、共和党が強みとみるところに、民主党は弱点を見いだしている。
民主党下院選挙対策委員会(DCCC)のスーザン・デルベネ委員長は「全米の共和党候補はおびえていると思う。われわれが下院奪還に近づいていることを分かっている」と述べた。「議会がトランプ氏の言いなりになることに、人々はうんざりしている」と語った。
上院選の情勢も1年前に比べて流動的になっており、共和党が伝統的に強いアラスカ州やテキサス州でも競争が激しくなっている。先週末には、MAGA Inc.が、テキサス州のパクストン司法長官の上院選に1000万ドルを投じた。同州では民主党が数十年にわたり、州全体を選挙区とする公職選挙で勝利できずにいる。
トランプ氏は選挙支援を強化しつつある可能性があるが、共和党で長年選挙実務に携わってきた関係者は、2018年には政権チームが下院を失う可能性が高いと判断した後、トランプ氏がミズーリ、ウェストバージニア、オハイオ各州を繰り返し訪れ、上院で議席を上積みすることに重点を移したと指摘した。
今年の夏は、そうした動きがほとんど見られなかった。トランプ氏は代わりに、ホワイトハウスやワシントンの記念施設の改修に多くの関心を向ける一方、プロバスケットボールNBA決勝戦や国際サッカー連盟(FIFA)ワールドカップ(W杯)決勝戦、サウジアラビア系の男子ゴルフツアー、LIVゴルフのベッドミンスター大会に足を運んだ。ダラスでの共和党大会後にはアイルランドに向かい、ドゥーンベッグにある自身のゴルフ場で大会を観戦する予定だ。
民主党で長年選挙実務に携わってきた関係者も、2018年のトランプ氏は選挙戦で強力な存在だったことを認める。当時は、大統領としてのトランプ氏の全てを好まなくても、経済にはおおむね満足しているという説得力のある訴えができたと指摘した。
民主党ストラテジストのジェシー・ファーガソン氏は現在との違いについて、2018年には「人々はトランプ氏の振る舞いに反発していた。2026年には、トランプ氏の下での負担に耐えられなくなっている」と述べた。
ホワイトハウスのウェールズ報道官は、トランプ氏の減税や処方薬価格の引き下げに向けた取り組み、国境警備を挙げて批判に反論。「選択肢がこれほど明確だったことはない。トランプ大統領の勝利を収めてきた常識的な政策をさらに推し進めるのか、それとも民主党の極端なリベラル政策と妨害を選ぶのかだ」と述べた。
共和党内の全てが、トランプ氏を前面に押し出す戦略に賛同しているわけではない。
共和党で長年選挙実務に携わってきた関係者は、トランプ氏に焦点を当て過ぎていると不満を示した。特に接戦を戦う候補者の中には、ダラスで2日間開かれる大会への参加を完全に見送るとみられる人もいる。今週欠席が見込まれる議員には、メーン州のコリンズ上院議員やナン下院議員が含まれる。ナン氏のアイオワ州の選挙区について、超党派の選挙分析機関クック・ポリティカル・リポートは勝敗の予測が困難な「トスアップ(五分五分)」と評価している。

一部の州ではすでに有権者への投票用紙の発送が始まる中、11月の選挙では民主党が下院の過半数を奪還するとの見方が優勢で、上院についても民主党内で楽観論が強まっている。上院で過半数を確保するには4議席を純増する必要がある。
こうした選挙情勢を踏まえ、トランプ氏が自身の支持基盤に訴えかける戦略は理にかなっているとの声が共和党内から上がっている。
共和党ストラテジストのアレックス・コナント氏は「共和党が強い州が接戦になっているのは、われわれが自らの支持基盤から十分な支持を得られていないからだ」と指摘。「テキサス、アイオワ、アラスカ各州では共和党支持者を呼び戻す必要がある。トランプ氏はその方法を知っている」と述べた。
原題:Trump’s Midterm Strategy Centers on Tax Cuts, MAHA and Himself(抜粋)
もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.