2020年6月に始まった景気拡大局面が戦後最長を更新した可能性がある。ただ、中東情勢の緊迫に伴う原油高や物価上昇が重しとなり、個人消費や設備投資には弱さが見られるなど、回復の実感は乏しい。

内閣府が7日発表した7月の景気動向指数(速報値)によると、足元の経済状況を示す一致指数の基調判断は「改善」に据え置かれた。正式な判定は事後的に行われるが、景気拡大が続いていれば7月で74カ月となり、「いざなみ景気」の73カ月を抜いて戦後最長となった可能性がある。

日本経済は、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)の影響で経済活動が急激に落ち込んだ20年5月に底入れした後、成長軌道を維持してきた。経済活動の正常化に伴い生産や個人消費、輸出が回復。人手不足を背景とした省力化投資やAI関連需要の拡大に伴う投資、サービス需要の拡大などが支えとなっている。

もっとも、拡大期間の長さとは対照的にその勢いは力強さを欠く。4-6月期の実質国内総生産(GDP)は3四半期連続プラス成長となったものの、個人消費や設備投資など内需は弱含んだ。所得環境の改善が続く一方で物価高が家計の購買力を圧迫している。混乱が続く中東情勢など先行き不確実性が拭えない中、内需の持ち直しは拡大局面を持続する鍵となる。

野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、日本経済は「低迷しているものの、明確な景気後退期ではない『グロースリセッション』の状態にある」と指摘。さらなる原油高や円安の進行、長期金利上昇などの外的ショックが生じれば、「戦後最長の景気拡大が終わりを遂げるという可能性は出てくる」と述べた。

内閣府発表の4-6月期のGDP速報値は前期比年率1.1%増と、3四半期連続のプラスだった。一方、国民全体の所得環境を表す実質国民総所得(GNI)は同1.8%減となった。原油高による交易条件の悪化などで実質所得の海外流出が膨らみ、GDPの増加が国内の所得改善につながりにくい状況が示された。物価変動を反映した実質賃金は年初から前年比プラスで推移しているものの、25年度までは4年連続のマイナスだった。

東京都心の風景

大和総研の神田慶司チーフエコノミストは、景気の強弱を判断する上で、戦後最長となる拡大期間の長さは「あまり意味がない」と指摘。「この数年は物価高の影響が賃上げを上回る形で出ていたので、生活が全然楽になっていないという印象だろう」と述べた。

7-9月期の実質GDPについて野村総研の木内氏は、中東混乱や原油高の影響が今後本格化する中で個人消費は一層悪化し、前期比マイナスに陥る可能性があるとみている。大和総研もマイナスを予想。中東向け輸出やインバウンド需要の抑制で輸出が減る一方、原油の代替調達に伴う輸入増で外需がマイナスに寄与すると分析する。

一方、景気の回復基調を支える要因もある。日銀は7月の展望リポートで、原油高が企業収益や家計の実質所得を下押しする一方、AI関連需要の増加や政府の負担緩和策、緩和的な金融環境などが経済を支えると予想。日本経済は伸び率を縮小しつつも、緩やかな成長を続けるとの見方を示している。

一致指数は、景気の「山」「谷」を判断する際の重要な材料となる。山や谷は、専門家で構成する内閣府の「景気動向指数研究会」での議論を踏まえて事後的に認定されるため、確定までに時間がかかる。

12年12月に始まった「アベノミクス景気」も一時は戦後最長になったとみられたが、その後の判定で記録更新には至らなかった。内閣府は22年、同景気拡大が18年10月に終了したと確定したほか、新型コロナ禍の20年5月を景気の谷と正式認定した。

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