(ブルームバーグ):電気自動車(EV)最大手、中国の比亜迪(BYD)が、カナダ・トロント郊外にある自動車大手ステランティスの休止中の工場について、取得を打診していたことが、地元政治家の話で分かった。米国との貿易摩擦が続く中、カナダの自動車生産拠点に世界のメーカーの関心が広がっている可能性を示している。
オンタリオ州ブランプトン市のパトリック・ブラウン市長によると、BYDは約6カ月前、同工場でのバス生産について協議するため接触してきた。ステランティスは同工場で「ジープ・コンパス」を生産するため設備を改修していたが、米国が外国製自動車に25%の追加関税を課したことを受け、昨年この計画を中止していた。
また、浙江零跑科技(リープモーター)とステランティスの合弁会社リープモーター・インターナショナルや、イタリアの自動車メーカーからも問い合わせを受けたと述べた。ブルームバーグ・ニュースは4月、ステランティスがリープモーターとカナダでのEV生産に向けた選択肢を協議していると報じていた。
カナダで生産される自動車の大半は米国向けに輸出される。ただ、米国との貿易戦争に加え、築40年の同工場で生産する新たな車種が決まっていないため、数千人の従業員の雇用を巡り、不透明感が強まっている。従業員を代表する労働組合ユニフォーは8月、ステランティスが同工場の売却を検討していると明らかにした。
同市長は、「米国が自動車分野で、われわれともはやパートナーでいられないような立場を取るのであれば、世界には多くの可能性がある」とし、「カナダの労働力を求める世界的な企業は複数ある」と述べた。
ステランティスは現時点で発表できることは何もないとしている。ルーアン・ゴセリン広報担当者は電子メールで、「ブランプトン工場で持続可能な生産策を見いだすことに引き続き注力している」と説明した。
同市長の事務所はその後の発表資料で、BYDが関与する計画は目先では何も進んでいないと補足。「現時点でBYDはブランプトンのステランティス工場に関心を持っていない」とした。
BYDの担当者にコメントを求めたが、返答はなかった。同社は過去にカナダで生産を手掛け、トロント郊外の別拠点でバスを製造していたが、現在はカナダと米国では乗用車やトラックを生産していない。
トランプ米大統領は外国製の乗用車とトラックに25%の関税を課している。ただ、カナダ製の車両については、米国製部品の比率に応じて税率が引き下げられる。両国間の緊張が高まる中、トランプ氏は先週、現行25%の関税率を2027年1月1日から50%に引き上げると警告した。
同市長は「ステランティスから、自動車に関税がかかっている限り、カナダで自動車関連の雇用を維持する経済合理性はないと言われた」と説明。「関税が8%でも50%でも100%でも同じだ」と述べた。
カナダのカーニー首相は1月、中国製EVへの関税を引き下げることで合意した。米国がカナダの自動車産業に打撃を与える措置を取っているため必要な対応だと説明。政府の目標は「カナダへの中国企業との新たな合弁投資」を呼び込み、「カナダの労働者に新たな自動車生産の雇用を創出する」ことだと述べた。
ただ、ブランプトン工場では23年終盤以降、自動車を生産していない。米国とカナダの貿易合意が近く成立する見通しもない中、ブラウン市長は工場再開について「かなり悲観的な見通しと言わざるを得ない」と語った。
原題:BYD Asked About Canada Stellantis Plant, Mayor Says (1)(抜粋)
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