(ブルームバーグ):世界でAIへの需要が高まる中、それに対応するためのデータセンター投資は2050年までに31兆6000億ドル(約5057兆円)に達する見通しだ。コンサルティング会社プライスウォーターハウスクーパース(PwC)によると、歴史上前例のない規模の投資ブームとなる。
PwCが2日に公表したリポートによれば、データセンターへの支出は鉄道、インターネット、電化などのプロジェクトをはるかに上回る規模となり、AIの普及がPwCの「中心シナリオ」の予測を上回るペースで進めば、今後25年間で50兆ドルに達する可能性もある。数字で比較すると、米国の国内総生産(GDP)は約30兆ドルだ。
消費者や企業、政府によるAIの利用が拡大する中、マイクロソフトやアマゾン・ドット・コムなどのテクノロジー大手に加え、中小のデータセンター事業者も世界各地で新たなコンピューティング施設を急ピッチで整備している。支出の大半はデータセンターの中核を成す機器向けで、世界最大のAI半導体メーカー、エヌビディアなどが手がけるハードウエアが対象となる。
一方でテクノロジー業界は、データセンターの整備を遅らせる恐れのある反発を和らげようとしている。調査グループ「データセンターウォッチ」によると、今年1-3月だけで、総額約1300億ドルに上る少なくとも75件のプロジェクトが地元住民の反対によって阻止または延期された。反対派は環境への影響や資源消費に加え、AIが雇用や社会を大きく変える可能性への懸念を挙げている。
PwCによると、予想されるデータセンター支出のほぼ半分を米国が占め、累計15兆1000億ドルに達する。PwCが「Global Data Centre Outlook(世界データセンター見通し)」を初めてまとめたもので、アジア太平洋地域が8兆2000億ドル、欧州が5兆6000億ドル、中東が1兆1000億ドル、アフリカが2550億ドルの累計設備投資をそれぞれ占める見通しだ。
画像処理半導体(GPU)やサーバー、ストレージシステム、ネットワーク機器などのハードウエアは定期的な交換が必要となるため、支出は今世紀半ばまで増え続ける。投資の大半を占めるのは土地や建設ではなく、演算能力を担う半導体の継続的な更新となる。
これは、メモリー半導体の生産設備や世界的な光ファイバー網の整備といった従来型の設備投資サイクルとは大きく異なる。こうした従来型の投資では、コストとリスクを初期段階で負担し、投資が「前倒し」されていた。
調査担当者はリポートで、「鉄道、電化、インターネット。いずれも巨額の資本を必要とし、それぞれの時代を特徴づけた」と指摘。「現在進行中のAIインフラ投資サイクルは、三つ全てをはるかに上回る。これは4-6年ごとに更新サイクルを迎え、終わる兆しはない」とした。
PwCの予測では、世界のデータセンター支出は年間ベースで今年の約8000億ドルから30年には1兆1000億ドル、50年には1兆8000億ドルに増加する。追加需要の最大のけん引役となるのは中国とインドで、両国の大規模な人口、急速に拡大するデジタル経済、企業活動や消費活動にAIが浸透する余地の大きさが背景にある。
PwCはオックスフォード・エコノミクスにデータセンターの設備投資額のモデル分析を委託した。リポートは46の国・地域をカバーしており、これらは世界の経済活動とデジタルインフラ投資の大部分を占める。
世界的な需要は旺盛だが、どの地域が投資を呼び込めるかは、電力供給力やデータ主権に関する要件、半導体の流通などの要因によって決まるとPwCは指摘した。中でも電力は、AIインフラ投資の立地を左右する最大の要因となる。
実際、予測の多くは、データセンター向けに信頼性の高い電力供給をどれだけ迅速に確立できるかにかかっているという。手頃な価格で安定的かつ低炭素化が進む電力を大規模に確保することは、多くの市場にとって最も達成が難しい要件となる。
また、予測では、半導体が国境を越えて自由に流通する比較的開放的な貿易体制を前提としているが、半導体のサプライチェーンが混乱すれば、世界の投資額は20%近く減少する可能性があるという。一方、主権重視の動きが強まれば、世界全体の投資額を減らすのではなく、その地域配分を変える可能性がある。
調査担当者は「31兆6000億ドルを巡る問題は、資本が存在するかどうかではない。資本は存在する」と指摘。「需要が本物かどうかでもない。需要は実在する。問題はどの地域、事業者、機関がそれを取り込める態勢にあり、どこがそうではないかだ」とコメントした。
原題:AI Data Center Spending to Reach $32 Trillion by 2050, PwC Says(抜粋)
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