「詐欺師の逃亡先」と化すドバイの闇
ブロックチェーン・グローバルが破綻し5000万豪ドルが消えた頃、リー氏はオーストラリアから姿を消しました。そして約8ヶ月後に姿を現したのがドバイです。

歴史的に世界貿易の中心を目指してきたドバイは、テクノロジーの優秀な人材や企業を集めるため、ビジネスがしやすい税制や規制環境を整えてきました。しかしその結果、正規の事業を呼び込む一方で、アメリカなどでは違法となるネズミ講や投資詐欺の温床にもなってしまっています。ドバイの駅のスポンサーに、アメリカ当局からネズミ講と認定された企業「オンパッシブ」が名を連ねていることからも、その無法地帯ぶりが伺えます。

UAEは過去に不正資金対策が不十分として国際的なグレーリスト入りし、浄化を図ってリストから除外されたばかりですが、暗号資産の分野では悪質な業者の流入を食い止められていません。リー氏はこの地で「ハイパーワン」や「ステーブルDAO」といった新プロジェクトを次々と立ち上げ、詐欺で得た資金をまた別の詐欺へと流す「暗号資産版マネーロンダリング」を行っているとみられています。
「言いがかりをつけているだけ」被告はドバイにいた
ブルームバーグの取材班はドバイでリー氏の足跡を追い、ついにリモートでのインタビューに成功しました。彼はインターポール(国際刑事警察機構)の手配を受けて自らドバイ当局に出頭し、60日間拘束された後に釈放されたばかりでした。
アメリカ当局からの詐欺罪の告発について問われると、リー氏は「規制当局が仕事をサボっていると思われたくないから言いがかりをつけているだけだ」「新たな価値を生み出す暗号資産が、米ドルの金融支配を脅かすものだと感じて脅威を抱いているのだ」と、陰謀論めいた自説を展開して自らを正当化しました。
さらに、全財産を失った初期の投資家に対してかける言葉を問われると、「同情はするが、私の話を聞き、時間をかけて稼ぐ仕組みを本当に理解した人は利益を得ている。私の知識を十分に活用できなければ、結果が出ないのは当然だ」と、驚くべき冷酷さで完全な自己責任論を振りかざしたのです。

アメリカの司法の手が及ばないドバイの地で、「ここの規制は既存のプラットフォームの味方だ」と笑みを浮かべ、新たな事業計画を語るサム・リー氏。ドバイがこうした怪しげな事業と詐欺師たちを匿い続ければ、暗号資産を隠れ蓑にした被害は世界中で拡大していくばかりです。誰も守ってくれない新興市場において、投資家一人ひとりが自ら情報を見極める力が、今かつてないほど問われています。