(ブルームバーグ):米政府が上場企業の株式を取得するという前例のない戦略を進める中、トランプ米大統領の政策に追随した投資家は、この1年で大きな利益を上げてきた。
ただ、中間選挙を控え、世論調査では民主党が少なくとも下院か上院のいずれかで過半数を奪還する可能性が高まっており、政権による企業への出資が議会や裁判所で厳しく検証されるリスクが意識されつつある。そうなれば、これまで株価を押し上げてきた勢いは反転しかねない。
BCAリサーチで地政学・米政治分析を統括するマット・ガートケン氏は、「米国の制度の中では、こうした介入主義的なアプローチはまだ法的にも政治的にも十分に検証されていない」と指摘。「その過程では紆余(うよ)曲折があるだろう」と述べた。
政府の関与が、多くの出資先企業の株価を押し上げてきたのは確かだ。特に個人投資家の間では、政府出資の候補企業を発表前に探し当てようとする動きが広がった。的中すれば、少なくとも発表直後の急騰はほぼ確実で、その後の上昇余地も期待できたためだ。
インテル株は、トランプ政権が同社への出資を協議していると最初に報じられてから1年で300%余り上昇。レアアース開発の米新興企業MPマテリアルズは、国防総省が昨年7月に4億ドルを出資して以来87%、カナダの鉱物探査会社トリロジー・メタルズも米政府が10%出資することで合意して以来73%上昇している。
もっとも、こうした株価上昇の多くは短期間に集中している。トリロジー・メタルズの米国上場株は発表後数日で1株2.09ドルから10.60ドルまで急騰したが、その後3.62ドルまで下落。MPマテリアルズも政府による出資後5週間で150%余り上昇したものの、その後1年間では約27%下げている。
インテルはAI向け半導体需要という追い風もあり、やや事情が異なる。業績改善に伴って株価は着実に上昇。6月には、アップルがインテルと協力して米国内で半導体を設計・生産するとのトランプ氏の発言を受けてピークを付けた。ただ、その後は37%下落し、この期間のS&P500種株価指数の構成銘柄では5番目に悪いパフォーマンスとなっている。

市場の懐疑論を強めているのが、インテルの取締役会や米商務省、ラトニック商務長官を相手取り、政府の持ち分解消を求めて株主が訴えている問題だ。原告側が勝訴すれば、政権による出資案件全体の持続性を見直す必要が生じるだろう。
インテル株を保有するシーバート・フィナンシャルのマーク・マレク最高投資責任者(CIO)は、「状況を好転させたのは政府の投資で、現在の株価水準を支えている要因でもあると考えている」と指摘。「それがなくなれば、次に何が起きるのかという問題になる。そのため、当社では投資額を全く増やしていない」と述べた。
政府の出資を巡っては、米政治の党派対立が激しさを増していることも懸念材料だ。民主党が上院か下院の多数派を奪還すれば、公聴会を開いたり、証人を召喚したりできる。
民主党が上院を制した場合、銀行委員長への就任が見込まれるエリザベス・ウォーレン上院議員はすでにラトニック氏に質問状を送り、インテルへの投資について説明を求めている。民主党指導部も、トランプ政権や大統領一族と関係のある企業を調査する構えだ。
調査会社ベダ・パートナーズの共同創業者、ヘンリエッタ・トレイズ氏は、民主党は「可能な限り頻繁に、できるだけ長く大統領を攻撃しようとするだろう」と話す。
民主党主導の委員会が企業幹部や政権当局者を議会に召喚し、企業ブランドや株価にリスクをもたらすと同氏は予想。「これは今、投資家が理解しておくべき最も重要な点の一つだ」と語った。
インテル、トリロジー・メタルズ、そして政府出資を受けた別の企業USAレアアースはコメントを控えた。トリロジーは、政府との取引の完了手続き中であることを理由に挙げた。商務省や記事中で言及した他の企業は、コメントの要請に応じなかった。
投資家にとっては、選挙よりも訴訟の方が大きなリスクになり得る。インテル株主による訴訟では、CHIPS法は補助金の受給条件として、政府が株式取得を要求する権限を認めていないと主張。今回の取引は取締役会の受託者責任に違反し、「強要による」収奪に当たるとしている。
ラトニック氏は、この取り決めは連邦法に基づき認められており、米国の防衛産業基盤にとって重要だとして、裁判所に訴えを退けるよう求めた。インテルのリップブー・タン最高経営責任者(CEO)ら取締役も棄却を申し立てている。
アトランティック・カウンシルのジオエコノミクス・センターでシニアディレクターを務めるジョシュ・リプスキー氏は、「CHIPS法には商務省がインテルに対して行ったような措置を取る権限がないと裁判所が最終的に判断すれば、こうした取引の多くに幅広い影響が及ぶ」と述べた。
トランプ政権の戦略は、政府がこれまで企業救済を目的に民間企業へ関与してきた従来の姿とは異なる。2009年には米財務省が経営難のゼネラル・モーターズ(GM)を救済するため約60%出資した。だが、現在は経済にとって重要とみなされる米大企業を救済するのではなく、安全保障や産業政策を軸に、政府が事実上「勝ち組」を選ぶ色彩が強まっている。

ジェフリーズのアニケット・シャー氏は、株価上昇には「政府という顧客と代弁者を得て、企業の成功を後押ししてくれるとの見方」が織り込まれていると述べた。
だが、政府の後押しは永続するとは限らない。HBウェルス・マネジメントのジーナ・マーティン・アダムズ氏は、政府が企業の意思決定への影響力を強め、投資資金が政治的な流行を追うようになれば、長期的には株主価値を損なう恐れがあると指摘。「株価には追い風となった可能性があるが、その背景には投資家が政治情勢をにらみながら売買しているという事情がある。それだけに、株価上昇の勢いはかなり脆弱(ぜいじゃく)だ」と述べた。
原題:Trump Backlash Adds New Risks to the Stocks the Government Owns(抜粋)
--取材協力:Caitlin Reilly、Mike Leonard.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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