かつてない水準に高まった山火事リスクを資本市場に移すため、保険会社がカタストロフィー(CAT)債の活用を広げている。

業界専門情報サイトのアルテミスが公表したデータによると、山火事リスクを含むCAT債の発行額は今年これまでに50億ドル(約8000億円)を超えた。過去最高を記録した2025年通年の水準に迫っている。25年の発行額は前年の約2倍だった。

市場は依然として米カリフォルニア州が中心だが、ブルームバーグが取材した保険会社や投資家は、欧州でも山火事リスクを民間投資家に移す手法の検討は避けられないとみている。世界で最も速いペースで温暖化が進む欧州が、山火事の頻発と深刻化に直面しているためだ。

CAT債は、保険会社が抱えきれないリスクを資本市場に移すための仕組みだ。あらかじめ定めた条件に該当する大災害が発生すれば、投資家は損失を被る可能性がある一方、発生しなければ利益を得られる。

リスクモデル会社KatRiskによると、山火事は世界の自然災害の中で最も急速にリスクが高まっており、保険損失は年約12%のペースで増えている。同時に、こうしたリスクを分析する金融モデルに対する投資家の抵抗感も薄れつつある。

Photographer: Brais Lorenzo/Bloomberg

世界最大の保険ブローカー、米マーシュで欧州のグローバル・プレースメント責任者を務めるマネジングディレクター、タイソン・ビッカリー氏は「リスクを高い精度で数値化することが鍵だ」と指摘。「投資家には、基礎となる災害データと大災害モデルへの信頼が欠かせない」と強調した。

欧州では、今シーズンの山火事による被害額を推計するにはなお時期尚早だと保険各社はみている。保険仲介大手エーオンの気候リスク・コンサルティング世界責任者、ウィル・ブルース氏によると、欧州のCAT債市場が米国の水準に追い付くまでにはまだ時間がかかる。

「欧州の山火事リスクを対象とする市場が形成されるかどうかは、さまざまな要因に左右される。リスクにさらされる資産の増加、リスク移転の需要、投資家の投資意欲、モデリングや分析手法の継続的な進歩などだ」と述べた。

一方、ビッカリー氏は「欧州の山火事モデリングは進歩している」としながらも、「カリフォルニアなどの市場に比べれば、なお成熟度は低い」と話した。

山火事リスクに関連するCAT債の発行増は、CAT債市場全体の拡大と歩調を合わせている。昨年は新規発行が45%増え、発行残高は過去最高の610億ドルに達した。リスクの種類別では、ハリケーンが依然として圧倒的な比重を占める。

比較的小さい市場

再保険大手スイス・リーで大災害リスク部門を率いるバルツ・グロリムント氏は、山火事リスクを資本市場に移すことへの関心は高まっているものの、「保険業界が抱える山火事リスクの規模は、CAT債が通常対象とする世界的な巨大災害リスクに比べれば、なお小さい」と指摘する。

一方、気温が今後も上昇し続ける見通しを踏まえると、山火事はより頻繁に発生し、被害も深刻化するとみられる。これまで投資家は、複数の災害を対象とした債券の一部として山火事リスクを引き受けることが多かったが、山火事だけを対象とする債券も増えている。

2025年1月にロサンゼルス都市圏を襲った山火事では、1万6000棟を超える建物が焼失し、保険損失は過去最大の400億ドルに達した。近年、更新されなかった山火事保険が100万件を超え、州が支援する保険「カリフォルニアFAIRプラン」への依存が急速に高まっている。このプランが抱える保険リスクは拡大し、ロサンゼルス郡だけでも24年から25年にかけて50%超増加した。昨年にはCAT債市場にも参入した。

モデル改善が投資を後押し

山火事を対象とするCAT債のリスクモデルには、多くの課題がある。火災がいつ、どこへ広がるかを予測するには、地域の地形を把握した上で、気温、植物の生育状況、風速を正確に分析・予測する必要がある。一方、山火事は、予防策によってCAT債のリスク指標が大きく変わり得る数少ない自然災害の一つでもある。乾燥して生い茂った草木を、シーズンの早い段階で刈り取ることなどがその例だ。

プラナム・インベストメンツのシニアファンドマネジャー、ダーク・シュメルツァー氏は、山火事は今や、リスクを「単独で」投資家に移すことができるほど大きな災害リスクになったと指摘する。同時に、ベリスクやムーディーズなどが新たなリスクモデルを公表し、投資家がリスクを判断する材料も増えている。

再保険ブローカーのアクリシュア・リーによると、山火事モデルは過去には山火事リスクを過小評価する傾向があったが、今ではより新しい火災データや気候動向を取り入れ、信頼性が高まっている。

アクリシュアは報告書で、保険リンク証券(ILS)の観点から見れば「モデリングの改善がもたらす影響は極めて大きい」と指摘。「その効果は価格設定にも波及している。質の高いデータと慎重な商品設計を備えた案件は投資家に受け入れられやすい。一方、山火事リスクが十分に把握されていない場合は、依然として資本コストが高くなる」とした。

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原題:Wildfires Fan Record Sales of Catastrophe Bonds to Backstop Risk(抜粋)

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