(ブルームバーグ):データセンター事業に必要な巨額資金を調達するため、企業が投資適格級の債券でもジャンク債投資家に買い手を求める動きが広がっている。
QTSリアルティ・トラストは今週、マイクロソフトに関連するジョージア州の施設向けに39億ドル(約6200億円)の債券を発行した。債券は投資適格級の格付けを得ていたが、利回りは約7.23%と、中位格付けのジャンク債をも上回る水準だった。ブラックロックが7月にテキサス州のデータセンター事業向けに発行した優良債も、利回りは7.53%だった。
事情に詳しい関係者によると、いずれの案件でも、引受会社は投資適格債を中心に運用する投資家だけでなく、ハイイールド債を中心に運用する投資家にも債券を販売した。
投資適格級の案件でさえ、債券発行でジャンク債投資家の資金を取り込む必要が出ている。企業がAIインフラに数千億ドルを投じる中、それだけ資金調達を巡る競争が激しくなっていることを示している。ブルームバーグ・ニュースがまとめたデータによると、企業は今年、データセンターなどAI関連投資向けにすでに4100億ドル超を借り入れている。
アドベント・キャピタル・マネジメントのハイイールド債ポートフォリオマネジャー、スティーブン・シュバイツァー氏は「ハイイールド債投資家が、投資適格級のテクノロジー債に出向くようになっている」と指摘。「盤石なバランスシートを持つ企業の債券を、ダブルB格のような利回りとスプレッドで買えるなら、足を運ばない手はない」と述べた。
ジャンク債投資家が好機を捉えて投資適格債を買うこと自体は、特に目新しいことではない。例えば新型コロナウイルスのパンデミック時には、多くの運用担当者が割安に見えた比較的高格付けの債券を積極的に買い入れた。
ただ、大手テクノロジー企業の借り入れは前例のない規模に膨らんでおり、これまでの資金調達のあり方とは大きく異なる。数十年にわたり、必要な投資資金はまず株式で、その後は収益性の高い事業が生み出すキャッシュフローで賄うことができた。
だが現在は、AIに巨額の先行投資が必要となる中、収益が得られるまで数年かかる可能性のある事業のために大量の債券を発行している。その分、こうした事業への融資・投資にはより大きなリスクが伴う。
流通市場では、オラクルやスペースXなどが発行した高格付け債が、ジャンク債並みの利回りで取引されている。こうした企業が再び債券を発行する場合、ジャンク債並みの高い利回りを提示する必要があることを示している。
シーバート・ファイナンシャルの最高投資責任者(CIO)、マーク・マレク氏は「テクノロジー企業は借り入れを増やしているが、その調達コストも高い。そうなれば加重平均資本コスト(WACC)にも影響が及び、それが問題になってくる」と述べた。
それでも、テクノロジー企業による借り入れは今後さらに膨らむ見通しだ。バンガード・グループは今週のリポートで、ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)のAI関連支出が今年は約8000億ドルに達し、2027-30年には年間1兆ドルを超える可能性があると指摘した。その大半は債券市場で賄われる見通しだ。

バークレイズの米国投資適格債リサーチ共同責任者、アンドリュー・ケッチズ氏は「新規案件を引き受ける際には、その後にどれだけの発行が続くのかが常に大きな問題になる。そのため投資家は、こうした債券を引き受けるのに十分な見返りを求めている」と指摘。「こうした債券は、ハイイールド債やディストレスト債の投資家まで関心を示すような利回り水準に達している。投資基準を満たすリターンが期待できるためだ」と述べた。
AI関連債の利回りが上昇すれば、投資家層が広がる可能性がある。ただ、ジャンク債投資家の買い余力にも限界がある。米ジャンク債市場の規模は約1兆5000億ドルと、投資適格債市場の5分の1未満にとどまり、概して流動性も低い。
クラウン・エージェンツ・インベストメント・マネジメントの債券担当グローバルCIO、スラウォミール・ソロチンスキー氏は「ジャンク債投資家が新たなAIブームに投資して運用資産を分散させたいとしても、そのためには保有するジャンク債の買い手を見つける必要がある。通常でも難しい上、流動性が乏しくなる夏場ならなおさらだ」と述べた。
モルガン・スタンレーのストラテジストによると、テクノロジー企業の借り入れコスト上昇は、最終的に同業界の低格付け企業による債券発行を抑える可能性がある。潤沢な財務基盤を持つ企業なら、収益が得られるまで数年かかることを承知の上でAIインフラに巨額の先行投資ができるが、財務余力の乏しい企業にはそれが難しい。
モルガン・スタンレーのビシュワナス・ティルパチュー氏とビシュワス・パトカー氏は最近のリポートで「こうした借り手にとって、スプレッドの拡大はより大きな制約となる。資金調達コストの上昇が、今後の債券発行を自然に抑えることになる」と記した。
原題:Juicy Yields Draw Junk Bond ‘Tourists’ to AI Debt: Credit Weekly(抜粋)
--取材協力:Rheaa Rao.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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