(ブルームバーグ):今週の金融市場を大きく動かした米国の長期国債買い戻し増額は、イールドカーブコントロール(YCC)など日本銀行が採用した利回り抑制策と同様の措置なのだろうか。市場関係者の間で、こうした比較が行われている。日本は利回り抑制に取り組み、結果として長期にわたる通貨下落を実現させた。
米財務省は週半ば、満期前に長期国債を市場から買い戻すオペの1回当たり実施額をこれまでの2倍に引き上げると発表した。これを受けてドルは下落、21日の取引で3カ月ぶりの安値を付けた。
ブルッキングス研究所のシニアフェロー、ロビン・ブルックス氏は今回の措置について、米国が日本と同じ通貨切り下げの道をたどっていることを示す「これまでで最も明確な兆候」だと指摘した。政権は「火遊び」をしようとしていると語った。
米国債は発表を受けて当初上昇したものの、その24時間後には上昇分を失った。一方、金などの貴金属は上昇を続け、「ディベースメント取引」が戻ってきたとの声もささやかれ始めた。
スタンダード銀行のG10戦略責任者、スティーブン・バロー氏は、国債買い戻しオペで利回りを抑えようとしてもドルへの下押し圧力を強めるだけで、利回り上昇の根底にある財政赤字の問題に対処していないと論じた。

もっとも、ブルームバーグ・ドル指数は年初来で1%の下落にとどまっており、日本との比較には限界がある。安倍晋三元首相が推進した経済政策「アベノミクス」は、成長を促すための積極的な金融緩和に依存していた。
その中には、事実上、円を大量に供給して国債を買い上げ、利回りを低く抑える大規模な量的緩和策も含まれていた。この政策は円相場を大きく押し下げた。
米財務省の国債買い戻しは、こうした金融緩和策とは比較できない。また米国は、利回りを低く抑える代償として通貨安を受け入れることを選択したわけでもない。
バロー氏はその証拠として、米当局が円を支えるために実施した7月の為替介入を挙げた。ドルではなくユーロを使うことで、米当局はドル相場への影響を回避。一方、日本が介入に必要なドルを調達する目的で米国債を売却する必要性も軽減し、米国債利回りを守った。
ただ、バロー氏は「問題は、米国が両方のいいとこ取りをすることはできないということだ」と警告した。
ジャクソンホール
為替トレーダーは、月末に開催されるジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)でのウォーシュ米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演を待っている。
利下げ観測をけん制するタカ派的な発言が出れば、ドルに一息つく余地が生まれる可能性がある。
キャピタル・ドット・コムのシニア市場アナリスト、ダニエラ・ヘイソーン氏は「根強いインフレや最近の長期金利上昇、FRBのバランスシートの将来的な規模と役割について、ウォーシュ氏の見解を示す何らかの手掛かりが出れば、米国債やドル、金、株式にわたって相場水準の大幅な見直しを引き起こす可能性がある」と記した。
しかし、FRBが利上げを求める圧力に抵抗すれば、当局はドル安を志向しているとの見方が勢いを増す可能性がある。オプション市場のセンチメントは、ドルの現物相場が下落する中でなお、2月以降で最もドル弱気に傾いている。つまり、トレーダーはドル安が今後さらに進む展開に備えているということだ。
ブルッキングス研究所のブルックス氏は、「為替はいったん下落のスパイラルに入ると、落ち着かせることがほぼ不可能になる」と述べた。
原題:US ‘Playing With Fire’ as Dollar Risks Yen-Style Debasement(抜粋)
もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
©2026 Bloomberg L.P.