(ブルームバーグ):最近の債券相場の変動によって意外な構図が浮かび上がった。最もリスクが高く、複雑な一部の債券が結果的に最も安定した部類に入っている。
ブルームバーグがまとめた10日間の値動きによると、その他ティア1(AT1)債のボラティリティーは、高格付け社債を75%下回った。長期国債など一般的な債券が、インフレや財政問題、社債の大量発行への懸念に揺さぶられているのとは対照的だ。
AT1債は2023年、クレディ・スイスが保有者のAT1債を無価値化したことで注目を集めた。当時のAT1債のボラティリティーは高格付け債の10倍に達し、今年のイラン戦争が最も激しかった時期にも、10日間でみたボラティリティーはほぼ2倍だった。
アトランティコムニウムのファンドマネジャー兼調査責任者ロマン・ミジニアック氏は、AT1債は「金利変動への反応は極めて鈍く、マクロ経済の動向にもほとんど左右されない」と指摘。AT1債はいまやリスクフリー資産だと冗談を飛ばし、「これは多少挑発的な言い方だが、過去12カ月の値動きを見れば、これ以上ないほど安定しているのは事実だ」と述べた。
背景にあるのは高い利回りだ。ABNアムロ銀行が今週発表した調査によると、投資家の約80%は、AT1債から得られるクーポン収入だけでトータルリターンの目標を達成できる。
世界有数の大手銀行が発行するAT1債は高い利回りを提供しており、投資家の資金が殺到している。AT1債は偶発転換社債(CoCo債)とも呼ばれ、国債利回りの上昇によって投資妙味はさらに増している。
AT1債は、クーポン支払いが見送られる可能性や償還の不確実性、銀行破綻時に債券保有者の中で真っ先に損失を負うリスクなどの見返りとして、高い利回りを提供する。ブルームバーグのグローバルCoCo債指数の平均利回りは5.7%と、投資適格社債の5%未満、国債指数の約3.7%を上回る。
一方、利回りを追い求める動きによってリスクも蓄積している。AT1債のスプレッドは過去最低水準まで縮小し、グローバルCoCo債指数のスプレッドは先週、初めて200ベーシスポイントを下回った。ミジニアック氏は、極めて狭いスプレッドを無視してAT1債の利回りを追い求める投資家は「非常に油断している」と警告した。

原題:Riskier AT1 Debt Is Most Stable in This Upside-Down Bond Market
(抜粋)
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