(ブルームバーグ):米国の菓子や飲料といえば、赤や青など鮮やかな色合いを思い浮かべる人も多いかもしれない。だが、カラフルな見た目が定番だった米国の食品から今、色が消えようとしている。
パーカー・アルフォードさん(30)は、凍らせて食べるチューブ入りアイスの新商品を見つけて興味を引かれ、幼い3人の息子のためにすぐに購入した。だが、包装を開けた子どもたちの反応はいまひとつだった。ただの「氷」のように見えたからだ。
実は、その見た目こそが商品の狙いだった。フロリダ州在住のアルフォードさんが購入したオッターポップスには、人工着色料が使われていないだけでなく、色自体が全く付いていない。結局、息子たちも見た目を気にしなかった。ブルーラズベリー味と名付けられたアイスは、青くなくてもおいしかったからだ。
食品各社が人工着色料をなくそうと取り組んでいるが、天然色素への切り替えには手間もコストもかかる。そのため一部の企業は、黒ニンジンやカボチャなどから作る天然色素に置き換えるより、商品から色そのものをなくす方が簡単だと考えるようになっている。
天然色素を使う企業が増えるにつれて、その価格が急騰する可能性が指摘されている。全米菓子協会(NCA)が委託して作成したリポートによると、カボチャ由来のカロテノイドは、需要拡大に伴って価格が最大で約7倍に跳ね上がる可能性がある。ウコン由来のクルクミンに至っては、30倍を超える水準になることも見込まれている。
米食品業界は長年、鮮やかな色で消費者を引き付け、おいしそうだと感じさせる手法に頼ってきた。そのため、食品から色をなくすことは大きな賭けとなる。専門家によると、人がどのような味を感じるかに食べ物の色が影響することは、これまでの研究で繰り返し示されている。
食品メーカーの商品改良を支援するJPGリソーシズの研究開発(R&D)責任者、エイミー・ウシアク氏は「色の付いていない食品だと、何味なのかを当てるのが難しくなる」と話す。
米消費者の間では、添加物を抑え、分かりやすい原材料を使ったクリーンラベル食品を求める動きが強まっている。また、ロバート・ケネディ・ジュニア米厚生長官は、健康への潜在的な懸念を理由に、石油由来の食品着色料を廃止するようメーカーに求めている。米食品企業は消費者と政権の双方から変化を迫られている格好だ。
企業はまず、人工着色料を天然由来のものに置き換えやすい製品から取り組みを始めた。中身が見えないスティック包装の粉末飲料などが代表例だ。色では赤や黄、オレンジが天然由来の着色料でも再現しやすかった。こうした比較的容易な製品での切り替えを進めた後、現在は透明なボトルに入った常温保存飲料など、置き換えが難しい製品に取り組む段階に入っている。NCAのリポートによると、昨年米国で販売された食品・飲料のうち、売上高ベースで約7%に人工着色料が使われていた。
天然由来の着色料には特有の課題がある。人工着色料に比べて価格が高いことが多い。温度変化の影響を受けやすいうえ、日持ちもしにくい。原料となる農作物には収穫時期があり、米国内で生産されていない場合もあるため、企業は輸入に頼らざるを得ない。
アルフォードさんが購入したオッターポップスを手掛けるジェル・サートは、2028年初めまでに同社のチューブ入りアイスから着色料をすべてなくすことを目指している。
ジェル・サートのマット・インジェミ最高戦略責任者(CSO)は、氷菓に天然由来の着色料を使うことは「難しい」と述べた。「あの包装では、酸性度の高い液体に天然由来の着色料を使うと、色がすぐに変わってしまう。しかも、望ましくない色に変化する」と説明した。
同社によると、天然由来の着色料の多くは数日で酸化し、その過程で茶色くなることがある。生産する3ブランドの氷菓はいずれも常温で販売されているため、天然由来の着色料を使うのは難しいと判断し、着色料そのものを使わないことにした。代わりにパッケージに色付きのイラストを載せ、味の違いを示すことにした。インジェミ氏は包装を「とても楽しいものにする」と話した。
第一弾となったのがオッターポップスだ。リンゴ果汁濃縮物を使った無色の氷菓で、アマゾン・ドット・コムでは1本当たりの価格が人工着色料を使った商品の約2倍で販売されている。
JPGリソーシズ創業者のジェフ・グロッグ氏は、今後、一部の商品で無色化に踏み切る企業が増えるとみている。「コスト面で採算が合い、対応も容易で、(人工着色料の廃止)期限にも間に合わせられる」ためだという。ただ、競合他社が天然由来の着色料を使って商品をより魅力的にする方法を見つければ、無色化の方針を見直す可能性もあると指摘した。
業界が注目している商品の一つが、米飲料・食品大手ペプシコの着色料不使用のスナック菓子「NKDドリトス」と「NKDチートス」だ。赤い照明の下で試食した人たちが、着色したものと無色のものを区別できなかったことを受け、昨年発売した。
NCAのリポートはこのペプシコの対応を「規制当局からの圧力を受け、大手ブランドが着色料を使わない商品への移行を実際に進め始めたことを示している」と指摘した。商品の配合変更には通常、5万-50万ドル(約790万-7900万円)の費用がかかるという。
消費者テストでは、食品の色が重要だという業界の長年の常識が覆されるケースも出ている。少なくとも食品そのものが完全には見えない場合、消費者は見た目より味を重視することが分かってきた。
クラフト・ハインツのスティーブ・カヒレーン最高経営責任者(CEO)は、特にパッケージで中身の色が見えない商品について「これまでの反応は好意的か中立的だ」と語った。「もともと見えていないものがなくなっても、消費者は気にしない」と述べた。
同社は来年、子供向けのパウチ型飲料「クールエイド・ジャマーズ」から着色料をなくす計画だ。中身が見えないパウチに入っているため、無色化しやすい。また、水に数滴加えて味を付けたり、電解質などを補ったりする液体タイプの飲料添加剤「Mio」の一部でも着色料をなくす計画だ。
ペプシコも、スポーツ飲料・水分補給系ブランドで展開する電解質パウダーを無着色にした。多くの消費者が中身の見えないボトルで飲むためだ。スポーツ飲料ブランド「ゲータレード」のパウダー製品担当マーケティング副社長、マリッサ・パインズ氏は「それぞれの製品にとって色が本当に重要かを検討する機会になった」と語った。パウダーは白色で、溶かすとほぼ透明になる。
ダノンでは、ヨーグルト製品の「キーライム」味を従来の淡い緑色からクリーム色に変えたが、味が同じなら消費者に受け入れられることが分かった。フレーバーは鮮やかな緑色のふたで示している。
一方、見た目が商品の大きな魅力となっている場合は事情が異なり、色と味が切り離せないものとして受け止められることが多い。例えば、食品・飲料原料メーカー、イングレディオンのダニエル・ヘイリー氏によると、消費者はケチャップには赤、エンドウ豆には緑といった、その食品を連想しやすい色を求める。一方、キャンディーや飲料では色へのこだわりが比較的薄い。
例外が、ペプシコのボトルタイプのゲータレードだ。同社のパインズ氏は「フレーバー名を知らなくても、特定の色のゲータレードが好きだという人は多い」と話す。同社は今秋から、紫色のジャガイモやベータカロテンなどで着色したフルーツパンチ、レモンライム、オレンジ味の製品を発売する。
クラフト・ハインツは、透明な容器で販売しているクールエイドのフレーバーの一つ、ベリーブルーを無着色にするか検討している。青色は自然界では珍しく、鮮やかさも保ちにくいため、天然由来の原料で再現するのが難しい。同社のキャロライン・ブーロス氏によると、不透明な白色にしてフレーバー名をアイスベリーに変える案もある。
アリゾナ州に住むカイリッサ・マティソンさん(36)は、家族のために添加物入りの食品を避けており、食品メーカーが合成着色料をやめる動きを後押しする消費者の一人だ。それでも、子どもの食から完全に色をなくすことには抵抗がある。息子には天然由来の着色料を使ったアイスキャンディーを買っている。マティソンさんは「子どもには、夏らしい食べ物を楽しんでもらいたい」と話した。
原題:Ice Pops, Sports Drinks Go Colorless as Natural Dye Costs Surge(抜粋)
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