(ブルームバーグ):ベッセント米財務長官は、米国が前例のない経済的圧力をかけてイランを締め上げる準備を進めていると述べた。ただ、イランはすでに海上封鎖と数千件の制裁の対象となっており、実効性を疑問視する声も上がっている。
トランプ政権は具体的にどのような措置を計画しているかを明らかにしていないが、ベッセント氏率いる財務省にはなお圧力をかけられる手段が残されている。最大の課題は、残された選択肢に踏み込めば、米経済にも悪影響が跳ね返る恐れがあることだ。
ブルームバーグ・エコノミクスのアナリスト、クリス・ケネディ氏は「大統領が他のあらゆる問題、とりわけ中国よりもイランの脅威への対応を優先すると決断しない限り、どのような措置を講じてもイランの判断を大きく変える可能性は低い」と述べた。
以下は考えられる選択肢の一部だ。網羅的なものではなく、トランプ政権が実際にどの措置を取るのか、あるいはいずれかを実施するのかも依然として不明だ。複数の措置を組み合わせる可能性もあれば、全く異なる手段を選ぶ可能性もある。
中国との関係
中国はイランの原油輸出の90%以上を購入している。こうした購入を支援する企業や機関に制裁を科せば、イランの石油収入を直接減らすことになる。
米国が2月下旬にイランとの戦争を開始して以降、米政府は中国の一部の独立系製油所や企業をすでに制裁対象としている。ただ、これまでのところ、原油取引に資金を提供する中国の大手銀行を制裁対象にすることは見送っている。
中国企業や金融機関を標的にすれば、トランプ大統領と中国の習近平国家主席との会談が予定される中、米中関係が一段と悪化する恐れがある。イラン産原油の供給を減らせば、割安な原油が世界市場から失われ、すでに高水準にある原油価格をさらに押し上げる可能性があり、経済面での代償も伴う。
中国は5月、国内企業に対し、製油所5社を対象とする米国の制裁に従わないよう指示した。一方、中国の大手銀行は、中国政府の指示と米金融システムへのアクセスを失うリスクとの板挟みになった。
両替業者
アラブ首長国連邦(UAE)などには、イランによる資金の本国送還を支援する両替業者が多数存在する。イランは原油を売却した後、中国人民元で受け取ることが多い代金を、実際に国内で利用できる通貨に換えるため、両替業者や仲介業者を必要としている。
米財務省はすでに、これをイランの弱点とみていることを示している。ベッセント氏の「エコノミック・フューリー」作戦の一環として、数十億ドル相当の外貨の資金洗浄を支援した疑いで、イランの一部両替業者を制裁対象に指定した。
こうした措置を取れば、イランは保有資金の多くを利用できなくなる。ただ、イランは長年にわたり、正規の金融システムを介さずに資金を移動する代替ルートを構築してきた。個々の両替業者を締め出しても、取引そのものが止まるのではなく、新たな仲介業者や通貨、デジタル資産に移る可能性が高い。
イランの貿易相手国
米国は、イランと限定的にでも取引するあらゆる企業や機関を二次制裁の対象にすると警告する可能性がある。トランプ氏が2017年に北朝鮮に対して取ったのと同様の手法だ。そうなれば、外国企業や銀行はイランとの取引を続けるか、米金融システムへのアクセスを維持するかの選択を迫られ、米国の影響力がイランの原油取引に直接関与する企業や機関以外にも広がる可能性がある。
こうした措置はロシアや中国に加え、トルコなど米国のパートナー国を含め、イラン周辺国で同国と重要な商取引関係を維持する企業や金融機関にも圧力を強める可能性がある。
トランプ氏はすでに、こうした手法の一案として、イランと取引する国に25%の関税を課すと警告している。ただ、これまでのところ実行には移していない。
海外資産
イラン政府の資産を凍結するだけでなく、米国の管轄下にある資産の没収に踏み切る可能性もある。ブッシュ政権が2003年のイラク侵攻後に取った措置にならうものだ。
ただ、米国が実際に手を付けられるイラン政府の資産は限られている可能性がある。資産の没収は、単なる凍結に比べて法的、外交的にも複雑になる。イランの海外資産の多くは第三国にあり、米国が差し押さえるには外国政府の協力が必要になる。
影の船団
米国による海上封鎖でイランの港湾を出入りする船舶は減少しているが、米国はより包括的な措置を検討する可能性がある。個々の船舶だけでなく、輸送を支える企業やターミナルなどのインフラも対象となり得る。米国はすでに、いわゆる「影の船団」に関与する船舶や一部の企業・団体を制裁対象に指定している。
原題:What Bessent’s Economic Isolation Of Iran Could Look Like(抜粋)
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