当局が再度の為替介入に動くのではないかとの懸念が、企業の好決算に対する日本株投資家の心理に水を差している。介入によって為替相場が円高に振れれば、輸出企業の利益を圧迫しかねないためだ。

日本企業がこれまでに発表した4-6月期決算はアナリストの予想をおおむね上回っている。だが、好業績は必ずしも株価上昇につながっていない。業績が予想を上回った企業でも、発表翌日に株価が下落するケースが目立つ。

株価と円相場のディスプレー

ソシエテ・ジェネラルのアジア株式戦略責任者、フランク・ベンジムラ氏は、「市場は慎重ムードになっている」とし、「円は間違いなく株式市場にとって注視すべきリスクだ」と話す。

7月に日米政府が実施した協調介入の効果が薄れつつある中、株式投資家は日本銀行による利上げペースの加速を含め、円を下支えするために当局が一段と強気の措置に出ることを恐れていると、ベンジムラ氏は指摘。為替のさらなるボラティリティーは株式相場に下押し圧力をかけ、特に自動車メーカーのリスクになるとの見方を示した。

決算発表後の株高のハードルは上がっている。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の分析によると、MSCIジャパン指数の構成銘柄のうち、4-6月期の純利益が予想を上回った企業の株価は、発表翌日に同指数のパフォーマンスを中央値で0.5%下回った。前年同期は1%のアウトパフォームだった。

過去2年間、円安は輸出企業が好業績を上げる主な原動力となってきた。例えばホンダが先週発表した4-6月期(2027年3月期第1四半期)決算では、円安が営業利益を908億円押し上げ、市場予想比での上振れに貢献した。

円の先行きが見通しづらくなるにつれ、投資家は円安を利益拡大の材料としている企業に対し懐疑的になっている。今回好決算を発表したものの、その後に株価が下落した輸出企業にはキヤノンや武田薬品工業などが含まれる。

BIのストラテジストのローラン・ドゥイエ、アディティア・カンドゥジャ両氏はリポートで、「業績予想を上回った要因が事業改善ではなく為替だった場合に市場は慎重な反応を示した」と分析。当局が円相場を安定させる「公式な決意」を示していることから、「今後の業績予想の上方修正は為替の動きではなく、より力強い事業実績に裏付けられる必要がある」と警告した。

ロンドンのポーラー・キャピタルでポートフォリオマネジャーを務めるクリス・スミス氏によれば、投資家が銘柄の選別姿勢を強めていることは、日本株市場全体に対する逆風というより戦略の転換を示すものだ。

円相場や地政学リスク、AIの設備投資サイクルといった要因を巡る不確実性が高まる中、輸出企業を一括して買うのではなく、ボトムアップ型で銘柄を選択する投資家が増えているとスミス氏は指摘する。半導体製造装置メーカーやロボット関連企業などAIサプライチェーンで中心的な役割を担う銘柄は、円高が進んでも旺盛な需要に支えられて底堅さを維持するはずだと述べた。

とはいえ、24年夏に見られたような急激な円高が起きる場合は、日本株全般に下押し圧力がかかると、ソシエテ・ジェネラルのベンジムラ氏はみている。日銀の9月の金融政策決定会合まで円相場を巡る緊張は解けないとし、円のボラティリティーが再び高まれば、株式にとって足かせになると予想した。

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