(ブルームバーグ):英ロンドン発の高級コーヒーチェーン「ウォッチハウス」が米国で事業を拡大している。コーヒー1杯の価格は最高で32ドル(約5100円)という高価格帯だが、全米で需要があるとみている。
8月上旬、ウォッチハウスはニューヨーク市マンハッタンに4店舗目をオープンした。来年にはロサンゼルスに出店する計画だ。現在、シカゴやマイアミ、米テキサス州オースティンなどでも出店候補地を探している。計画に詳しい関係者が明らかにした。
ニューヨーク市では9月にノマド地区で5店舗目を開業するほか、マンハッタン南端のバッテリー・パーク・シティ地区の複合施設ブルックフィールド・プレイスでも新店舗を建設中だ。
マンハッタン中心部ミッドタウンに開業した最新店舗で、最も高額な商品は32ドルのバンビート・エステートのコーヒーだ。希少なコーヒーをそろえた商品ライン「ラリティーズ」の一つだ。

バリスタのジョセフ・ピーチーさん(27)は、バンビート・エステートを準備しながら「ちょっとすごい値段であることは、分かっている」と話した。パナマ西部の家族経営の農園で生産された豆を使って抽出する。口直し用の水出し緑茶とセットで提供する。
ウォッチハウスは2014年、創業者のローランド・ホーン最高経営責任者(CEO)が、ロンドンのバーモンジー・ストリートにある19世紀の建物をカフェに改装して創業した。店名はこの建物に由来する。かつて近くの教会を見守る警備員の詰め所(ウォッチハウス)として使われていた場所だったからだ。
ウォッチハウスの出資者には、アマゾン創業者ジェフ・ベゾス氏の弟、マーク・ベゾス氏が共同設立した投資会社ハイポスト・キャピタルが名を連ねる。同社はこれまでに、英国ではロンドンとバース、英国外ではニューヨークとアラブ首長国連邦(UAE)に店舗を展開している。
ウォッチハウスのメニューは、高額なものばかりではない。シンプルなブラックコーヒーは4ドルだ。同社はウェブサイトで、目指しているのは「コーヒー通も、ちょっと興味を持った人も、同じように」歓迎することだとしている。
とはいえ、1杯32ドルのコーヒーは消費者に受け入れられるのだろうか。シカゴの市場調査会社データセンシャルで調査・インサイト部門のマネジャーを務めるエミリー・ムラウスキー氏によると、コーヒー愛好家はこれまでも高価格を受け入れてきた。特に品質が大幅に向上する場合には、価格に寛容になるという。
つまり、自宅でいれるコーヒーに満足している人は、それを飲めばいい。外で飲むとなれば高い金額を払うこともいとわないが、相応の品質を求めるというわけだ。
利用客の1人、ダンカン・コック・フォスターさん(31)は、マンハッタンのパーク・アベニュー・サウスにある店舗で、「ラリティーズ」の一つであるフランチェスキ(22ドル)を注文した。トレーや口直しの冷茶、提供用グラスを使った凝った演出だったが、肝心のコーヒーは期待外れだったと語った。「(一般的な家庭用コーヒーメーカーの)ミスターコーヒーでいれたコーヒーと全く同じ味だった」と話した。
ただ、コック・フォスターさんは、ウォッチハウスのほかのコーヒーについては平均以上だと評価している。驚くほどおいしい1杯なら、20ドルを超えても支払うことに抵抗はないという。「本当に格別なものが提供されるのであれば、その価格にも納得できると思う」と話した。
外食産業の調査・コンサルティング会社テクノミックのデータによると、特別な時にコーヒーに奮発することは、多くの人にとってそれほど珍しいことではない。同社の消費者調査担当シニアディレクター、ロバート・バーン氏は「30ドルのコーヒーは普段なら大半の人にとって手が届きにくいかもしれないが、特別な機会となれば、価格をあまり気にしなくなる」と話した。

従業員によると、ミッドタウン店では開業日に、少なくとも1人の客が1杯32ドルのバンビート・エステートを注文した。
同店のアシスタント・ハウスマネジャー、アイザック・V・モラレス氏によると、ラリティーズでは、コロンビアやパナマの小規模生産者から仕入れたコーヒー豆を使っている。価格は大きなチーズピザ1枚よりも高いが、豆の供給量が極めて限られ、栽培コストが高いうえ、提供までに多くの手間がかかるためだという。
モラレス氏によると、ウォッチハウスではコーヒーの実を最適な熟度で収穫することにこだわる農家から豆を「厳選」している。こうした豆の買い手は、高級ワインの生産者がブドウにこだわるのと同様、個々の供給業者や農園まで生産履歴をたどれることに高い金額を支払うという。
ラリティーズのコーヒーは全てハンドドリップで、バリスタがフィルターに入れたひきたてのコーヒー豆にゆっくりと湯を注いで抽出する。バリスタのジェイ・パークさん(22)によると、圧力をかけずに抽出するため苦みが抑えられ、よりフルーティーで、まろやかですっきりとした味わいになるという。
1杯を用意するのに7-10分かかる。パークさんによると、出来上がったコーヒーは冷めていく過程で少しずつ味わうのがよいという。
同店では特別な体験を味わってもらうことを目指しており、パークさんは「単に『カフェインが取れる』というだけではない、何かそれ以上のものを提供しようとしている」と話した。
原題:NYC’s $32 Pour-Over Coffee Chain Is Expanding With New Stores(抜粋)
--取材協力:Ilena Peng.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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