(ブルームバーグ):塩野義製薬の手代木功会長兼社長は、地政学的リスクの高まりを受けた製薬業界の変化などを踏まえ、感染症や希少疾患の分野で3件のM&A(合併・買収)や、米国での生産体制強化を検討していると明らかにした。
手代木氏は4日、ブルームバーグテレビジョンの取材に対し、「現在、少なくとも3つの案件を積極的に進めている」と述べ、主要な地域として米国、日本、欧州を挙げた。「適切な機会があれば、希少疾患分野の新薬候補をさらに拡充したいと考えている」とした。すべての案件が実現するとは確約できないとも話した。
同社は2026年3月期に合計8800億円規模となる3件の大型買収を実施し、過去20年で最も活発に事業投資に動いた年となった。買収した鳥居薬品の花粉症治療薬や、追加出資した抗HIV薬の研究・開発を手掛ける英国ヴィーブヘルスケアなどが、4-6月期の収益に大きく貢献した。買収効果が現れ始める中でも、さらなる案件の発掘を続けている。
手代木氏は、「キャッシュフローではまだまだできる、余力のある会社になってきた」とし、「いい機会があればどんなM&Aでもためらう理由は全くない」と話した。
同社は、感染症治療薬の強みを生かしつつポートフォリオを広げ、海外事業の拡大を加速させる考えだ。「今年、成長し続けるための非常に強固な基盤を築くつもりだ」と手代木氏は述べ、28年3月期からの新中期経営計画の準備を進めていると付け加えた。
生産体制の強化
手代木氏は、重要な医薬品の国内生産拡大を求める米国政府の動きを受け、今後5ー10年を見据えた同国での生産体制強化を社内で検討していると明らかにした。施設数や立地などは未定だ。
すでに同社は4月、米国政府の資金拠出を受け、抗菌薬「セフィデロコル」の製剤工場を立ち上げると発表した。同社にとって初の国外での主力品製造拠点となる。さらに供給網のリスク分散を図るため、欧州でも現地企業と協力し、抗生物質や医薬品有効成分(API)を手掛ける製造拠点の新設に取り組んでいる。
手代木氏は、地政学的な緊張や将来のパンデミックへの備えを背景に、感染症治療薬の国内生産能力確保を目指す各国政府の動きは加速していると述べた。その上で、「一つの拠点に依存するのはリスクがある。そのため、生産能力を分散させたい」と述べた。日本と各国との貿易関係は政治情勢に大きく左右され、先行きを予測しにくいことから生産拠点の分散が重要になるとの考えを示した。
塩野義は新型コロナウイルス治療薬など感染症事業を収益の柱としてきたが、感染症の流行に業績が左右されやすい課題がある。第二の柱として育成を進めるQOL(生活の質)領域は、4-6月期に国内売上高が大幅に増加。「季節に依存しない皮膚科やアレルギー・免疫領域が、われわれの成長にいかに重要かを物語っている」とした。
一方、08年から塩野義を率いる手代木氏は、取締役会が後継候補として4ー5人を選定し、昨年から育成を始めたと明らかにした。相次ぐ買収や海外事業の拡大を踏まえ、「現在の塩野義の事業モデルを引き継げる後継者チームを作るには3ー4年かかるだろう」と話した。
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