米国の通貨当局が日本に加勢し、数年にわたり続く外国為替市場での円の下落を食い止めるため、行動を起こし始めた。円安は日本国内のインフレを助長するのみならず、金利の上昇を通じ世界にも波及していただけに、日米はこれまで以上の強い連携姿勢で相場の安定を促している。

7月31日のニューヨーク市場で円は対ドルで前日比1.3%高の157円40銭と、5月以来の高値で終了。日本の財政赤字に対する懸念や依然として大きい海外主要国との金利差を背景に、数日前には一時163円99銭と1986年以来、約40年ぶりの安値を更新していた。円安による輸入コストの上昇で日本の企業業績や消費に悪影響が及ぶリスクが高まっていたため、根強い円売り圧力に対し日米は一段と強い対抗姿勢を示す格好となった。

政府・日本銀行は31日、前日に続きニューヨーク市場で円買い・ドル売り介入を実施。事情に詳しい市場関係者1人が匿名を条件に明らかにした。これに先立ち日本経済新聞は、円が急伸した31日に日本当局が連日の円買い介入を行ったと報じていた。ブルームバーグは8月1日、為替介入の有無について日本の財務省に事実関係を確認したが、現時点でコメントを得られていない。

一方、 英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は関係者3人の話として、米財務省が31日、ニューヨーク連銀を通じてユーロ売り・円買い介入を実施したと報道。FT紙によると、日米が円相場を支えるために協調介入を行うのは約30年ぶりだという。同日夕時点でブルームバーグはFTの報道に関し米財務省にコメントを求めたが、直ちには応じなかった。

同報道よりも前に事情に詳しい関係者2人はブルームバーグに対し、ニューヨーク連銀が31日に少なくとも米銀大手2行にユーロ・円のレートを提示するよう要請したと明らかにしていた。円は同日、ユーロに対しても1%以上上昇して取引を終えた。

三井住友信託銀行市場営業部ダイレクトディールチームの加藤倫義シニアアドバイザーは「市場は当局を甘く見ていた。2回目の介入はかなり大きなインパクトを市場参加者に与えた」と指摘。「投機筋も円を売りにくくなったのではないか。もう1回介入すればドル・円は155円を割り込むだろう」との見方を示す。

これまでも日本の通貨当局による実際の円買い・ドル売り介入や片山さつき財務相、三村淳財務官らの口頭介入をきっかけに円が反発する場面は幾度となくあったが、総じて効果は短期的にとどまっている。

事情に詳しい市場関係者1人によると、30日にも政府・日銀は介入を実施した。円は対ドルで一時3.3%高の157円台後半まで急伸したが、翌日には160円台後半まで押し戻されていた。日銀が31日に公表した当座預金関連のデータと短資会社の予想を基にした分析によると、30日の円買い介入の規模は約8兆4500億円に達した可能性がある。

ところが今回、米当局が日本の円防衛策に対する協調姿勢を明確にしたことで、今後は円安進行に賭けていたヘッジファンドなど投機筋やトレーダーらを窮地に追い込む可能性が浮上している。キーマンとしての役割を果たしたのがベッセント米財務長官だ。

ベッセント氏は30日にFOXビジネスとのインタビューで、円相場は「著しく過小評価されている」と発言。31日もX(旧ツイッター)で、「日本経済は引き続き良好」だと指摘し、「日米は強固な関係を維持し、緊密な連携を続けている」と投稿した。

ロイター通信の31日の報道によれば、同日の米政府の閣議に出席したベッセント氏の手元には50億-100億ドル(約1兆5700億円)分の日本円購入と書かれたメモがあったという。

トランプ米政権にとっても、これ以上の円安は看過できない面がある。インフレ懸念の高まりが日本の一段の金利上昇(国債価格の下落)につながると、世界市場にも波及する恐れがあるからだ。日本の通貨当局が為替介入資金を確保するため、米国債の一部売却に動く可能性や一段の円安で貿易における米国の相対的な価格競争力の低下もリスクになる。

元日銀マンで、楽天証券経済研究所の愛宕伸康チーフエコノミストは、ベッセント氏の影響力は非常に大きいと指摘。米国は日本の為替介入に対し、以前より協力的になっているとみている。

今回の日米通貨当局の協調行動は、日銀の金融政策決定会合という市場が注目するイベントに合わせて行われた。日銀は31日に政策金利の据え置きを8対1の賛成多数で決定。6月に31年ぶりの高水準となる1%に引き上げているが、3.75%を上限とする米国とはなお開きがある。

植田和男総裁は会合後の記者会見で、引き続き金融政策の正常化を進める姿勢を示したものの、円相場を押し上げる明確な言及はなかった。

ただ、ベッセント氏は同日のXで、8月に米ノースカロライナ州で開かれる20カ国財務相・中央銀行総裁会議(G20)で植田総裁と会談するのを楽しみにしていると投稿。日銀に対しても金融や金融システムの安定に向けた強いコミットメントを示したと評価し、「日米は強固な関係を維持し、緊密な連携を続けている」と述べた。

ベッセント氏は昨年8月、インフレ抑制の取り組みで日銀は後手に回っていると発言。今年1月に日本の金利が急騰した際には、他の市場にも波及しており、日本の経済担当者が市場を安定させるための措置を講じると確信しているなどと話した経緯がある。

エバコアISIのストラテジスト、マルコ・カシラギ氏は、金利差による下支えがなければ、為替介入の効果比較的短期にとどまる可能性が高いと予測。日銀は、為替レートをインフレのリスク要因として指摘しているが、これまでのところ積極的な役割を担うまでには至っていないとの認識だ。

共同通信は1日、日米両政府が早ければ週明けにも、円安の是正に向けた方針を表明することが関係者への取材で分かったと報じている。

(文末にソーシャルメディアの投稿写真を添付)

--取材協力:Anya Andrianova、Ruth Carson、野原良明、Malcolm Scott、アンスティー・クリストファー、ジョン・チェン、グラス美亜、間一生、Carter Johnson.

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