円相場が対ドルで約40年ぶりの安値圏で推移する中、31日の日本銀行金融政策決定会合後に行われる植田和男総裁の記者会見が、円相場の当面の方向性を左右する重要なイベントとして注目されている。

市場は追加利上げの時期やペースに関する植田総裁の発言に神経をとがらせている。今回は政策据え置きが既定路線で、市場の注目は今後の政策運営をどう伝えるかという植田総裁のメッセージだ。内容次第では円相場が一段と下落する可能性も意識されている。

円は先週、一時1ドル=163円99銭と約40年ぶりの安値を更新した。4、5月に行われた政府・日銀による過去最大規模の円買い介入も、円安基調を反転させるにはいたらず、原油高や日米金利差に加え、高市早苗政権の財政運営への懸念も円売り要因となっている。

RBCブルーベイの最高投資責任者(CIO)、マーク・ダウディング氏は「植田総裁が十分にタカ派姿勢を示さなければ、円は165円を超えて下落する可能性がある」と指摘した上で、「9月か10月の追加利上げへの道筋を示すだろう」と予想する。

今回は植田総裁にとって、入院から復帰後初めての決定会合後会見となる。前回は代理を務めた内田真一副総裁が市場に過度な政策修正観測を抱かせることなく会見を終え、ドル・円の日中値幅は決定会合日として約5年ぶりの低水準にとどまった。今回は植田総裁自身の発言が、市場の追加利上げ観測や円相場を下支えできるかが注目される。

オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場では、日銀が9 月までに利上げする確率は29%、10月まででは78%と織り込まれている。一方で複数の関係者によると、円安が長引くことでインフレ上振れリスクが高まっていることから、日銀当局者はより速いペースで利上げを進める可能性も排除していない。

オーストラリア・コモンウェルス銀行のストラテジスト、サマラ・ハムード氏は、「円が大きく上昇するためには、日銀が市場予想を上回るタカ派サプライズを示す必要があるだろう。例えば、次回利上げの時期についてより明確なフォワードガイダンスを示したり、より大幅な利上げの可能性を残していることを示唆したりすることだ」と指摘。「仮にタカ派的な結果となったとしても、交易条件や金利差といったファンダメンタルズは依然として円に不利であるため、ドル・円相場が反転するとは見込んでいない」と述べた。

ブルームバーグが実施したエコノミスト調査では、回答者の半数が日銀は12月まで政策金利の引き上げを待つと予想しており、高市政権が追加利上げの主な障害になるとみられている。また、高市首相が打ち出した食料品の税率引き下げ案も、円相場の重しとなるリスクがある。

ブルームバーグ・ストラテジストの見方

円相場には、もう穏やかな後押しはいらない。必要なのは、衝撃と畏怖だ。

日銀はより大胆な選択肢を提示する必要がある。50bpの利上げもあり得ると示唆すれば、日銀が政策の遅れに甘んじるのではなく、遅れを取り戻すことに真剣に取り組んでいる姿勢を示せるだろう。

-MLIVストラテジスト、マーク・クランフィールド、関連記事はMLIV

植田総裁の記者会見を前に、29日に予定される米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果も円相場を左右する材料となる。OIS市場では、32%の確率で利上げが織り込まれている。

アセットマネジメントOneでチーフ・インベストメント・オフィサー(債券)を務める清水岳友氏は、植田総裁がハト派的な姿勢を示せば、ドル・円は「余裕で165円を超える」と指摘。165円を突破した場合には、「全力で介入してくると思う」と述べた。

片山さつき財務相は24日、円相場について「必要に応じていつでも適切に対応するが、それは断固たる措置を果断にやるということだ」と述べた。

アリアンツ・グローバル・インベスターズのシニアポートフォリオマネジャー、ステファン・リットナー氏は、「円安が進むにつれて為替介入リスクが高まっているほか、エネルギー価格上昇による日本の交易条件への悪影響が続くリスクもある」と指摘し、円相場に対して中立姿勢を維持している。「日銀は通常、柔軟性を維持することを好む。この時点で具体的な道筋を示すことは、そのアプローチとは一致しない」と述べた。

--取材協力:横山桃花.

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