27日の米株式市場では、S&P500種株価指数が小幅上昇にとどまった。買いが先行し、一時は0.9%上昇していたが、その後は前週末の終値を挟んだ動きとなった。同指数構成銘柄の大半は上昇したものの、半導体銘柄の売りに押された。

AIへの巨額投資を進める企業に対し、投資を正当化できるだけの成果を求める圧力が強まっている。米国とイランが外交努力を再開するとの期待から、原油価格は下落した。円は対ドルで1ドル=163円台後半で推移した。

フィラデルフィア半導体株指数は2.2%安。一時は5.1%下げる場面もあった。エヌビディアが総額7500億ドル超(約122兆6600億円)に上る可能性がある新たなAIインフラ関連案件を進める中、同社のデフォルト(債務不履行)に備えるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保証コストは急上昇した。

欧州市場でオランダの半導体製造装置大手ASMLホールディングが急落したことも響いた。中国政府系企業が液浸型深紫外線(DUV)露光装置の製造を開始したとの報道をきっかけに、半導体製造装置銘柄が軒並み売られた。

ハイテク銘柄中心のナスダック100指数は0.3%安。今週は大手ハイテク企業が相次いで決算を発表する予定だ。

モルガン・スタンレー傘下のEトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は、「今週は良い意味でも悪い意味でも、予想外の展開が起きやすい1週間になる」と指摘。

「最大の不確定要因は地政学リスクと原油価格だろうが、大手ハイテク7社『マグニフィセント・セブン』の好決算を受けて株価が素直に上昇するとは限らない。AI投資の規模に対する懸念が続くようであれば、なおさらだ」と述べた。

同氏はさらに、今週の連邦公開市場委員会(FOMC)会合では政策金利の据え置きが予想されているとした上で、利上げの可能性が久々に高まっているとし、株式相場は荒い値動きが続く可能性があると続けた。

トランプ米大統領は、米国とイランが中東での紛争終結に向けた外交協議を進めていると明らかにした。ただ、交渉が合意に至らなければ、双方は再び戦闘に戻ると警告した。

トランプ氏は大統領専用機エアフォース・ワン内で記者団に対し、「向こうが会談を望んでいるのは、われわれが非常に激しい攻撃を加えてきたからだ」と述べた。その上で「何かがまとまる可能性は十分ある。そうなれば、それでいい。まとまらなければ、われわれはこれまでしきたことを再開するだけだ」と続けた。

これとは別に、イランとオマーンの交渉担当者は、ホルムズ海峡の航行再開に向けた合意を目指し、協議を重ねている。事情に詳しい関係者が明らかにした。

ベテラン投資家のルイス・ナベリエ氏は「イラン紛争終結後の株式相場の方向性を占う材料がまた一つ現れた。週末の攻撃停止を受けて原油価格が下落し、それに伴い金利も低下している」と指摘。「このことは紛争が完全に終結すれば、株式相場は一段高となる可能性を示唆している」と述べた。

JPモルガン・チェースのアンドリュー・タイラー氏率いるマーケットインテリジェンスチームは、同社の戦術的ポジショニング指標がS&P500種の「大幅な上昇余地」を示唆していると指摘。一方で、半導体株へのポジション集中や、イラン情勢に伴うリスクには警戒が必要だとしている。

それでも、同チームは「戦術的な強気姿勢」を維持しており、米国株は債券利回りの低下やドル安、堅調な企業業績の追い風を受けると見込んでいる。

国債

米国債は上昇(利回りは低下)。米国が対イラン攻撃を一時停止して原油価格が下落したことや、FOMC会合を前にこの日実施された2年債入札(690億ドル規模)が堅調な需要を集めたことで、相場が押し上げられた。

市場では連邦準備制度理事会(FRB)が今週利上げに踏み切る確率をなお約3分の1と見込んでいる。ただ、足元の利回り上昇を受けて2年債入札には旺盛な需要が集まった。一方、同日実施された5年債入札への需要は振るわなかった。

アジムート・グループの債券担当グローバル共同責任者、ニコロ・ボッキン氏は、「目下の債券には大きな投資価値がある」と指摘。「インフレリスクよりも景気減速リスクの方が大きいとみている」と述べた。同氏は短・中期の米国債を選好している。

7月利上げの可能性を巡り、市場は依然として不確実性が高い状態にある。翌日物金利スワップ(OIS)は、FRBが今週の会合で0.25ポイントの利上げを実施する確率をなお4割近く織り込んでいる一方、ブルームバーグが調査したエコノミストはほぼ全員が据え置きを予想している。市場では9月までの利上げが完全に織り込まれている。

RJオブライエンのマネジングディレクター、ジョン・ブレイディー氏は「インフレ見通しや今後の金融政策を巡って、FOMC内で活発な議論が交わされるだろう」と指摘。「ウォーシュ議長率いるFRBは今回の会合を利用して、9月の利上げに向けた地ならしをするとみている」と述べた。

外為

外国為替市場ではドル指数が下げ幅を縮小。円は対ドルで欧州時間に一時0.3%高の1ドル=163円33銭まで買われた後は、おおむね163円台後半での推移となった。

原油価格の下落がドルの重しとなった一方、FRBが今週利上げに踏み切る可能性がなお意識されていることで、ドルは支えられた。

米シティグループのアナリスト、ダニエル・トボン氏、ブライアン・レビン氏、高島修氏は、今週後半に開かれる日本銀行の金融政策決定会合が市場の一部の予想以上にハト派的な内容となり、円安につながる可能性があるとの見方を示した。

3氏は「日銀はタカ派を失望させる可能性があり、その場合はドル円相場が165円に向かって一段と上昇するリスクがある」と指摘。「今回の会合はイベントリスクとして円安方向に傾いていると考えている。加えて、日本政府と財務省が円買い介入方針を巡って揺らいでいるように見えることも懸念材料だ」とした。

BofA証券の山田修輔・為替金利ストラテジストは、円相場を防衛するには日本銀行がタカ派姿勢を示す必要があるとの見方を示した。また、円買い介入が実施される次の水準は1ドル=165円になる可能性があるとみている。

山田氏はリポートで、7月の利上げの可能性は依然として極めて低いが、政策当局は9月利上げの織り込みが市場で進むようなコミュニケーションを取る必要があるかもしれないと指摘した。

CIBCキャピタル・マーケッツのストラテジスト、ノア・バッファム氏は、北米市場ではFRBのタカ派姿勢を織り込む動きや、今週のサプライズ利上げに備えたヘッジが進んでおり、ドルの持ち直しにつながっていると指摘した。

INGのクリス・ターナー氏らアナリストは、「FRBは29日に政策金利を据え置く公算が大きい。ただ、ウォーシュ議長はフォワードガイダンスに否定的な立場を取っているため、市場ではタカ派サプライズに備えたドル保有の動きが続く可能性がある」とリポートで指摘した。

スコシアバンクのショーン・オズボーン、エリック・セオレ両氏は「利上げのリスクは非常に低いとなお考えている。ドルは会合後に軟化する可能性が高い」と指摘。「ウォーシュ議長によるFRBの運営体制見直しは進行中だ。イラン情勢を直接の理由とする利上げは、議長就任後の船出を波乱含みにしかねない」と分析した。

ウエストパック銀行の通貨戦略責任者、リチャード・フラヌロビッチ氏は「米政権がイランとの対立を巡り、ひとまず事態収拾に向けた出口を模索する姿勢を示したことから、ドルは週明け軟調スタートとなった」と分析。

一方で、「過度に安心感を織り込むべきではない。停戦に向けた覚書(MOU)への回帰や原油供給の完全な正常化にはなお程遠く、紅海というもう一つの代理戦争の火種も残っている」とし、「今週のウォーシュFRB議長はかなりタカ派色の強い姿勢を示す見込みだ。利上げを支持する反対票が2-3票出る可能性もある」と述べた。

原油

原油相場は続落し、3カ月超ぶりの大幅安となった。米国とイランは3夜連続で互いへの攻撃を見送り、原油供給の逼迫(ひっぱく)懸念が和らいだ。一時混乱していたカザフスタンの原油輸出ターミナルでタンカーの積み込みが再開されたことも材料視された。

北海ブレント先物9月限は、前週末比8.42ドル(8.7%)安の1バレル=88.36ドルで終了。ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物9月限は、6.70ドル(7.5%)安の82.61ドルで取引を終えた。

原油相場は、米国が13夜連続で行ってきた対イラン攻撃を先週金曜日以降見送っていることを受けて下落した。イランも報復を控える姿勢を示し、ホルムズ海峡を巡ってオマーンと協議した。一方、サウジアラビアはその後、石油施設を狙ってイラクから飛来したドローンを迎撃したと明らかにした。

トランプ米大統領は、ニュースサイト「アクシオス」とのインタビューで、イランへの攻撃を一時停止したのは、交渉に改めて機会を与えるためだと述べた。その後、記者団に対し、イランとの協議で「何かがまとまる可能性は十分ある」と語った。

原油先物は月初から20%超上昇している。イエメンを拠点とする親イラン武装組織フーシ派が、紅海経由のサウジ産原油の輸出を脅かしているためだ。紅海は、戦争によってホルムズ海峡を通る輸送に支障が生じて以降、代替ルートとして重要性を増している。5カ月に及ぶ紛争は、原油在庫の減少や燃料価格の上昇を通じて、インフレ加速への懸念を強めてきた。

先週の原油価格上昇を受け、相場下落を見込む弱気の投資家が売り持ちを積み増した。米商品先物取引委員会(CFTC)が24日に公表した建玉データで明らかになった。

TDセキュリティーズの商品戦略グローバル責任者、バート・メレク氏はCFTCのデータについて、「投資家は在庫が危機的な水準まで減少するとの懸念から買い持ちを積み増した一方、本格的な戦争は回避されるとの見方から、それを上回るペースで売り持ちを増やした」と説明した。

その上で、「原油価格の高騰は米国にとって政治的な負担が大きい。さらに、迎撃ミサイルの不足が伝えられていることも、軍事的なエスカレーションを難しくしている」と述べた。

金相場は続伸。米国とイランの戦闘が小康状態となり、原油供給リスクや金融引き締めにつながるインフレ懸念が和らいだ。

米国とイランは3夜連続で互いへの攻撃を見送った。週末にはホルムズ海峡の航行正常化を巡り、イランとオマーンの当局者が協議した。こうした動きを受け、国際指標の北海ブレント原油は、欧州取引時間帯に一時、前週末比9.5%急落した。金スポット価格は一時1.6%上昇したものの、ニューヨーク取引時間帯には上げ幅を縮小した。

先月の停戦合意後に中東で再び戦闘が激化していたことから、インフレ圧力が高まり、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに踏み切る可能性が意識されてきた。金利の上昇は、利息を生まない金相場には重しとなる。

金相場は6月下旬以降、おおむね1オンス=4000ドル前後で推移している。押し目買いが相場を支え、一部の市場関係者が重要な下値の節目とみる4000ドルを維持している。一方で、金相場は2月下旬に米国とイスラエルがイランへの攻撃を開始して以降、2割超下落している。

グローバルX・ETFのアナリスト、ジャスティン・リン氏は、今回の戦闘の小休止は金相場にとって好材料ではあるが、「金相場が4000-4200ドルのレンジを上抜けるには、米国とイランの間で実質的な進展が必要だ」と指摘した。その上で、「紛争が続く限り、利回りとインフレ期待は高止まりするだろう。それが足元の金相場の重しになっている」と述べた。

金スポットはニューヨーク時間午後2時37分現在、前週末比21.92ドル(0.5%)高の1オンス=4074.71ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は6.70ドル(0.2%)高の4136.40ドルで引けた。

欧州

27日の欧州債券市場は上昇した。中東で米イランの攻撃停止が続き、原油価格が下落したことが追い風となった。

ドイツ2年債利回りは4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下し、2.79%となった。先週には一時2.91%と2024年7月以来の高水準を付けたが、一段と低下した。

英国債も上昇し、2年債利回りは4bp低下して4.37%となった。欧州の国債利回りは米国債利回りよりも速いペースで低下し、米10年債とドイツ10年債の利回り差(スプレッド)は152bpと、約3週間ぶりの大きさに拡大した。

欧州株は小幅高となった。ASMLホールディングの急落がテクノロジー株の重しとなり、小売株やメディア株の上昇を相殺した。

ストックス欧州600指数は、取引時間中に一時0.9%上昇したものの、その後伸び悩み、ほぼ横ばいで取引を終えた。中国政府系企業が液浸型深紫外線(DUV)露光装置の製造を開始したとの報道を受けて、ASMLは事業を脅かされる可能性が意識され、8.5%下落した。

業種別では、メディア株と小売株がこの日の上昇率上位となった。TUIやドイツのルフトハンザ航空などがけん引し、旅行・レジャー株も買われた。エネルギー株は、トタルエナジーズやシェルなど主力銘柄の下落が響き、大きく下落した。

7月27日の欧州マーケット概観(表はロンドン午後6時現在)

原題:S&P 500 Falls as Chipmaker Rout Outweighs Oil Drop: Markets Wrap(抜粋)

Treasuries Rise as Recent Yield Surge Attracts Buyers Before Fed

Dollar Edges Down on War Pause; Swiss Franc Falls: Inside G10

Successful Yen Intervention Needs Hawkish BOJ Signal, BofA Says

Oil Slides as Supply Threats Ease in Middle East and Black Sea

Gold Climbs as Pause in Mideast Fighting Curbs Inflation Risk

European Bonds Rally as Oil Prices Ease: End-of-Day Curves

European Stocks Muted as ASML Drop Offsets Retail, Media Gains

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