「プロテイン」、つまりタンパク質を摂取する方法は、かつてないほど多様になっている。米国の食品売り場には、タンパク質を強化したポップコーンやシリアルのみならず、飲料水まで並ぶようになった。

このブームを後押ししているのは、タンパク質の健康効果を巡るソーシャルメディアでの盛り上がりに加え、新たな食事ガイドラインや、ノルウェーの製薬大手ノボノルディスクの「ウゴービ」「オゼンピック」に代表される食欲を抑える薬「GLP-1」の普及だ。

急増する需要を取り込もうとする食品メーカーは、多くの商品でタンパク質を最大の訴求点として打ち出している。かつては主にボディービルダー向けのニッチな商品だった「ホエイプロテイン」が、今や大人気だ。価格は急騰し、メーカー各社は限られた供給量を巡って競争を強いられている。

専門家は、多くの人はすでに必要量のタンパク質を摂取できていると指摘する。しかし、インターネットで発信された他の食生活トレンドと同様、そうしたアドバイスはブームを止める要因になっていない。

タンパク質とは何か

タンパク質は、炭水化物および脂質と並ぶ3大栄養素(マクロ栄養素)の1つで、人間が生きるために欠かせない栄養素だ。

タンパク質はアミノ酸で構成されており、組織の形成・修復や酵素・ホルモンの生成、免疫機能の維持など、多くの生体機能で重要な役割を果たす。肉や卵、魚、豆腐、レンズ豆など、多くの食品に含まれている。

何が需要を押し上げているのか

タンパク質摂取を最大化することを意味するネット用語、「プロテインマキシング(proteinmaxxing)」は、ジム利用者の間だけで流行していたが、今では一般層にも広がっている。

SNS上には、できるだけ多くの食事や間食でタンパク質を取れば、筋肉を増やし脂肪を減らせると主張する動画があふれている。

こうしたトレンドは、米政府の政策とも重なっている。ケネディ厚生長官は「Make America Healthy Again(米国を再び健康に)」をスローガンとし、自然食品の推進を通じて米国民の健康を改善する方針を掲げている。

同長官が承認した新たな米連邦政府の食事ガイドラインでは、1日のタンパク質摂取量を体重1キログラム当たり1.2-1.6グラムと推奨しており、従来の基準だった0.8グラムから引き上げた。

ウゴービやオゼンピックなどのGLP-1薬も、タンパク質需要を加速させている。これらの薬は食欲を抑えるため、食事量が減り、体重減少につながる。

タフツ大学のロジャー・フィールディング教授(栄養学)によれば、これらの薬による体重減少の3分の2程度は脂肪だが、残り3分の1は筋肉やその他の除脂肪組織が占める。そのため、GLP-1薬を服用する多くの人にとって、筋肉量を維持するためのタンパク質摂取が優先事項となっている。

企業はどう対応しているのか

食品業界は、高タンパク食品に割高な価格を支払う消費者の需要を取り込むため、新商品を相次いで投入している。

ペプシコやゼネラル・ミルズなどの加工食品メーカーは、「ドリトス」や「チェリオス」といった主力商品に、タンパク質を強化した製品を追加している。

コカ・コーラ傘下の牛乳ブランド「フェアライフ」もそうだ。同社によると、ろ過技術によってタンパク質とカルシウムを増やし、糖分を減らすとともに乳糖を除去している。価格は普通の牛乳の3倍を超えることもあるが、フェアライフはコカ・コーラの急成長ブランドとなっている。

フェアライフの高タンパク質ミルクシェイク製品

外食業界もこの流れを取り込んでいる。スターバックスやダンキンなどのコーヒーチェーンは、タンパク質入りコールドフォームを提供し、チポトレ・メキシカン・グリルやスイートグリーンなどは高タンパクメニューを拡充している。

なぜホエイプロテインは品薄なのか

ホエイはチーズ製造時にカード(凝乳)から分離される液体だ。以前はスポーツ栄養食品、乳児用ミルク、家畜飼料向けが主な用途だった。しかし、ホエイは重量当たりのタンパク質含有量がほぼすべてのタンパク質源の中でも特に高く、需要の急増によって需給が逼迫(ひっぱく)している。

ホエイプロテインコンセントレートの価格は7月9日時点で1ポンド(約453.6グラム)=約12.50-13ドル(約2030-2112円)と、3月時点の約9ドルから急騰した。メーカーは製品に使用する別のタンパク質源を探さざるを得なくなっている。

供給拡大を難しくしているのは、ホエイがチーズ製造の副産物としてしか生産されず、単独では製造できないことだ。一方で、ホエイ需要は急増しているものの、チーズ需要は同じペースでは伸びていない。

代替品の1つがミルクプロテインアイソレートで、より加工度が高く価格も安い。しかし、この代替品も需要が生産を上回り、価格が急騰している。

国際乳食品協会(IDFA)によれば、米国の乳製品加工業者は2025-28年にタンパク質製品への需要に対応するため、19州で110億ドル超を製造能力の増強に投資している。

栄養学の専門家はどう見ているのか

大半の人にとって、タンパク質摂取量を増やすこと自体は本質的に危険ではない。ただし、専門家は、一部のインフルエンサーが主張するように、体が必要とする以上のタンパク質を摂取しても筋肉が際限なく増え続けるわけではないと説明する。

体は、脂肪のようにタンパク質を余分に蓄えることはない。必要量を満たした後は、アミノ酸は分解されて炭水化物となり、総摂取カロリーが必要量を上回れば最終的には脂肪へと変換される。

メイヨー・クリニックによると、タンパク質は1日の総摂取カロリーの10-35%を占めるのが望ましい。活動量が多い人や高齢者では、より高い割合が必要になる。

食品メーカー各社は、あらゆる食品でタンパク質強化を急ぐ一方、栄養士は、多くの米国人に本当に不足しているのは食物繊維だと話す。食物繊維は消化器の健康を支え、血糖値の調整にも役立つ。

タンパク質ブームはどう変化しているのか

市場調査会社マラカイト・ストラテジー・アンド・リサーチのケビン・ライアン最高経営責任者(CEO)によれば、消費者はタンパク質に鶏肉由来、卵白由来、コラーゲン由来といった明確な由来表示を求める傾向を強めている。認知度の高い原料の方が、加工度が低く健康的という印象を与えるためだ。

スナックバーやマッシュルームコーヒーを販売するIQBARや、鶏肉とチーズから作るプロテインチップスを製造するワイルド(Wilde)は、身近な原材料を使った加工食品を好む消費者のニーズに対応している。

一方、スタンフォード大学の栄養科学者クリストファー・ガードナー氏によると、加工食品に含まれるタンパク質の種類に注目し過ぎるのは、栄養学的には誤解を招く可能性がある。

タンパク質は消化されるとアミノ酸へ分解されるため、その由来が鶏肉、ホエイ、豆腐、ひよこ豆のいずれであっても、体は区別しない。重要なのはタンパク質そのものではなく、一緒に摂取する食品で、食物繊維を含む自然食品との組み合わせが重要だと同氏は強調している。

原題:How Food Companies Are Cashing In on ‘Proteinmaxxing’: Explainer(抜粋)

--取材協力:Ilena Peng.

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