米国とイランによる報復の応酬が一段と激しくなっている。米兵の死亡を受け、米軍はイランに対する新たな攻撃を実施した。

米中央軍は19日、イランの指揮統制拠点や海上戦力、ミサイル・無人機の発射拠点、通信網を標的とした攻撃を完了したと発表。対イラン攻撃は9日連続となる。ホルムズ海峡を航行する商船や民間船員へのイランの攻撃能力をさらに低下させることが目的だと説明した。

中央軍は同日にSNSへの投稿で、イラク北部で米兵1人が18日に死亡したと公表した。不発だったイランの自爆型無人機(ドローン)を処理しようと制御爆破を試みて死亡し、別の兵士1人も負傷したという。

17日にはヨルダンで米兵2人が攻撃を受けて死亡した。米国側はイラン革命防衛隊の仕業だとみている。この攻撃では米兵4人が負傷し、1人が行方不明となった。2月28日に米国とイスラエルによる対イラン戦争が始まって以降、米側の死者は計17人となった。

中央軍はまた、ヨルダンで身元不明の遺体を発見したとし、行方不明になっている米兵かどうかを調査中だと明らかにした。

イランのメディアによると、米軍は夜間にペルシャ湾のゲシュム島のほか、シャーデガーン、シリク、ハージアバードなど南部の都市を攻撃した。死傷者や被害の詳細は、現時点で明らかになっていない。

イランによる報復攻撃では、クウェートがまたも最大の標的となった。現地当局によれば、発電・海水淡水化プラントへの攻撃で火災が発生し、多数の発電設備に影響が及んだ。3日連続でこの種のプラントが標的となった。

クウェート軍は「重要施設」に「深刻な被害」が生じたと、SNSに投稿した。

国営イラン放送(IRIB)によると、イラン軍は19日早朝、クウェートのキャンプ・ビューリングとアリ・アル・サレム空軍基地の米軍を標的に無人機(ドローン)攻撃を実施した。ただ、いずれの施設にも着弾は確認されていない。

ヨルダンでは混乱も生じた。在ヨルダン米大使館は「具体的かつ信じるに足る脅威」を理由に、紅海に面する都市アカバの空港と港湾が避難措置を講じたと明らかにした。ヨルダン当局は当初これを否定したが、その後、イランのミサイル3発を迎撃したと発表した。

バーレーンは19日、警報サイレンを鳴らした後、イランによる空からの一連の攻撃を迎撃したと説明した。

イスラエルは同日、自国とシリアの国境付近でイランの無人機を迎撃したと発表。カッツ国防相は、攻撃を受ければイランに対する軍事行動を再開すると警告した。

米国とイラン双方による攻撃の応酬は1週間に及び、標的は軍事施設にとどまらず、橋やインフラ、港湾施設にも拡大している。先月成立した停戦が再び機能する見通しは乏しいことをうかがわせている。

イランのアラグチ外相は、インタビュー内容を自身のテレグラムに19日に投稿。その中で、同国の核開発を巡る一部の要求は「解決不能」なまま残る可能性があるとの認識を示し、悲観的な見方を助長した。

こうした中、ニューヨーク・タイムズ紙は匿名の米当局者を引用して、米国が中東に軍用機を追加で派遣していると報じた。F16やF35といった戦闘機や空中給油機を追加で送るという。米軍が攻撃を拡大する可能性を示唆している。

米中央軍はSNSへの投稿で、直近の攻撃について、商船の航行を脅かすイランの能力を低下させるとともに、ヨルダンでの17日の攻撃に関与したイランの革命防衛隊を「迅速に処罰する」ことが目的だと説明した。

サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)、カタールは18日、それぞれ別の声明で、情勢緊迫化への懸念を表明。ヨルダンはイランの外交官を召喚して抗議した。

UAEは学校や病院、海水淡水化施設、エネルギー施設、交通拠点などの民間インフラを標的とする攻撃について「いかなる状況下においても容認も正当化もできない」と非難した。

ホルムズ海峡での緊張も一段と高まった。イラン革命防衛隊の海軍は19日、所属先などの詳細が分からない船舶4隻が、警告を無視して「安全でない航路」を利用しようとしていたため停止させたと発表した。

「調整と許可なくして、原油やガス、化学肥料は一滴たりともホルムズ海峡を通過させない」と警告した。

イランは18日、直近の米軍攻撃への報復として、クウェートやヨルダンなど中東にある米国の同盟国に大規模な攻撃を実施するとともに、暫定的な和平合意の条件を今後は順守しないと表明した。

イランの最高指導者モジタバ・ハメネイ師は18日に公表した声明で、「忘れられない教訓」を米国に与えると警告した。米国とイランの協議が行われる60日間の停戦を定めた覚書に米国が違反したとし、「米大統領の署名がいかに無価値で、何の効力も持たないかを改めて証明した」と非難した。

ハメネイ師は米軍の攻撃で父親が死亡し、自身も重傷を負って以降、公の場に姿を見せていない。イラン当局によると、6月27日以降の米軍による攻撃で、50人が死亡し、500人超が負傷した。

原題:US Strikes Iran in Escalating Campaign After Troops Killed (2)(抜粋)

(原文更新に伴い、第1-2段落に情報を追加して更新します)

--取材協力:Dan Williams.

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.