(ブルームバーグ):ファーストリテイリングが展開する「GU(ジーユー)」が、海外からクリエイティブディレクターを起用し、商品の刷新に乗り出した。国内では低価格とトレンド性を掲げて成長してきたが、足元では収益や海外展開に停滞感があり、ブランドポジションの確立が課題となっている。
今年20周年を迎えるGUがクリエイティブディレクターを起用するのは今回が初めて。イタリアの高級ブランド「プラダ」でデザイナーを務めたほか、「MARNI(マルニ)」でクリエイティブを指揮したフランチェスコ・リッソ氏を任命し、7月下旬に本格展開する秋冬ラインが同氏にとっての初シーズンとなる。
リッソ氏の起用は、海外展開を進めるうえで、ブランド認知度の向上が課題となっていたことが背景にある。GUの広報担当者は、世界市場を見据えたものづくりの経験を持つ同氏を迎えることで、ブランド力の強化につなげたいと説明する。
新コレクションでは、レザーやナイロン、シアーなど素材のバリエーションを広げ、色柄もこれまで以上に取り入れた。一方で、価格帯は従来水準を維持する。「スリムフレアジーンズ」の価格は2990円で、ユニクロの類似するジーンズを2000円ほど下回る。これまで若年層向けブランドという印象が強かったGUだが、新ラインではより幅広い顧客層の取り込みを狙う。
ただ、デザイン性を高めながら低価格を維持することは容易ではない。素材の幅を広げ、デザインの完成度を上げれば、通常はコスト増につながる。低価格を強みとしてきたGUが、価格の安さの訴求に依存せず、どこまでブランド価値を高められるかが問われる。
ブランド価値と低価格の両立
GUは2006年、ファストリとダイエーの業務提携を通じて、ユニクロより低価格でファッション性を重視したブランドとして誕生した。低価格はGUの成長を支えてきた一方、海外展開を進めるうえでは、安さだけでは差別化が難しい。前期(25年8月期)の売上収益は3307億円とユニクロ事業の約9分の1にとどまる。
海外展開にも停滞感がある。24年にはニューヨーク・ソーホーに旗艦店を開設して米国市場に進出したものの、その後の海外展開は目立って進んでいない。5月末時点で運営する店舗数は、国内や中華圏を中心に484店舗。ユニクロのように世界各地で存在感を高める段階には、まだ至っていない。
収益面でも課題は残る。前期のGUの営業利益は前年を下回った。経営体制の刷新や構造改革を進めた結果、第3四半期(26年3-5月)の営業利益は前年同期比35%増と回復し、通期では2桁の営業増益を見込む。それだけ事業運営や商品戦略の精度向上が課題だったともいえる。
ブランド確立への課題意識
ファストリ創業者の柳井正最高経営責任者(CEO)は、GUについて「ユニクロと同じくらいの成長の可能性がある」とし、長期的には売上収益で1兆円を目指している。一方で、昨年の決算会見では、「本質的な課題は、確固たるブランドポジションが確立できていないことだ」と話していた。初のクリエイティブディレクター起用は、そうした課題への危機感の表れでもあり、商品刷新が海外展開の加速とブランドの確立につながるかが焦点となる。
岡崎健最高財務責任者(CFO)も9日の決算会見で、これまでのGUについて、事業精度の課題に加えて、商品構成も「マストレンドど真ん中で、若い方を中心にファッションを楽しむ方に来店いただくコンセプトを体現できていなかった」と説明。今回の商品刷新の手応えをまず国内で見極めた上で出店を拡大し、長期的にはユニクロが展開する全地域への進出を目指す考えを示した。
世界で通用する訴求軸
もっとも、ファッション性を武器に世界展開する難しさは残る。流行は変化が速く、地域によっても嗜好(しこう)が異なるためだ。UBS証券の風早隆弘シニアアナリストはGUの課題について、「ライフウエアというコンセプトのユニクロに対してGUが何を訴求していくのか、そこにユニクロの妹ブランドではないポジショニングやバリューをしっかり提供していく必要がある」と指摘する。
ユニクロは、暑さや寒さに対応する機能性商品という、国境を越えて共通するニーズを見つけられたことが世界展開の成功につながった。風早氏は、GUはトレンド商品で世界共通に売れるのかという課題があると指摘。「国内のさらなる拡大と海外展開を両立させていくのがユニクロとは違う課題」と話し、ファッション性を軸に世界共通のブランドを築けるかが成長の鍵になるとの見方を示した。
著名なデザイナーと組むことはZARAやH&Mなどの競争が激化するファストファッションブランドの間でも定番となりつつある。ブランドコンサルティングに携わるファッションサイツ(FashionSights)創業者のアヒム・ベルク氏は、ブランドがどこまで価値を高められるかを試す手段でもあり「デザインや素材、クラフトマンシップの質を高めれば、通常は価格の上昇につながる」と指摘。「そうした経歴を持つデザイナーが、その取り組みを後押しできる」と述べた。
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