片山さつき財務相の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を巡る発言を受け、10日の円相場は急伸した。市場では、政府が国内投資拡大の方針を実際の政策などに移せるかどうかが、円相場の先行きを左右する最大の焦点となっている。

円は一時、対ドルでニューヨーク終値比0.7%上昇し、161円29銭まで買われた。また、債券市場では超長期債を中心に利回りが大幅に低下した。

相場を動かしたのは、片山財務相が閣議後会見でGPIFを含む公的年金基金による国内金融資産への投資拡大を後押しする考えを示したことだ。GPIFが将来的に国内資産への配分を増やし、海外資産を圧縮すれば、国内債券市場への資金流入が見込まれるほか、海外投資に伴う円売り圧力も和らぐとの期待が広がった。

もっとも、円の上昇が続くかどうかについては懐疑的な見方が多い。日米金利差や財政悪化への懸念など円安を支える要因は変わらず、政府の発言だけで相場の流れが転換する状況にはないためだ。市場の関心は、政府の方針が実際の国内投資拡大につながるかどうかに集まっている。

関西みらい銀行の石田武ストラテジストは、GPIFがリバランスを実施すれば数兆円規模の資金移動となり、円高圧力になり得ると指摘。ただ、来週発表される米消費者物価指数(CPI)や月末に予定される日米の金融政策決定会合が円高材料とならない限り、中長期的な円安基調は変わらないとの見方を示した。

ステート・ストリート銀行金融市場部の貝田和重部長は、GPIFは厚生労働省の所管であり、運用方針の変更には時間を要すると話す。市場はヘッドラインに反応したが、マクロ環境に変わりはなく、円の上昇は長続きしない可能性が高いとみる。

円は今月初めに162円84銭と約40年ぶりの水準に下落し、その後も安値圏にとどまっている。日本政府は4月下旬から5月下旬の間に月次で過去最大の11兆7300億円を投じて円買い介入を実施したが、円安の流れを止めるには至っていない。

ブルームバーグ・ストラテジストの見方

外為市場ではここ数カ月、円を支える最大の材料はGPIFが資金を日本へ還流させることだとの見方が広がっていた。GPIFは海外で巨額のドル資産を保有しており、それが円に換金されれば、円相場にとって持続的な押し上げ要因になる。

これがGPIFの運用方針転換の転機となるか注目される。もしそうなれば、その効果は日本銀行の利上げを上回る可能性がある。

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片山財務相は会見で、金融政策は日銀が担うべきだとの認識も示し、政府が日銀の独立性を尊重する姿勢を改めて強調した。

クレディ・アグリコルCIBのシニアストラテジスト、デービッド・フォレスター氏は「投資家が円安に対する見方を逆転させるには、言葉だけでなく実際の行動が求められる」と指摘。政府が財政赤字を抑制するか、歳出の財源として債務以外の代替手段を見いだすか、あるいはGPIFが実際に資産配分を変更するかが必要だと述べた。

--取材協力:深瀬敦子、佐野日出之.

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